ビズリーチ「求人検索スタンバイ」が完全無料の理由は「ATS」にありーー採用管理「スタンバイ・カンパニー」を一新

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メール機能_ スタンバイ・カンパニー_new
一画面で採用管理を確認できる「アコーディオンインターフェース」

ビズリーチは10月29日、採用検索サービス「スタンバイ」の採用管理ツール、「スタンバイ・カンパニー」のリニューアルを実施した。インターフェースを一新し、採用管理業務を一画面に収めたほか、サービス内で求職者とのメール送受信を一元管理できるように変更されている。その他、求職者情報のPDF出力、応募者情報のCVS書き出し、限定公開などの機能も追加された。

また、採用ページ作成画面についてはプレビュー状態での編集を可能にしている。これにより、CMS(コンテンツマネジメントシステム)を使い慣れていないユーザーにも直感的に求人票の作成ができるようになっている。

求人編集_ スタンバイ・カンパニー_new
編集はプレビュー上で可能に

スタンバイ・カンパニーは初期費用、月額費用、採用時の成果報酬などすべてが無料で提供されており、ビズリーチが提供する求人検索「スタンバイ」上に掲載できるだけでなく、自社の採用ページとしても利用が可能となっている。同社の説明によると、2015年5月の提供開始以来、4000社に利用されているという。

なお、求人検索のスタンバイについてはスタンバイ・カンパニーで作成した求人票以外の情報も検索可能になっているため、全体の求人件数は400万件ほどになっているという。

求人リスティングとATSの一気通貫によるビジネスモデル

スタンバイ_日本最大級の求人検索エンジン

さて、今年5月にビズリーチが開始した求人検索のスタンバイについては、完全無料というモデルで話題となった。いわゆる求人検索に連動した広告モデルだが、スタンバイは現状でクリックによる課金もない「完全無料」を謳っていた。

通常、このようなジョブサーチは検索連動型広告をモデルにしており、米国では現在リクルート傘下のIndeedやCareerBuilder、Monsterなどが幅を利かせている。米国では求人情報のフォーマット(HR-XML)化が普及していることもあって、こういったクローラー型が進化した背景が指摘されている。

一方日本ではやはりリクルートが2007年に買収したジョブダイレクトやソフトバンク系の仁王など、いくつか求人検索が存在していたが、どれも数万件ほどの情報量で影は薄い。

検索という技術的な難しさに加え、フォーマットの問題、大手人材会社による人力営業モデルの強さなど、求人検索「のみ」が必要とされるシーンはなかなか考えづらかった。

では、ビズリーチはなぜこの難しい分野にトライしたのか。

かんたんに使える完全無料の採用支援ツール(求人作成・公開・管理)__スタンバイ・カンパニー

その問題を解く鍵のひとつが今回彼らが力を入れるスタンバイ・カンパニーと呼ぶ採用管理ツールなのだ。

ATS(アプリカント・トラッキング・システム)と呼ばれるツール類で、米国がやはり先行している。Oracle傘下のTaleoやリファーラル採用のJobvite、この分野のスタートアップとして頭角を現しているgreenhouseなどが目立つ存在だろうか。

国内でもソーシャルリクルーティングのWantedlyはよく知られているし、先日買収が発表されたtalentioは単なる採用管理からもう少し深いトラッキングに挑戦しようとしていた。その他にもカオナビや、やはりセールスフォースから支援を受けるCYDASなどもある。

この分野のバラエティが豊富なのは、その範囲が広いからだ。例えば2013年4月にサービスを開始したZenefitsは給与から保険に至るまでを人事が簡単に管理できるソフトウェアを提供してる。つまり、単なる採用ではなく、企業の基幹システムに近い分野と考えたほうがいいかもしれない。当然、キャッシュポイントは広がることになる。

表の求人検索だけでなく、裏側の採用管理も合わせて事業を考えればバリエーションが膨らむ。さらにATS自体は前述の通り、機能を拡張できるわけだから、ここのビジネス的な柔軟度も高い。

今までのサービスと似ているようで微妙に違う。このあたりの設計はこれまでダイレクトリクルーティングの事業を手掛けてきた同社ならではのうまさを感じる。

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スタンバイ事業本部長、取締役の竹内真氏

ただ今回話を聞いたビズリーチ取締役でスタンバイ事業を牽引する竹内真氏によれば、すぐにこのATS周りを拡張させる考えはないようだった。

「現在はお金をかけて求人情報を作るか、代理店さんにお願いをするか、それとも私たちのような第三極を選択するか、というような状況です。(前述したようなATSの追加機能については)本当に小さな会社さんが欲しいかといわれるとまだ優先度は高くありません。採用がちゃんとできる、まずは日本流のものを作ることが必要なのではないでしょうか」(竹内氏)。

現在、100名近い体制でこのスタンバイに取り組むビズリーチ。「5年は我慢する」(竹内氏)という長期スパンで国内の求人情報の市場を変えていこうというのが彼らの考えだ。

この他にも幅広い話題を聞くことができたが、またそれらについては別稿でお伝えすることにしよう。

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