眠る前に脇下につけるだけで「真の基礎体温」を測ってくれる「Tempdrop」、カップルの妊活をサポート

by Yukari Mitsuhashi Yukari Mitsuhashi on 2015.9.2

Tempdrop-website

妊娠を希望する女性が、妊娠しやすいタイミングを知るために把握する必要がある基礎体温。特に月経のサイクルが不規則だったりすると、このタイミングの特定がより困難であるため、お医者さんにはできるだけ「毎日」基礎体温をつけるようにすすめられます。

平日も週末も毎朝決まった時間にアラームが鳴り、寝ぼけながら口内に基礎体温計をくわえ、体温計によっては数分間じっとして待つ。仕事に出かける前の貴重な朝の時間にこれを続けることが苦痛になり、ギブアップしてしまう人も珍しくないと言われています。

そんな課題に目をつけたのが、スマートフォンと連携することで日々の妊活を支えてくれるスマートセンサー「Tempdrop」です。涙型をしたTempdropを身につけることで、睡眠中の動きや体温を含むさまざまなデータを集めて排卵日を予測してくれます。眠りにつく前に粘着パッドを使って脇下につける、またはアームバンドを使って腕の上部につけるだけ。外すと、Blutoothを使ってデータがスマートフォンに転送される仕組みです。

事前予約注文が集まるのは主に米国とカナダで、2016年半ばに出荷を予定しています。イスラエルを拠点とするチームを率いるファウンダーでCEOのMichael Vardiさんにお話を伺いました。以降は、Q&A形式でお届けします。Tempdropの紹介動画も併せてご覧ください。

寝てつけるだけで本来の基礎体温を手間なく把握

ー妊娠を望む女性のためのプロダクトは色々存在します。なぜ、女性はTempdropを選ぶべきなのでしょうか。

Tempdropは、あらゆるスマートフォンを洗練された妊娠モニターに進化させることで最良の価値を提供します。価格もリーズナブルで、アプリやプラットフォームをまたいで使うことができる点も特徴です。必ずしもTempdropの専用アプリを使う必要がないため、アプリを乗り換えることも可能です。

妊娠または避妊のためにTempdropを使えば、正確な予測をいつどこからでも取得することができます。データはユーザーが所有するものというのが、私たちの考えです。ですから、解釈された後のインサイトだけでなく、生データをサイトからダウンロードして、かかりつけの医師に見せることもできます。

朝起きてすぐの面倒な手間はもう必要ありません。Tempdropをつけて、起きたら外す。外した時点で、本来の基礎体温がスマートフォンの管理アプリに同期され、正確な排卵日予測を実現してくれます。

ーTempdropで測定する温度が、外気に影響されることはないのですか?どのような仕組みなのでしょう?

今が、寝室が寒い冬の時期だと仮定して、眠りについたとしましょう。寝ている最中、あなたは寝返りしたりして、よく動きます。そうしている間に、腕が毛布の外に出てしまうかもしれない。そうなれば、外の冷たい空気が皮膚体温に影響するかもしれません。

あなたの動きと共にTempdropがトラッキングする「関連気温」は、あなたの皮膚体温に影響を及ぼしたかもしれない要素にまつわる情報を提供してくれます。上記の例では、あなたの腕が毛布から出た瞬間に「動き」と「関連気温データの大幅な減少」という2つのことを確認し、独自のアルゴリズムがその影響範囲を調整してくれるのです。

ーTempdropが割り出す基礎体温の正確性はどのように実現していますか。またつけ心地についてはどんな工夫をしていますか?

睡眠中の動きと体温にまつわる約10,000点のデータポイントを集めて作っています。この小さなデバイスの唯一のフォーカスは、「正確な基礎体温」という妊娠に関する最も重要なパラメーターを導き出すことです。健康や睡眠の状態を測ることではなく、妊娠することです。アイディアを構想した時からこのコンセプトは変わらず、それがセンサーやチップなどの電子パーツ、またソフトウェアアルゴリズム開発をしていく中の判断基準になっています。

Tempdropのつけ心地にも、同じアプローチをとっています。アームバンドは、伸縮性のあるストラップを採用しています。ホックの部分は女性の下着に使われるものと同じものです。イスラエルで最大の下着メーカーでデザイナーを勤めていた女性デザイナーがデザインしています。

ー専用のアプリだけでなく、Tempdropは市場に出ている既存アプリとも連携して使うことができます。具体的には、どのように連携しているのですか?

ユーザーが、Tempdropとスマートフォンを同期すると、集められたデータが私たちのサーバーにアップロードされます。個々のユーザーのパターンや睡眠の質などを独自のアルゴリズムで解読し、前夜の「真の基礎体温」を導き出します。生理日や排卵日予測アプリの開発者に対してSDKを提供し、それが私たちのサーバーから必要なデータを各アプリに取り入れます。

TempdropのSDKと連携しているアプリであれば、必要データが既に使っているアプリに自動的に表示されます。既に連携しているアプリには、「Menstrual Calendar」や「OvuView」などがあります。

子どもの頃から続く医療分野への関心、真の「基礎体温」の発見

TempdropのファウンダーでCEOのMichael Vardiさん
TempdropのファウンダーでCEOのMichael Vardiさん

ーMichaelさんのTempdropを開発する以前の経歴について教えてください。ずっとヘルスケア分野にいらしたんですか?

子どもの頃から、既にヘルスケア領域に進むことを決めていました。当時は、きっと医者になるのだろうと考えていました。でも同時に、ものを作ることやテクノロジーによるイノベーションがすごく好きでした。次第に、その2つを組み合わせるようになったのです。

生体医工学を専門に機械工学で理学士号を取得し、その後は生体医工学で修士課程に進みました。それ以来、私のフォーカスは医療デバイススタートアップにおけるイノベーション開発に注がれています。Tempdropの開発に着手する前は、慢性の耳鳴りを治療するための神経刺激インプラントを開発するスタートアップを手掛けていました。その実現可能性を探る臨床研究をまとめ、それは業界関係者向けのジャーナルに出版されました。

洗練された医療機器が市場に出るまでには、非常に長い時間を要します。FDA(アメリカ食品医薬品局)の厳しい規約があり、神経刺激インプラントはその中でも特に時間がかかります。そのため、資金調達も難しい。ですから、3年以上も前に、自分の中で今後はモバイルヘルスとウェアラブルデバイスに注力するという方針を明確にしました。

ーTempdropの開発のきっかけは何でしたか?Michaelさんの個人的な体験などがもとになっているのでしょうか。

その通りです。長女にはすぐに恵まれたのですが、次女を授かるためには6ヶ月間を要しました。一人目がスムーズだったため、すごく不思議に思いました。そこで、その分野の文献などを調べるところから始めました。その結果わかったのが、すべては「タイミング」であるということです。

それどころか、1,000人の女性を対象とする米国の調査によると、90%の女性が排卵前、妊娠するチャンスを高めるために行為を持つタイミングを計るべきであることすら知らなかったのです。

また同時に、基礎体温が排卵を示す最も重要な指標であるにも関わらず、毎朝同じ時間に起きる行為が困難になり、多くの女性が基礎体温を継続して測ることを諦めてしまうこともわかりました(Tempdropが連携するアプリが提供してくれた情報によると、アジアの女性は米国やヨーロッパの女性に比べて、この習慣を忠実に守るようです)。

さらには、朝起きてすぐの体温は、本当の基礎体温ではないことも発覚しました。基礎体温は、人の睡眠スケジュールと質によって異なるのです。例えば、トイレに行ったり、泣いている赤ちゃんの面倒を見るために夜中に起きてしまった場合も、それが朝起きて測る基礎体温に影響することがわかりました。基礎体温は、寝ている間にこそ測るべきなのです。こうした発見をした当時、真の基礎体温を測る術は存在しませんでした。

最大の困難は人材と資金の確保、出荷目処は2016年半ば

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粘着パッドをはがして脇下につけるバージョン

ーTempdropを開発する上での最大の難関について聞かせてください。それをどのようにして乗り越えましたか?

厳しく先行きが見えない時期をも乗り越える覚悟した、Tempdropに対してやる気に満ちた情熱的でプロフェッショナルな人材を見つけることです。私と同じように、女性そしてカップルの人生を変えてやるという決意を持った人たちです。この課題に対する最良のアプローチは、メンバー一人ひとりに「あなたの専門分野において、あなたが最も得意とすることは何ですか?そして、最も楽しんで取り組めるものは何ですか?」と問うことでした。それと同じことを、Tempdropでもやってもらうのです。

時間や人材などの資源が限られた中で前進することが求められます。また競争も激しい。でも、そのリソース不足が、クリエイティビティとイノベーションを促進させることもあります。

ークラウドファンディングを活用する理由の一つは、アイディアの実証にあります。Tempdropの場合、Indiegogoのプロジェクトは目標金額に到達しませんでした。その理由をどう考えますか?

キャンペーン直前直後、最中のプロモーションにほぼ一人で取り組んでいました。クラウドファンディングのキャンペーンに最適なFacebookやTwitterをそれより前に使った経験もなく、にも関わらず、地元メディアや新聞、またTechCrunchなどに取り上げてもらうことができました。今でもGoogleの検索結果ではTempdropが上位に出るため、価値があったと思っています。

キャンペーンの開始準備(動画制作、キャンペーンの販促など)に向けた睡眠不足、キャンペーン開始後のアドレナリンに満ちた興奮状態、その後もずっとそれが続きました。その結果、かなり手強いインフルエンザにかかってしまい、それが原因で肺炎にまでなってしまいました。まる2週間麻痺した状態で40度近い熱と闘った結果、睡眠の大切さを知りました。

ークラウドファンディングを活用した経験から学んだことを教えてください。

クラウドファンディングキャンペーンで学んだことは、キャンペーンを支援してくれた人と直接話すことの大切さです。支援してくれた人のほとんどは女性で、彼女たちに個人的にメールを出しました。キャンペーンのことを知ったきっかけ、製品への感想、足りないものは何か、機能やデザインのリクエスト、良い点も悪い点も全てに耳を傾けました。デバイスのバッテリーを取り替え可能にするという決断は、キャンペーン支援者から集まった意見をもとにしたものです。

コミュニケーションを重ねたことがコミュニティ作りにも繋がり、それを今はチームのTal Ronが率いてくれています。認可されたセクシャル・ヘルスのインストラクターで、Tempdropのキャンペーン支援者でもありました。キャンペーンが目標金額に到達せずに終わった時に、まだ学生で金銭難に苦しむ彼女が払い戻しを求めて連絡してきたのです。Tempdropへの熱意が伝わってきたので、一緒に女性、そしてカップルの人生を楽なものにしないか?とチームに誘いました。

ー最後に、Tempdropの事前予約はいつ頃出荷する予定ですか?また、現在のフォーカスは何でしょう。

今現在は、Tempdropを開発するためのシード資金の獲得が最大のフォーカスです。大量生産のラインを確保するため、また市場参入に向けて様々な活動を行うためです。Tempdropの出荷は、2016年の半ば頃を目指しています。
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耳にたこができるほど聞くウェアラブルというトレンド。残念ながら、これならぜひつけてみたいと思うプロダクトはほぼ皆無。今以上にいろいろ「通知」されるなんてご免だし、あったら便利かもしれないけれどなくても困らないものばかりが目立ちます。

そんな中、今回ご紹介したTempdrop、また少し前に取材記事をお届けしたYONOなどは、今は仕方なくて耐えている、でも本当は改善してほしいと願う女性の困りごとの解決を試みるプロダクト。こうしたプロダクトこそ、本当のイノベーションの姿なのではないでしょうか。

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