【追記あり】クラウドワークスがタスク形式の手数料を無料化、ビジネスモデルを大幅転換へ

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株式会社クラウドワークス

国内クラウドソーシング・プラットフォームの一角、クラウドワークス【3900】は10月14日、同社の提供するプラットフォームの利用手数料の一部を無期限無料化すると発表した。対象となるのは「タスク形式」に分類される発注内容で、14日13時以降の発生案件について受発注した際の手数料(20%)が無料化される。

これにより受注者(ワーカー)は、発注者の設定する金額の満額を手にすることができるようになる。なお、発注者側が報酬を支払う際に発生する決済手数料についてもクラウドワークスが負担し、完全な手数料無料化を実現するそうだ。

ただし、タスク形式以外の「プロジェクト型(サイト制作などの大型案件)」「コンペ型(ロゴなどの複数提案からの選択)」については従来通りの手数料が発生する。

リリースで同社は個人の与信インフラを構築するために、その裏付けとなるデータ(仕事の実績や評価、報酬などの情報)をプラットフォーム側で蓄積することが必要であると説明している。

今回のプラットフォーム手数料一部無料化はその一環であり、今後、これまで主力だった手数料モデルから、個人向けの金融事業、社会保険事業、企業向けのクラウドワーカー採用支援事業など、この個人の与信を元にした新しいビジネスモデルの構築を推進するとした。

新しい仕事を依頼【クラウドワークス】
Image : クラウドワークスサイト/タスク形式の軽作業例

現在、クラウドワークス側にはコンペ型やプロジェクト型といったケースについても手数料の無料化を進めるのか問い合わせ中だが、もし、彼らが本当にこれを全て無料化するというのであれば、彼らが説明している手数料モデルを完全に転換するということになる。

ビジネスモデル転換の背景

では、なぜ今のタイミングでビジネスモデルの転換をするのだろうか?

ここでひとつ同社の開示している業績を眺めると、ある側面が浮かび上がってくる。

クラウドワークスが公開している資料を確認すると、総契約額は2014年9月期で約15億円、2015年9月期は通期での開示はまだだが、3Qまでで33億8600万円と前期を大幅に上回っている。営業収益も2014年9月期(通期)で約7億円、2015年9月期(3Qまで)で10億4800万円とこちらも同様に成長中だ。一方、赤字の額については最終益ベースで、2014年9月期(通期)が3億1100万円の赤字、2015年9月期(3Qまで)で10億3300万円の赤字とこちらの投資額も大きく伸びている状況になっている。

私は以前、下記のような記事で国内外のクラウドソーシングの状況を調べたことがあった。

ちょうど1年前の情報なのでアップデートが必要ではあるが、この時点での数値比較で世界とのワーカーの差は40倍ほど、現在クラウドワークスが抱えるワーカー数は74万人(2015年10月時点、リリース参照)で、急速に世界との差が縮まりつつあることは感じられるようになってきている。

参考記事

一方で、手数料モデルの限界というか、利益率の厳しさはどうしても解決が難しい。

老舗のElance-oDeskが連合艦隊を組んだことでも分かるように、手数料モデルで収益を伸ばすにはとにかくユーザーボリュームと案件数を伸ばして積み上げる他にない。世界戦ではある意味これが可能なのだが、国内ではこの登録者数を増やそうにも国内労働人口の天井があるわけで、そう簡単にはいかない。

そこで出てくるのが単純な手数料モデルからの脱却だ。

上場前にクラウドワークスがリクルートと提携した際、私は吉田浩一郎氏にインタビューし、こういった薄い利益率のモデルをカバーする方法として大型案件の受注を積極的に取っていくのでは、という考えをぶつけたことがあった。ただ、彼はその時も一貫してオープンなプラットフォームを目指すと言及しており、受託会社のような成長は視野にあまり入れてなかったように思う。

今にして思えばもしかしたら彼は既にこの時点から人材などのビジネスを見据えていたのかもしれない。ちなみにこの時、既に手数料無料化については言及されていた。

クラウドソーシングという手法で個人与信のプラットフォームを構築し、より収益性の高い人材モデルへとシフトしていく。

そもそも手数料モデルが厳しいというのは、私がぱっと調べてわかる程度のことなのだ。毎日この市場のことばかり考えている彼らが次の手を考えてないわけがない。ということで、まずはクラウドワークス側の回答を待つとしよう。

本当にプラットフォーム全部無料化への道筋が見えているのであれば、それはそれで大きな転換点になることだろう。

午後5時追記:クラウドワークスから次のコメントが届いた。

「プロジェクト形式、コンペ形式については現状で決定している新しい方針はございません。プラットフォーム”オープン化”構想の更なる展開の中で、プラットフォームとしてあらゆる戦略を検討して参りますが、同時に個人向け融資事業、企業向けクラウドワーカー採用支援事業など、手数料無料化施策を皮切りに個人の与信データを蓄積を進め、データを活用した新たなビジネスモデルの構築を進めてまいります」(同社広報)。

完全無料化を否定していないので、上記のような経緯を考えると本格的に全案件の手数料無料化も視野に入れていると考えていいのだろう。クラウドソーシングというビジネスモデルへの理解自体を改めて再考すべきかもしれない。

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