不動産窓口のバーチャル化に向けてーー不動産ネット接客のiettyが約2億円を資金調達

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ietty代表取締役社長 小川泰平氏
ietty代表取締役社長 小川泰平氏(撮影:2015年2月)

レガシーな領域におけるITの利活用を進めようという動きがここ1、2年で増えている。不動産も、テクノロジーとの融合を図ろうと様々なプレイヤーが動いている領域のひとつ。

プレイヤーの動きが活発化している背景のひとつに、国土交通省の動きがある。国交省はこれまで対面でなければならなかった重要事項説明等について、インターネット等を利用して非対面でも可能にするための検討会を設置。2014年に検討会の開催を重ねてきた。

新経済連盟もこの検討会で提言を行うなど、働きかけが行われてきた結果、今年の8月からインターネットによる不動産取引の解禁を視野に入れた社会実験もスタートしている。

ietty top

こうした動きに呼応するように、スタートアップでも動きが起きている。不動産ネット接客型プラットフォーム「ietty」を運営するiettyが、総額約2億円の第三者割当増資を実施、アクセルを踏み込んだ。引受先となったのは、インベスターズクラウド、三生キャピタル、電通デジタル・ホールディングス、みずほキャピタル、三井住友海上キャピタルの5社。

今回の調達では、各引受先との協業による事業シナジーも見込んでいる。不動産は保険や金融と関係することも多く、三井生命、三井住友海上やみずほ銀行と協業の可能性があり、インベスターズクラウドはネットに強みを持つ不動産会社として、電通はマスへとリーチしていくための知見を持つ会社として事業シナジーがある。

「ietty」は2013年6月にベータ版を公開。同年10月にミクシィの投資子会社アイ・マーキュリーキャピタルから約5000万円を資金調達、2014年10月にYJ キャピタル、インキュベイトファンド 1 号投資事業有限責任組合から約2億円を資金調達している。現在は、法人向け福利厚生サービス「ietty Biz」の提供や恵比寿に実際に店舗を構えるなど、事業の幅を広げている。

ietty from ietty on Vimeo.

「ietty」は不動産のレコメンドサービスとしてスタートした。本誌の読者であればご存知かもしれないが、レコメンド機能は人工知能に置き換わりつつある。iettyにおいても、物件の提案の約8割はアルゴリズムによって実施されているという。冒頭で紹介したような不動産をめぐる環境が変化していけば、宅建免許を保有している人たちをネットワークし、クラウドソーシングで業務を発注するなど、既存の業務を置き換えることが可能になっていく。

ietty代表取締役社長 小川泰平氏は、

小川氏「不動産のネット化が進んでいくことで、営業マンがAIに代わり、積極的にクラウドソーシングが活用されるようになっていきますそうなると、運営側のコストが低くなり、手数料の競争が起きるようになっていきます」

と語る。不動産仲介という業務が労働集約型ではなくなれば、現在かかっている手数料が低下することにつながり、不動産を借りるエンドユーザにとって喜ばしい状況となる。

小川氏「これまで不動産業界というのはユーザの方を向いていませんでした。iettyは徹底的にユーザファーストの姿勢を重視していきます。これからはビジネスモデルが異なります。そうなれば、持続的に成長していくためにはユーザ向けに嘘をつかないことが何より重要です。私たちは、いつでもスマホの中にいる24時間営業の不動産屋さんとしてユーザに接していきます」

ietty

手数料戦争が起きた際、不動産ネット仲介業者の中で数社が生き残り、サービスの濃淡がついていくはずと小川氏は予測する。iettyにとって、ユーザファーストであることがサービスの特徴になっていくかもしれない。一方で、手数料が安くなってしまうと労働集約型のビジネスモデルである街場の不動産は存続が困難になる。これまで街場の不動産会社とネットワークを構築しながらサービスを提供してきたiettyはどう対応していくのだろうか。

小川氏「たしかに、ネット化によりこれまで街場の不動産が提供してきたサービスはオンラインで完結するようになります。ですが、そうしたサービス提供では地域性が失われることになります。その街の雰囲気はどうなっているのか、近くのお店はどんなものがあるのか、こうした情報は地場の不動産業者には勝てません。iettyでは地場の不動産会社とのネットワークは維持しながら、関係性を変化させていきたいと考えています」

iettyは来年の2月ごろにはサービスリニューアルも予定しており、今回の調達した資金を元にサービス開発の強化、営業対体制の充実、マーケティング機能の強化を行う。iettyは現在、年次の売上が1億円を超えることを見越しており、年内にも黒字化を目指す。

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