金融アドバイザリー・スタートアップのZUUが、Fenox Venture Capitalなどから約4.5億円を資金調達

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東京に拠点を置く金融アドバイザリー・スタートアップ ZUU は24日、Fenox Venture Capital(以下、Fenox と略す)や複数のエンジェル投資家から総額約4.5億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したエンジェル投資家の中には、マレーシアのマハティール元首相の右腕と言われる、マレーシアIT産業開発銀行(Malaysia Debt Ventures Berhad)元頭取の鈴木二郎氏が含まれる。

今回の調達は、同社が昨年8月、夏野剛氏をはじめとする複数のエンジェル投資家から1億500万円を調達したのに続くものだ。これにあわせ、Fenox の共同代表パートナー兼CEO の Anis Uzzaman 氏が社外取締役に、フリービットの元取締役CFO の佐野哲哉氏が社外監査役に、鈴木二郎氏が顧問に就任した。

<参考文献>

ZUU は現在、正社員23人、フリーランス7人、インターン15人らで運営しているが、代表取締役社長兼CEOの冨田和成氏によれば、今回調達した資金を使い、人材面を一気に強化するとのことだ。Fenox が持つアメリカのネットワーク、鈴木二郎氏が持つ東南アジアのネットワークを活用し、現在、日本で展開している金融バーティカルメディア事業を世界展開する模様だ。

ZUU の最初のサービスとなる金融バーティカルメディア ZUU Online がローンチしたのは2012年9月のことだ。現在では月間ユニークユーザ数250万人、月間ページビュー1,000万件を誇る。今年に入り、株式銘柄について、購入すべきか要注意か手放すべきかなどを、赤・黄・青および赤の点滅で明示的に表示する資産運用ツール「ZUU Signals」をローンチ、8月に開催されたサイバーエージェント・ベンチャーズの年次ショーケース・イベント RisingExpo 2015 では、インテリジェンス賞を受賞している。

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インテリジェンス賞を受賞する冨田氏(右)

THE BRIDGE のインタビューに対し、冨田氏は ZUU Online が好調な成長を続け、マネタイズがうまく行っている理由を次のように語ってくれた。

オンラインメディアとバーティカルメディアは根本的に違う。前者は情報提供のメディアだが、後者は問題解決のメディア。つまり、前者はコンテンツの面白さで読者を満足させるわけだが、後者は目的を持った人がやってくるのでアクションにつながりやすい、つまり、メディアとはいえ、EC に近い。

金融の場合は、金融商品にユーザを誘導するアフィリエイトが中心。ZUU は証券会社や不動産会社と提携しており、ユーザが口座の開設に至ったときの手数料が他業界よりも高い。(冨田氏)

バーティカルメディアとは言え、オンラインメディアと同様に良質なコンテンツを読者に届けることが重要だ。良質なコンテンツを制作しようとすればするほど、制作コストが高くなるのが一般的だが、ZUU はこの課題を非常にうまいやり方で解決している。

ZUU ONLINE にコンテンツを提供してもらっているのは、ニッセイ基礎研究所、幻冬舎、Société Générale、BNP Paribas、マネックス証券など、シンクタンクや証券会社のアナリストの人たち。彼らは普段、機関投資家にしか出していないレポートを ZUU ONLINE に提供してくれている。C 向けのみならず、B 向けのブランディングのためだ。

具体的な名前は出せないが、ZUU 社内のライターが書いたコンテンツを、企業のオウンドメディアに提供しているものもある。金融業界はオウンドメディアの運営に予算を充てやすいので、このようなコンテンツ制作受託は、ZUU にとって利益率が高い。(冨田氏)

ZUU Signals の画面(内容は架空のものです)
ZUU Signals の画面(内容は架空のものです)

ZUU ONLINE で提供されているコンテンツは、ニュースキュレーションの NewsPicks のユーザなどと相性がよいらしく、マスからのトラフィック流入に大きく貢献しているらしい。今後は、ZUU ONLINE を入口として、そこにさまざまなサービスをつなぎこんでいくとのこと。その一つとも言える ZUU Signals はマス向けのサービスだが、年内には ZUU の訪問ユーザを会員化し、ユーザ毎に最適化された情報を提供できる複数のサービス群を整備していくのだそうだ。

今後披露されるサービスについて、詳細は明らかにできないとのことだったが、どうやらデータマイニングが関係しているようだ。

典型的な EC の場合は、ユーザの購買履歴をもとに商品のレコメンドができると思う。しかし、金融商品は頻繁に買うものではないので、過去の履歴をもとにしても未来に購入するものはわからない。

例えば、ZUU にログインして、ユーザがどの記事を読んでいるかがわかれば、銀行は客の関心を把握し、それをもとに金融商品を勧められるようになる。当社には CTO 経験者が4人いるが、現在はデータを蓄積していくようなことに取り組んでいる。

ZUU ONLINE は問題解決のメディアであり、コンテンツが豊富だからユーザが来てくれるのだが、逆にコンテンツが有り過ぎることになる。今後は、情報をカスタマイズし、レコメンドし、マッチングすることに注力していく。(冨田氏)

スタートアップにとってハイヤリングは大きなチャレンジだが、ZUU では、興味深い人材が入社することで、それが呼び水となり、さらに興味深い人材が入社するという連鎖反応が起こっているようだ。今年末から来年にかけての新サービスの登場を楽しみにしたい。

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