Orange Fab Asiaが「Fall 2015 season」のデモデイを開催、日韓台仏のスタートアップ29社が東京に集結

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フランスのテレコム会社 Orange が展開する東アジア地域向けのインキューベーション・プログラム「Orange Fab Asia」は8日、東京都内でデモデイイベントを開催した。

Orange Fab Asia は日本、韓国、台湾をアジアにしたインキュベーション・プログラムだが、今回からフランス政府のビジネス支援組織 Business France がフランスのスタートアップを東京に招聘するプログラム La French Tech がジョインし、フランスからのスタートアップ8チームを含む、総勢29チームがピッチとブース展示を行った。

取材のキャパシティと紙幅の都合から、デモデイに参加したすべてのスタートアップを網羅することは難しいが、いくつか目についたスタートアップをこの機会に紹介しておきたい。

BankGuard(日本)

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オンラインバンキングを悪用した不正送金による損害は、世界で年間20億ドルに上るとも言われている。BankGuard が開発した「Super Matrix」は、ワンタイムパスワードや従来の乱数表よりも安全かつ安価なソリューションで、文字や数字ではなくピクトグラムを使うのが特徴。国際特許を出願中。静岡銀行、横浜銀行、住信SBIネット銀行とはNDAを取り交わしており、Super Matrix 以外にも SuperMoney というビットコイン技術を使った電子マネーソリューションを開発している。

Geo-Line(韓国)

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Geo-Line が開発する Plug & Pay は、電気自動車向けの充電ソリューション。電気自動車のユーザにとって不安なのは、出先での充電機会の確保だ。充電ステーションは、工事と維持にかかるコストが高額であるため、設置されている場所や数はまだ限られている。Plug & Pay の開発したデバイスは商用電源のコンセントに装着することができ、充電のために使った電力量の利用情報が内蔵するモバイルSIMを通じて電力会社に送られるため、公共施設や第三者のコンセントを拝借したとしても、電気料金がユーザに請求され、盗電にはならないしくみだ。

Mist Technologies(日本)

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WebRTC を使った分散型の動画配信システム 「MistCDN」で一世を風靡した Mist Technologies が第二弾として投じるプロダクトが「Mist Inline Player」。ウェブ上に埋め込まれた動画をモバイルブラウザで見る場合、再生時にはブラウザ上ではなく、動画再生プレーヤーが立ち上がることが一般的だ。Mist Inline Player では HTML5 で動作し、ウェブサイト側に JavaScript を1行挿入するだけで、ブラウザ上で動画再生できる環境を実現する。スマートフォンが持つ加速度センサーと連動し、ユーザの動きとインタラクティブな動画再生も可能。動画広告、プロダクト宣伝、オンデマンド動画サービス、360度動画サービスなどへの利用が期待される。

Pamily(韓国)

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犬は精神的に落ち込んだり、追い詰められたりしやすい動物だ。日常的に遊んであげたり、散歩に連れて行ったりしないと、最悪な例ではストレスが溜まり、自傷行為に及ぶことさえある。Pamily は、スマートフォンと連動するゴルフボールの大きさの犬用のおもちゃで、飼い主が遠隔で操作することにより、自走させることができる。専用アプリの操作により、振動や光、音を出すことができる。防水仕様でワイヤレス充電が可能。ペットフード業界、ペット保険の提供会社、通信会社などと連携して販売を拡大したい考え。

Ripple(韓国)

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Ripple が開発する「RippleBuds」は、騒音環境でもクリアな音声で話ができる、スマートフォンとあわせて使うデバイス。イヤフォンとマイクが内蔵されており、音声は骨伝導マイクで拾うため周囲の騒音が気にならない。この種のソリューションにありがちなノイズキャンセリングのためのチップを使わないため、製造コストおよび消費電力が共に少なくて済むことが特徴だ。2016年1月に Kickstarter でクラウドファンディングを開始する予定で、スポーツシーン、軍事関連や警察などでの利用を期待している。

StradVision(韓国)

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StradVision は、自走車に必要不可欠とされる物体認識ソリューション。車載カメラでとらえた画像から、リアルタイムで他の車、歩行者、標識の文字を認識することが可能だ。特に素晴らしいと思われるのが交通標識の認識技術で、英語だけではなく中国語で書かれた看板や標識も、文字はもとよりコンテキストを理解することができる。日本語認識はデモに含まれなかったが、中国語で可能だということは日本語対応するのも時間の問題だろう。カーナビ、GPS、ITS などと連携して、より安全な自走車の開発に応用されることが期待される。

Thinktank/智嚢団(台湾)

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ThinkTank は8月に台北で開催された IdeasShow でも Clapp.io というイベントに関するリアルタイム・フィードバックが得られるプラットフォームを披露していたが、今回新しいサービス「EXIT」を引っ提げての登場。地下鉄の駅というのは、GPS 電波を拾うこともできないので地図アプリを使うことができず、迷う人も少なくない。同チームが開発した EXIT は、地下鉄利用者ができるだけ早く適切な出口を見つけ、地上に(あるいは目的地に)出られることを意図したモバイルアプリ。現在、台北とバンコクの地下鉄179駅の情報に対応している。これらの駅の一日の乗降客数総和は684万人ということなので、アプリの利用により、人々の相当数の迷う時間のムダを省けるとのこと。

トビラシステムズ(日本)

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名古屋を拠点とするトビラシステムズは、オレオレ詐欺やいたずら電話をブロックするソリューションを開発。固定電話、スマートフォン、フィチャーフォンに機能を提供する。ユーザ申告による電話番号のホワイトリスト、ブラックリストを共有し、さらにユーザ毎に定義された不正番号リスト、加えて、トビラシステムズ独自の調査や警視庁などから得られたリストをもとに、不正と思われる発信者からの電話をブロックすることができる。以前、LINE に買収された台湾の Whos call や、韓国の Moya Calling などともコンセプトは近い。

VitaNet(日本)

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VitaNet は、BLE や BlueTooth といった、IoT の接続に使われる通信技術の暗号ソリューション。BLE や BlueTooth においては、互いの機器がハンドシェイクするために認識IDをブロードキャストしており、悪意のあるユーザに見つけられれば、不正にハッキング利用される可能性を誘発する。VitaNet の技術を使うことで認識IDはマスクされ、通信に暗号レイヤーが追加されることで、IoT 機器同士の通信がセキュアなものになり、ハッキングされる可能性を極小化できる。

WhyNotTech(台湾)

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WhyNotTech が開発した ARING Pro は、音声認識が可能なリング型のウエアラブルデバイスでスマートフォンと連動する。スマートフォンが実装する音声認識ソリューションは、Google Voice Search や Siri など、特定のアプリ環境でしか動作しない。ARING Pro を使えば、アプリの選択や起動はスマートフォン上で行い、入力や指示はリングデバイスから行うことで、文字入力が省略でき、よりスマートなアプリ操作が可能だ。現在 Kickstarter 上でクラウドファンディングを実施中で、今後 Amazon などでオンライン販売する計画。将来的には、ARING Pro をAmazon のウェブサイトと連動させ、購入したい商品を素早く探せるようにしたり、ネット接続可能なヘッドフォンと連携させたりすることを構想している。


今回のデモデイの終了とともに、 Open Fab Asia は次回バッチとなる「Spring 2016 season」への募集を開始した。エントリの締切日、プログラムの実施期間については、このページから確認してほしい(本稿執筆時点ではまだだが、一両日中に発表される見込み)。

アジアはもとより、フランスを中心とするヨーロッパ圏への進出を模索するスタートアップは、この機会への参加を検討してみるとよいだろう。

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