スタートアップが成長中のMENA(中東・北アフリカ)、注目される都市やエコシステムの概要

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 via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “Andrew A. Shenouda“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

12月にエジプトのカイロで開催される4000名規模のスタートアップカンファレンス「RiseUP Summit」の紹介と共に、中東と北アフリカ地域「MENA」におけるスタートアップシーンの隆盛についてこちらの記事でお伝えした。

MENAのスタートアップシーンに関してもう少し掘り下げて、全体像をより分かりやすくお伝えできればと思う。

スタートアップ都市「ABCD」ー アンマン、ベイルート、カイロ、ドバイ

上記の記事でも触れたが、MENA地域のスタートアップハブとして注目される都市は「ABCD」と呼ばれる。Aはヨルダンのアンマン、Bはレバノンのベイルート、Cはエジプトのカイロ、Dがアラブ首長国連邦(UAE)のドバイだ。

Wamdaのレポートによれば、エジプト、ヨルダン、レバノン、UAEのみで2010年以来設立されたスタートアップ支援機関の6割を占めている。

ちなみに、各国と都市の人口がどれくらいかというと、ヨルダンは811万(アンマンは115万)、エジプト8848万(カイロ1877万)、レバノン618万(ベイルートは222万)、UAE 577万(ドバイ241万)といったかんじだ(いずれもCIA の The World Factbookより)。

人口ではエジプトが群を抜いており、またカイロなど都市人口も多い。人口規模だけでなく、若者が多く、インターネットやモバイルの普及率も急速に伸びている点が特徴的だ。以下は90年代末から2013年にかけての人口におけるインターネット使用者率を各国で比較したグラフだが、その成長スピードは非常に速い。

なお、Wamdaのレポートによると、ファウンダーの7割が男性であり、その多くが海外で学んでから自国に戻っているという。グローバル感覚を持ち、他文化にオープンなファウンダーがスタートアップの立ち上げをしているという印象だ。

同時に、現地のサポートシステムや資金調達の環境もここ数年で整いつつある。アクセラレータプログラムとしてよく知られるのは、カイロのFlat6Labs、アンマンのOasis500、ベイルートのSeeqnce、ドバイのSeedStartupあたりだろう。

また、スタートアップへの出資者の8割以上がローカルな出資者だという。とはいえ、イランのスタートアップイベントでも聞いたことだが、中東のスタートアップシーンにおけるグローバルな民族コミュニティ「ディアスポラ」の存在は大きく、その背景にはグローバルなネットワークが存在していると推測する。

なお、同地域での投資に積極的なグローバルなVCは 500 Startups。2013年には7社、2014年に9社出資してきた。現地にパートナーを有し、スタートアップのスカウトにも積極的だ。500 StartupsのパートナーHasan Haider氏は、MENAの魅力について次のように語る。「MENA地域には、まだ手がつけられていない機会が眠っている。4億の人口が同一言語と似た文化を有し、スマートフォン普及率が50パーセントを超えるマーケットもある。人口の3分の1は15歳以下だ」

資金調達や人材の獲得、MENA地域内における国を超えた事業展開においてはまだまだチャレンジが存在するようだが、同地域のスタートアップエコシステムは確実に進歩しており、これから大きな期待ができるのではないだろうか。引き続き、MENAの動きに注目してみたい。

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