EURO2016の競技場も導入、息子のアイディアと父親の技術が融合して誕生したハイブリッド芝生「AirFibr」

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先月10月5日、在日フランス大使館が開催した「日仏イノベーション・イヤー」。その一環として、在日フランス大使館のフランス貿易投資庁である「ビジネスフランス」は、フランスのスタートアップ13社を迎え、「フレンチテック東京」を開催しました。フランス企業の中でも、特に日本市場での活躍が期待されるスタートアップ13社が登場。そのうちの一社が、人工芝を開発する「Natural Grass」です。

人工芝と自然芝に見られる課題

スポーツでもしていない限り、競技場のグラウンドが天然芝なのか人工芝なのかを注意して観察することは少ないかもしれません。でも、大げさではなく、芝のコンディション一つで試合の明暗が分かれるといっても過言ではないほど、芝生は肝心な要素の一つです。

今回メールでお話を伺ったのは、Natural Grass社の創業者であるBertrand PICARDさん。従来の自然芝と人工芝には、それぞれ以下のような課題があったと言います。

まず、自然芝の場合。悪天候への抵抗力の低さ。中でも、大雨や寒い天候の際、自然芝は悪いコンディション(泥んこだったり)になってしまうことが頻繁。 また、極度に使用頻度が上がることに耐えられず、柔軟性も低い。スポーツクラブなどは、自然芝に極度なダメージを与えないために、イベントの開催数などを調整する必要が。特に、ラグビーやNFL、サッカー試合などは自然芝にダメージを与えずに連続開催することが難しいのだといいます。

一方、人工芝も課題知らずではありません。人工芝については、これまで選手の怪我のリスクが高まることを懸念する声が聞かれてきました。またゲームのクオリティーにも影響を及ぼします。選手の中には、スピードや跳ね返りなどが自然芝と異なるため、人工芝を好まない選手もいるほど。

ハイブリッドな芝生「AirFibr」

2009年に創業したNatural Grassが開発するのは、独自の特許技術を応用したハイブリッドな芝生テクノロジーです。人工根域に100%天然芝を定着させる「AirFibr」は、サッカーやアメフトなどトップスポーツの競技場用に開発されたもの。集中的な使用への耐久性、選手の安全のための衝撃吸収、多機能使用へのフレキシビリティという最高の性能を一度に実現します。

従来の人工芝では、抵抗力、ショックの吸収力、柔軟性といった要素はお互いに相反するものでした。AirFibrは、自然芝の心地よさを100%保ちながら、人工根域の抵抗力を備えます。グラウンドを使う頻度や悪天候による影響が少なく、一年を通して競技場を高いクオリティーに保つことが可能。

これによって選手の怪我が減り、また競技場をスポーツイベント以外にも活用できるようになることでスタジアムの稼働率そのものを上げることにも貢献します。

Natural-Grass

息子のアイディアと父親の技術の融合

Natrual Grassの創業者であるBertrand PICARDさんは、もともとロンドンの名門投資銀行 N・M・ロスチャイルド&サンズで働いていました。彼が、ハイブリッド芝についてのアイディアを考案したのは、2006年の父親との度重なる会話がきっかけ。Bertrandさんが思いついたアイディアを実現するための技術が父親にはありました。

「スタジアムのビジネスモデルの明暗を分けるのは、競技場だと考えました。より頻度を上げて幅広いイベントのために競技場を使えるようにできれば、市場が広がると。父の技術力と技術アイディアによって、スポーツ競技場の役割を広げることができました。その後、3年間におよぶ研究開発を経て、AirFibrテクノロジーを開発しました」

あくまで目安ですが、排水装置や暖房装置などを含むAirFibrを用いたサッカーフィールドの完成には、150万ユーロほどの費用がかかるとのこと。2014年のNatural Grass社は、400%の成長率で伸びているAirFibr。すでに、11のプロフットボールとラグビースタジアムに導入され、EURO2016では、セミファイナルを含む全競技の半数でAirFibrの競技場場で使われる予定も。

現在も、AirFibrの特許技術を応用するための研究開発が続けられています。その中でも、グリーン都市への応用を考えているとのこと。Natural Grass社は、2020年までにグリーンサーフィスにおけるグローバルリーダーになることを目指しています。2020年の東京オリンピックにもAirFibrが活用されるかおしれません。

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