失敗の中からスマホ広告「nend」が生まれたんですーー隠れたキーマンを調べるお・ファンコミ二宮氏インタビュー

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編集部注:「隠れたキーマンを調べるお」は、国内スタートアップ界隈を影で支える「知る人ぞ知る」人物をインタビューする不定期連載。毎回おひとりずつ、East Venturesフェローの大柴貴紀氏がみつけた「影の立役者」の素顔に迫ります。

インターネット黎明期より「A8.net」等の成果報酬型広告扱い、広告業界を牽引するファンコミュニケーションズ。また最近ではアドネットワーク「nend」が高い評価を得ています。今回はファンコミュニケーションズで「nend」を管掌する取締役の二宮幸司氏にインタビューしてみました。Twitter等で人気の柳澤安慶社長(ヤナティ)のエピソードも。

大柴:はじめまして、今日はよろしくお願いします。

二宮:よろしくお願いします。大柴さん、金髪じゃないですね。

大柴:あ、そうなんです。1カ月前くらいに黒髪にしまして。また金髪にするかもしれませんが・・・。

二宮:なるほど。よろしくお願いします。

大柴:二宮さんは今おいくつですか?

二宮:36歳です。この会社に入って12年目になりますかね。

大柴:新卒ですか?

二宮:まぁ新卒といえば新卒ですね。弊社でも昨年から本格的に新卒採用を始めたのですが、それまでも「新卒」は何人かいまして。

大柴:ほう。

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二宮:僕は大学卒業してアルバイトとして入社しました。そういう人が他にも何人かいまして。僕は新規クライアント営業だったのですが、目標件数にいったら正社員採用という条件で入りました。すぐにコツをつかんだので、2ヶ月目には目標達成し、正社員となりました。

大柴:へぇ、すごい。ところでなぜファンコミでバイトしようと思ったのですか?

二宮:大学時代から広告系で働きたいなと思っていました。CM制作のADのアルバイトなんかもやっていて、そこにいわゆる大手広告代理店の人も出入りしていたのですが、やっぱりこれからはインターネット広告の時代かなと思って。

大柴:なるほど。

二宮:それでYahoo!で「インターネット 広告代理店」で検索したんですよ。その時、ファンコミが3位にいて。1位から見ていったのですが、何となくファンコミが面白そうだし、アルバイト募集しているようだったので応募してみたんです。

大柴:なるほど。

二宮:ちょっと強面の人が面接官で(笑)。その人が「アフィリエイトをやりたいか?」と聞くので、当時アフィリエイトって言葉を知らなかったのですが「やりたいです!」って答えて(笑)。それが2004年春です。

大柴:そして入社して、すぐに社員契約になったわけですね。

二宮:そうですね。まだ40名くらいの規模で、このビルの1フロアだけでした。今は6フロア使ってます。

大柴:その頃ってまだ上場する前ですかね?

二宮:はい。上場目指して急激に拡大している時です。当時アフィリエイト業界でも1位じゃなくて「トップ目指そうぜ」みたいな空気が社内にあって、ガツガツした感じでしたね。

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大柴:ところで二宮さんは「nend」の立ち上げをやられたわけですが、その時の話を少しお聞かせいただければと。

二宮:当時は「A8」しか軸がなくて、新規事業の立ち上げが課題でした。そこで僕もA8から新規事業開発の部門に異動して、新しいことをやっていこうと。最初はその部門では、いろいろなメディアなどをやったりしてたのですが、あまり上手くいかなくて。苦しい状況が続いていました。

大柴:なるほど。

二宮:完全にコストセンター化してたのですが、チャレンジを続けさせてもらえたんです。会社としてはチャレンジを推奨してくれてたし、待ってくれてた。でもやっぱり「早く新規事業を作らないと」みたいなプレッシャーもありました。

大柴:そうですよね。

二宮:でも失敗の中で学んだんです。チャレンジして失敗し、でもその失敗から反省点をみつけてそれを次のチャレンジに活かしていく。そんな中で「nend」が産まれました。

大柴:「nend」は最初から順調だったんですか?

二宮:いやいや、最初は苦戦しました。競合に習ってimp売りだったんですよね。クライアント営業する中でも「せめてクリックじゃないと」と断られ続けて。でもメディアのimpは在庫として仕入れている。

大柴:あぁ、なるほど。

二宮:そんな中、「nend」立ち上げて3か月もせずに競合がクリック単価で売り出したんです。自分達も「imp販売は厳しい」と実感していたので、「nend」でもクリック保証をメインに変更することにしました。そこから収益は改善していったのですが、それでも厳しい状況は続いていました。単月でも赤字が1年くらい続いたのかな。

大柴:そうなんですね。転機はいつ頃だったのでしょうか?

二宮:2011年にいきなり大企業による競合の買収やら大手企業参入やらで業界再編がおきたんです。危機感を覚えました。彼らと同じ路線では勝てない。一気に食われてしまう。そこでファンコミが創業以来追い続けていたことに立ち戻ってみることにしました。

大柴:ほう。

二宮:「nend」もこれまでの成果報酬サービスに近い形で運用していこうと。パフォーマンス重視の運用型モデルに変更したんです。広告主さんには費用対効果を高く、メディアには効果が良ければ最大限の報酬を支払う。メディアも規模の大きさで区別することなく、平等にパフォーマンス重視で。こういうサービスならばこれまでファンコミが「A8」でやってきたノウハウも活かせるし、広告主、メディア、消費者がwin-win-winになる広告プラットフォームを目指せるんじゃないかと。

大柴:一気にパフォーマンス型に舵をきったのですね。

二宮:はい。そこからですね。広告主さんからもメディアさんからも高く評価していただいて。「nend」のプロダクト機能も運用型に特化したものや個人法人関係なくメディアに使いやすい機能を優先度高く開発していきました。仕組みとして上手くできたなぁと。「A8」の時と同じでクチコミで拡大していきました。「A8」の時と違ってSNSが普及していたので、拡大スピードは飛躍的に速かったですね。

大柴:今後アドネットワークはどうなっていくんですかね。

二宮:スマホが主戦場であるのは間違いなく、スマホの特性的に海外にでやすい。もちろん国内も頑張って行くけど、来年以降は海外も攻めていきたいと思っています。ここ1年、水面下で準備もしてきましたし、日本のスマホアドネットワークのトレンドやスタンダードは、「nend」が生み出してきたので、それをかついで世界にチャレンジしたいと思っています。ハードルはあるけど、チャレンジしがいがあるかなって思います。

大柴:たしかにそうですね。

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二宮:あとは新卒採用を強化したのもそうですが、これからのサービスはデジタルネイティブのコ達が作っていくと思ってます。創業メンバーも50歳を超えてきましたし、20代前半の才能が新たな世界を切り開いていくのは間違いない。そういう期待感を持って新卒採用を去年から強化しました。

大柴:どのくらい採用してるのですか?

二宮:今年4月入社の第一期が11名、来年が15名ですかね。再来年はもっと採用したいですね。楽しみです。とがった人がいるといいなって思ってます。ちなみに僕は履歴書に「広告業界の坂本龍馬になる!」って書いたんです。面接でスルーされましたが(笑)。

大柴:ファンコミと言えば柳澤社長、通称ヤナティさんが最近話題ですね。

二宮:そうですね。一昨年くらいから突然Twitterの投稿を活発化させまして。最近面接でも「ヤナティさんのファンです」と言ってくれる人が増えてきました(笑)。

※柳澤社長のTwitter

大柴:僕もヤナティさんには仲良くさせてもらってるのですが、二宮さんにとってのヤナティさんってどんな方ですか?

二宮:そうですね、最初の印象は「どん兵衛」を食べてる人・・・。

大柴:「どん兵衛」(笑)

二宮:社長室に決裁をしに行くと「どん兵衛」をよく食べてましたね、あの頃。あとは今でも宮益坂の「富士そば」でもよく見かけます。

大柴:行ったら会えるかもしれませんね(笑)。

二宮:先ほども話したのですが、新しいチャレンジには寛容な人だと思います。一度任せたら細かいことは言ってこないし、信頼してくれます。たまに相談や説明をすることがあるんです。アドテクやそれ以外の事など、細かい説明をする時もあるのですが、それを聞いた後に本質的な事を一言で突っ込んでくるんですよね。それはすごいなぁと。

大柴:なるほど。

二宮:Twitterやブログなどで投稿されているのを見たりもするのですが、やっぱり本質的な事を言ってるので、直接話すのとはまた違って良いです。

大柴:文章になってまとまってると理解しやすい時はありますよね。

二宮:はい。あ、あとこんな事も言ってましたね。「既存の広告業界からはいろいろ言われたり馬鹿にされたりするけどさ、僕達はたくさんの広告主、法人メディアから個人メディアまで幅広いメディアの縁の下の力持ちとして価値を出し続けてるのは素晴らしいじゃない」って。僕もそう思ってますし、ファンコミグループで働くメンバーもこういう価値観、理念について誇りを持って取り組んでると思います。

大柴:素晴らしいと思います。いや、今日は興味深いお話をたくさん伺えました。ありがとうございました。

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