増加するコーディングのブートキャンプーー従来のコンピューターサイエンスの学位は一方で減少

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Roshan Choxi氏はコーディングブートキャンプBlocのCEO兼コーファウンダーである。

 via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “hackNY.org“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

ここ数年、数を増すコーディングのブートキャンプが、空きのあるソフトエンジニア職と条件のみ合った候補者のギャップを埋めるのに役立ってきている。コーディングブートキャンプの成功は著しく、そのようなプログラムが従来からあるコンピュターサイエンスの学位の代わりになるのではという見解も出ている。例えば、PluralsightのCEOであるAaron Skonnard氏は「Edtech’s Next Big Distruption Is The College Degree」で次のように述べている。大学の学位は「学習、能力の習得、目標達成のための現実的な手段として主流になりつつある現代的な資格の数々」にとって代わるであろうと。

コンピューターサイエンスの学位数の低下に続くようにコーディングブートキャンプの卒業者の増加がこの考えを支持しているように見える。コーディングブートキャンプはコンピューターサイエンスの学位数の低下の要因なのだろうか。 それとも、学費、難易度の上昇や他に面白い学位が増えたといった未知の要因が原因なのだろうか。

アメリカの教育データを共有、分析、収集しているアメリカ教育省の国立教育統計センター(NCES)は、過去10年間でコンピューターサイエンスの学士号のパーセンテージの減少を示す学士号の歴史に関する膨大な情報を発表した。

Above: Source: Digest Of Educational Statistics (http://nces.ed.gov/programs/digest/)
上: 出典: Digest Of Educational Statistics (http://nces.ed.gov/programs/digest/)

NCES は2013年以降に授与された学位のデータを公表していない。2011年と2012年に初期のコーディングブートキャンプが設立されて以来、目立った影響は全く見られないものの、2003年にピークだったコンピューターサイエンスの学位数がそのころ既に急激に落ち込んでいたことは注目に値する。

IT WorldによるNCESのデータ分析は次のように結論付けられる。「開発者にとっては大変良好な市場であるにも関わらず、コンピューターサイエンスを専攻する学部生の数が伸びていないように思われる。」実際、コンピューターサイエンスの学位数が減ったのとほぼ同時期にテック分野は著しい成長を見せた。

そしてコンピューターサイエンスの学位が勢いを失う一方で、コーディングブートキャンプへの関心が増大している。Course Reportの2015年ブートキャンプ市場調査は、コーディングブートキャンプは「2014年の6,740人に比べ2015年には推定16,056人の卒業生」を送り出すと見込んでいる。その見解が正しいとすれば、コーディングブートキャンプは2013年のコンピューターサイエンス学部の卒業生数(50,962人)の約3分の1を教育することになる。またCourse Reportは2014年にはコンピューターサイエンスの学位取得者は48,700人に下落すると推測している。*

これら市場サイズの推計はDev BootcampGeneral AssemblyなどのブートキャンプをCourse Reportが広範囲に調査した結果によるものである。それによると、ブートキャンプの市場は前年比約280%の成長を見せている。特に、その数にはBloc(弊社)やUdacityなどのオンラインプログラムによる成長は含まれていない。つまり、実際の成長度数は実質的にはさらに大規模なものだと言える。

一方で、コンピューターサイエンス関連の就職口はすさまじい速度で増え続けており、これらの職に付くほとんどの者はコンピューターサイエンスの学位を持たない。アメリカ商務省の経済統計局は2014年7月に次のように発表した。「大学出身者でコンピューターと数学関連の仕事を持つ者のうち、35%のみがコンピューターサイエンスあるいは数学の学位を持っている。」(理数系の労働者のうち大学の学位を持つ者は3分の2にすぎなかった。)

ソフトウェア開発者の職は22%の成長が見通されており、その度合いはアメリカ労働省労働統計局によると「平均よりもはるかに速い。」 テック関連のアメリカの大手派遣会社のひとつRobert Half Technologyは2016年の報告で、「雇用の提供の競争はとても激しい。市場水準よりも高い給与、そして他にも魅力ある経済的インセンティブが一般であり、ストックオプション、フレックスタイム制、その他の特典の提供も含まれる」と述べている。

このデータからわかることは、

  • コンピュターサイエンスで授与される学士の割合の減少
  • ソフトウェア開発職の増加
  • それらの職種の報酬の増加
  • 現在のソフトウェア開発者の約3分の1のみがコンピューターサイエンスの学位を取得
  • 理数系従業員の約3分の1は大学の学位を持っていない

何がこの推移をもたらしているのだろうか。一つ考えられるのは、コンピューターサイエンスの学位が具体的な技能に欠けていることをいくらかの企業はだんだんと見抜いてきているということだ。「大学のコンピューターサイエンス学部はみじめな様態にあり、10分ごとに変化する分野において10年の遅れをとっています」と、テックスタートアップDittachのCEO、Daniel Gelernter氏は最近のFortuneの記事の中で述べた。

コンピューターサイエンス学部のカリキュラムの行き詰まりに関しては多くの企業がGelernter氏のような発言者に賛同しているが、4年制のコンピューターサイエンスのプログラムの卒業生と同じような能力を持つ人材を、12週間のコーディングブートキャンプが育成するのは困難であるという論争もある。ウェブやモバイルでの職業訓練は多くの企業の必要条件に見合っているが、Googleのように、より洗練されたテクノロジーを持つ企業は、その分野でより深い技量を有するソフトウェアエンジニアを必要としている。縮小しているものの、コンピューターサイエンスの学位が完全に無くなることはないであろう。

新たな経済危機がなければ、私たちの最良の統計からは、取得可能な開発者と適格な候補者のギャップは増え続けるだろうと指摘される。そのギャップの増大は、労働省の予測によると、少なくとも2022年まで「平均以上の速さ」で進むとされる。ソフトウェア開発者の教育の割合が民間のプログラムへと移行するのに伴い、コーディングブートキャンプの評論家たちは、より良い質の確保と消費者を詐欺や不正から守るための認定基準を設定するよう呼びかけている。

EQUIPのようなプログラムでブートキャンプを標準化する試みがどのような展開を見せるかはさておき、ソフトウェア開発スキルの需要が資格要件を満たす開発者の供給を劇的に上回る限り、さまざまな教育的アプローチの必要性は続く。従来のコンピュータサイエンス学科では、必要とされる従業員数の一定分しかトレーニングできないため、よりテクノロジー優勢になりつつある経済を担うために、オルタナティブなプログラムがそのギャップを埋めることを期待されている。

*教育省の全米教育統計センターの報告によると、50,962人に学士号が「情報工学専攻」に授与された。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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