事業成長は昨年比で300%、クラウドソーシングのランサーズが支える数十億流通のビジネスとは?

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ランサーズ代表取締役の秋好陽介氏とLancers Philippines, Inc.代表の森井健太氏

ランサーズがフィリピンに同社初となる海外子会社を設立した。

12月16日付でフィリピンのセブシティに設立されたのは「Lancers Philippines, Inc.」。同社代表取締役には楽天、ユニクロと渡り歩き、フィリピンにてTask Share,incをスタートアップさせた森井健太氏が就任する。ランサーズは2015年4月にCrevo(旧パープルカウ)からdesignclueを事業買収しており、この登録ランサー数が国別で2番目に多いことが同国に進出したきっかけになっているという。

ランサーズ代表取締役の秋好陽介氏によれば、当初は国内クライアントの案件をフィリピン子会社にて受注することが中心になるが、今後は以前から話をしていた本格的な海外展開に向けて動き出すという。

筆者が初めてランサーズを取材で訪れたのは2013年4月のこと。当時はまだオフィスが鎌倉にあり、規模も30人ほどで外部からの資金調達も考えていない、そんなこじんまりとしたプラットフォーム事業者だった。

あれから2年半。外部からの大型資金調達や数々の資本提携を経て、ランサーズは現在140人規模にまで拡大。話を聞けば、案件流通総額は昨年比で300%ほどの成長を見せているという。久々に秋好氏に会ったので現在の状況などについて話をしてもらった。

チケットキャンプはランサーズをフル活用

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チケットキャンプの月間流通総額は26.5億円に到達。これを20名規模で運営する秘訣はクラウドソーシングにあった

秋好氏との話で驚いたのは利用事例の件だ。ランサーズの成長を支えるビジネスに法人向けのアカウントサービスがある。「ランサーズ for Business」というサービスで、複数社員がアカウントを管理できるなど、法人がクラウドソーシングを利用しやすい設計になっているという。

これを大いに活用しているのがチケット二次流通を手がけるフンザだ。筆者は以前、ミクシィによって巨額買収された同社をインタビューし、買収後約半年足らずで4倍強の26億円規模にまで月間流通額を成長させていることをお伝えした。

実はこの時、大変不思議だったのが彼らの陣容で、買収前からそこまで大きく拡大せず、現在も20名程度で運用に当たっているという点だった。同じくC2C関連で躍進しているメルカリが200名規模になっていることを考えると、少ない印象は否めない。

その答えが実はこのランサーズにあったのだ。フンザはランサーズで100名規模の人材プールを持っており、常時20名から30名のランサーをうまく活用して事業運営に当たっているということだった。秋好氏は守秘があるので具体的な金額等は公開できないとしつつも、一般的な事例であれば通常の雇用よりもコストは半分、もしくは場合によっては3分の1にまで圧縮できるという。

今後のビジネス成長の鍵は「個人の可視化」

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ランサーズは140名規模に拡大。企業のクラウドソーシング利用を支える

もう一つ気になったのが国内クラウドソーシング・プラットフォームの双璧といってよい、クラウドワークスの展開だ。同社は10月に一部案件の手数料無料化を発表し、ビジネスモデルの転換に動きつつあるという状況があるのだ。

秋好氏もクラウドソーシングの課題は「案件ありき」という点にあるといい、案件を先行させてそこに集まる人を選ぶだけではなく、企業が直接ランサーに対して発注をかけられるような世界観があってもいいという考えを示していた。

もちろんそのためには受注する側のランサーがどういう人で、スキルを持ち、どのような案件をこなしてきたかという「可視化」が必要になる。秋好氏もこの点については認定ランサーなどの制度で対応し、派遣だろうが正社員だろうが、オンラインでどこでも働ける状況を構築したいと語っていた。またそれを可能にする各人材のデータも大量に蓄積が進んでいるという。

私の予想では、今後のクラウドソーシング事業ではこの人材のデータが重要な役割を果たすことになるだろう。これについてはランサーズだけでなく、クラウドワークスも同様の考え方を示しているし、個人のスキルが第三者的に認証されれば、依頼する側も安心感が高まる。

「大型商業施設の動画制作やオリンピック開催に向けた翻訳、高額なコンテンツ制作などこの一年間で受注する案件の質や価格も大きく加速しました。陣容も140人規模になってこれからさらに増やしていきます。これまではプラットフォームがあって勝手に使ってください、という感じでしたが、今後はソリューションで提案できるとか、特定のタレントに直接頼めるとか、クラウドソーシング自体の概念を変えていくつもりです。ずっと言ってた教育も本格的にできるようになったんですよ」(秋好氏)。

彼らの提唱する「新しい働き方」はこれからの日本にとって必要不可欠な方法だ。まだ時間はかかるだろうが、しっかりとインフラを構築して、国内の雇用の一端を守ってほしいと思う。

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