BEENOS創業者の佐藤輝英氏が6,000万ドル規模の新ファンド「BEENEXT」を立ち上げ——前田ヒロ氏と共に、世界のスタートアップへの投資を本格化

Masaru IKEDA by Masaru IKEDA on 2015.9.8

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左から:BEENEXT マネージングパートナー 佐藤輝英氏、パートナー 前田ヒロ氏

BEENOS(東証:3328)の創業者で、現在はアジアを中心にスタートアップに投資を行っている佐藤輝英氏は先ごろ、新ファンド「BEENEXT」を立ち上げた。また、7日、BEENOS は BEENEXT に対して、500万米ドルの出資を発表した

佐藤氏と長きにわたり、BEENOS での投資や Open Network Lab でのアクセラレーションを行ってきた前田ヒロ氏は、BEENEXT のパートナーに就任した。世界中を忙しく飛び回る二人だが、BEENEXT が今後展開する投資戦略などについて、東京で二人に話を聞くことができた。

限りなく自由なファンド

一般的に、ファンドには投資領域というものがある。地域、業界分野、投資ラウンドなど、どの切り方で投資対象が定められているかはファンドによってさまざまだ。これにはいくつかメリットがあって、投資判断をするパートナーの専門性が生かせるということと、ファンドに資金を入れる LP(Limited Partner)がポートフォリオを組みやすい、ということが大きな理由だ。ただ、この場合、ルールに従うがゆえに、ファンドがビジネスチャンスを逃すリスクを併せ持つことは否定できない。

BEENEXT のマネージング・パートナーを務める佐藤氏の説明によれば、BEENEXT の投資対象となるスタートアップは、地域・業界分野・投資ラウンドなどに制限が無い。BEENEXT の調達資金の出所にその理由があるようだ。

BEENEXT の LP は、日本のアメリカ・インドネシア・フィリピン・シンガポール・日本の個人投資家たちだ。彼らは、私が普段から親しくしている企業の創業者や経営者で、後進の起業家をサポートしたいという思いを持っている。機関投資家などから資金を調達する場合と違って、どのようなスタートアップに投資するかに制限が無い。(佐藤氏)

7月にファーストクローズを迎えた BEENEXT の第1号ファンドでは、約50%をインド、約30%を東南アジア、残りの約20%を日本やアメリカなどに投資していく計画だ。ファンドの運用においては、佐藤氏が現地に身を置く形でインドや東南アジアを担当、前田氏が日本やアメリカを中心に担当する。LP や世界各地でコインベストするファンドから多数の投資案件が寄せられるため、ディールソースには事欠かないようだ。すでに世界の12社に投資が実施されている。

社会には、いろんな役割があっていいと思っている。そして、ファンドごとに役割がある。BEENEXT は、〝起業家による起業家のための起業家向けのファンド〟として、世界中から集めた資金を世界中に張っていくのがコンセプトだ。(佐藤氏)

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BEENEXT がこれまでに投資を実施したスタートアップ

数年後には、中国をも超えるインド

ひところ昔、インドのスタートアップ環境は決して恵まれたものではなかった。モノカルチャー経済で財閥の息のかかった金融機関しか存在せず、そこにはリスクマネーという概念は存在しないに等しかった。状況を一変させたのはインド国外に住むインド人、 NRI(Non-resident Indian)や印僑と呼ばれる人たちの存在だ。

10年前と5年前では、状況が大きく変わったと思う。以前は、インドと言えば、インフォシスやタタに代表されるように、海外からのオフショア開発先だった。モバイルユーザがインドの全人口の10%、つまり、日本の全人口を超えたくらいから、NRI たちが母国の市場の可能性に気づき始め、母国に戻って起業し始めた。(佐藤氏)

インドでスタートアップを起業する人たちは、インド工科大学(IIT)やアメリカの有名大学に留学・卒業した人ばかり。優秀なエンジニアが多く、英語が話せ、市場のニーズに合致したタレントが多い点が作用し、成長スピードは中国よりも速いだろう、というのが佐藤氏の見立てだ。

今、中国で起こっていたことがインドで起こる。そこには10年ほどの時間の開きがあるように思うが、だんだん縮まっている。(佐藤氏)

THE BRIDGE でも頻繁にフォーカスする東南アジア市場だが、日本や欧米からの投資を受け入れる上でスタートアップが飽和状態というわけではない。しかし、東南アジアよりインドの方が遥かにスピードが速い、というのが現在の状況であり、BEENEXT ではそれゆえ、ファンドの約半分に相当する資金をインドのスタートアップを中心に投資していくのだという。


スタートアップ・シーンで多様性が尊ばれるように、ファンドにもさまざまな投資戦略や性格があっていい。その方が市場ニーズの足りない部分を補完しあえるからだ。佐藤氏はインドやアジアにこもり、前田氏は日米に往来して投資活動に打ち込むということなので、今後の BEENEXT を巡る世界各地からのニュースに期待しよう。

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Indian Institute of Technology, Delhi(Image credit: IIT Facebook Page)

Masaru IKEDA

Masaru IKEDA

1973年大阪生まれ。インターネット黎明期から、シンクタンクの依頼を受けて、シリコンバレーやアジアでIT企業の調査を開始。各種システム構築、ニッポン放送のラジオ・ネット連動番組の技術アドバイザー、VCのデューデリジェンスに従事。SI、コンサルティング会社などを設立。Startup Digest(東京版)キュレータ。

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