スタートアップの検死報告その2:ニュース・ダイジェスト「Circa」の終了理由【CBIまとめ】

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Circaの終了は2015年1月。サイトにはまだこの文字が。

I have learned fifty thousand ways it cannot be done and therefore I am fifty thousand times nearer the final successful experiment.
(私は5万の出来ない方法を学んだのではない、成功に近づく経験を5万回もやったのだ/トーマス・エジソン)

スタートアップの検死解剖、初回につづいて2回目、今回はニュースキュレーションの先駆け「Circa」です。(CBIがまとめているリストはこちらに

今でこそニュースキュレーションアプリ・サービスは当たり前のような存在になりましたが、Circaが出現した2012年とかその周辺はまだ走りで、例えばRSSを自分でしこしこ集めてGoogle Readerで読んだり、国内だとはてなブックマークとかですかね、その程度だったように思います。

Circaの設立は2011年12月、ニュースのポイントを要約してダイジェストとして配信してくれるサービスで、アプリにはPush通知などが付いており、私の周辺でも「このサービスいいよ」と教えてくれる人も多かったものでした。

実は、THE BRIDGEでもピックアップという海外ニュースのほんのさわりだけ紹介する「話題の紹介記事」という短いのをやってますが、このCircaがアイデアの元ネタだったりします。Circaに触発されたかどうかはわかりませんが、彼らのダイジェストという手法を参考にしたメディア企画者は多かったんじゃないでしょうか。

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ニューヨークタイムズが提供しているnytnowもダイジェストアプリのひとつ

さておき、彼らのシャットダウンの経緯はあまり複雑ではありません。創業者のMatt Galligan氏がこれまたMediumに終戦宣言を書いているのですが、端的にまとめると資金調達がうまくいかずサービスを終了せざるを得なくなった、メンバーはもう次のキャリアに進んでいる、というものです。

いろいろ当時のニュースを物色してみると買収の話(一番話題になったのはTwitterによる買収ですね)もありましたが、そちらも最終的に成就せず。

手動キュレーションの限界?

ここからは実際に手動のダイジェストコンテンツをやってみた経験も含めての私の想像なのですが、やはり人力では非常に中途半端な状態になったのではないのかなというものです。

主にこのようなニュースアグリゲーター/キュレーションのビジネスモデルは広告です。

特に、彼らの場合はオリジナルを書くというよりは他紙の情報を伝える中間的な役割のため、ビジネスや元ネタとなるメディアとの関係性を成立させるには膨大なトラフィックが必要になります。国内で言えばSmartNewsやGunosy、Yahoo!ニュースのような役割ですね。

ただ正直、手動でどれだけ丁寧に記事のダイジェストを書いたとしても、この膨大なトラフィックを生みきれなかったのではないのかなと。例えば情報配信の本数ひとつとっても、いわゆるシステム的なキュレーションと比較すると1日に配信可能な数値の桁がひとつ、ふたつ違ってきます。

情報の質にこだわる場合、どうしてもトラフィックの伸びが望めず、私たちのようなコミュニティ(会員課金やイベント)に寄ったモデルにならざるを得ません。通常はこのバランスで、広告とイベント、課金や販売などを組み合わせるモデルが多いです。

Circaが終了までに積み上げた資金調達の情報をみると特徴的で、約572万ドルほどを集めているのですが、ここまでに9回も調達ラウンドもやっていたんですね。米国スタートアップでこのボリュームの調達額の場合は1回か多くても2回程度で集めることが多く、しかもそのほとんどがコンパーチブルノートであることからも、かなり資金調達には苦戦していたことがわかります。(全部CrunchBaseの情報なのでその点は了承ください)

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英ガーディアン紙が提供するメンバーシップモデル。購読とはまた違うコミュニティを提供する

ユーザーの人気もあって、認知度も抜群だったのに最終的には買収とならずにサービス終了となったことからも、収益モデルや計画にかなり問題があったのではないかなと。

ニュースのダイジェストは誰でもできるわけでなく、ある程度経験もった編集者が必要ですので、トラフィックに対する収益と彼らに支払うギャランティーのバランスが最初から破綻していたのかもしれません。つまり、このまま伸ばしても収益性は改善できない(コストも一緒に伸びていく)ということではなかなかバトンは渡りにくいでしょうね。

個人的には彼らがコミュニティ・モデルを採用していたらどうなっていたのか興味深いところです。コンテンツへの単純な課金は難しいですから、例えばガーディアン紙のやってる(未だによくわからない)メンバーシップモデルなんかは案外うまくハマったかもしれません。

いずれにせよ、良質な情報をどのように伝える「仕組み」作りは自分ごとでもあるので、引き続き情報を注意深くウォッチしてまいります。

via Medium

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