ヘルステック・スタートアップが成功するために必要な5つの掟

VentureBeat ゲストライター by VentureBeat ゲストライター on 2016.1.10

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本稿は、Bryan Roberts 氏とBob Kocher 氏による寄稿である。両氏は VC である Venrock の パートナーであり、Castlight Health、Grand Rounds、Zenefits といった多くのヘルステック企業への積極的な投資家である。また、彼らは Lyra Health の創業者である。


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CC BY-NC-ND 2.0 via Flickr by ibmphoto24

Medicare(訳注:アメリカの連邦政府が実施する公的医療制度)が施行され、アメリカ医療制度が重大な変貌を遂げようとして5年になる。2009年以来、500社以上のヘルスケアIT(HCIT)スタートアップがアーリーステージのベンチャーキャピタルの100億米ドルの支援により創設された。

我々は多額の投資をした投資家の立場から、彼らの将来に期待している。医療費負担適正化法(ACA)や HITECH 法(訳注:経済および臨床上の健康のための医療情報技術に関する法律)、Health Data Initiative(訳注:健康関連データのオープンデータ化)、また不景気によって、ヘルスケア提供者や保険会社、患者は、もっと変化を受け入れやすくなった。同様に重要なことだが、さまざまな業種出身の起業家がヘルスケアの世界に参入し、何十年も使用した古いテクノロジーや低い生産性に苦しんでいる巨大成長分野に挑戦する時が来たと信じている。

この変化に対して大企業が資本を投下し、アメリカのヘルスケアのコストと成果を根本的に再定義し始めている。残念ながら、我々が出会う企業の多くは失敗するか、ニッチな状態に終わるだろう。というのは、これらの企業は、ヘルステック分野の企業に不可欠な〝必須〟の教え——つまり、成功するヘルステック企業を作り上げるのに必要な5つの掟のどれかに背くことになるからだ。

掟1. 自社のROI(投資対効果)目標を知っておく

ヘルスケア関連企業は、ほとんど利益をあげていない。保険業界や病院の純差益は、よくても10%に満たない。だから、貴社の製品やサービスをこれらのグループに購入してもらいたいなら、明白なROI(投資対効果)を素早く提供しないといけない。理想的には最初の12ヶ月以内の利益還元だが、24ヶ月を過ぎるのはよろしくない。貴社製品が、その利益をもたらすのに時間がかかるのなら、あるいは、提供する ROI が悪くなければ、ひしめきあう財政難のバイヤー企業リストの上位に入ることはないだろう。

12ヶ月というのは、患者の保険適用期間であり、保険会社がリスク調整を検討したり、医師への支払スキームを見直したりするタイムスパンと同じなのだ。雇用主からすれば、2年間のROIであれば企業の関心を得られることもあるが、それ以上の期間となると、ほとんどの企業にとって労働者移動率(定着率や離職率)を克服するには長すぎてしまう。だから、予防医療ビジネスは実際の利益を上げるのに大変苦労してきた。経費削減に時間がかかりすぎて、最初のバイヤーが着手することさえできないのだ。

掟2. 患者だからといって、サービスを使ってもらえるとは限らない

人は、病気を思い出させられることを嫌う。だから、必要な時にしかヘルスケアに関わらない。関わるときには、急性短期症状(例.ケガからの回復)や、重篤な症状(例.癌や神経の病気)のいずれかだ。だから、もっと基本的な健康問題のためにずっと社会的に関わろうとするテクノロジーは、よい業績を生み出さない。口コミ効果が出づらく、顧客も移り気が激しい。

ヘルスケアのソーシャルネットワークを築こうとする多くの試みは、ヘルスケアが、実に何千、いや恐らく1万の異なる病気のカテゴリーであるという現実を克服することに苦労してきた(例.ステージ4の乳癌患者は、ステージ1の結腸癌の患者とほとんど共通点がなく、糖尿病患者や高血圧患者ともまた異なる)。これにより、顧客獲得費用や、顧客離れを克服し人々を惹きつけておくのに苦労の絶えない、細分化された小さなコミュニティとなってしまう。

重要なことに、慢性疾患患者はほとんどの時間を快調に過ごしている。慢性疾患は、ヘルスケア費用のほとんどを占めているという事実の一方で、患者にとって、製品やサービスの購入を正当化するため十分に高い費用を出すようになるまで時間がかかる(掟1を参照)。その結果、アプリストアは、薬の摂取を促すリマインダー、症状のトラッキング、寿命測定センサー、教育ツールでいっぱいとなってしまう。

掟3. 顧客選びは慎重に

顧客に割り引いた1ドルは、保険システムの他の競合から貴社が奪った1ドルである。これは貴社のせいで利益を失いそうな競合に、賛同や協力をしていてはいけないことを意味する(例えば、来院料を割り引くため、病院がコンピュータ上の症例記録を共有することを期待するなど)。

同じく重要なことだが、貴社が誰を支援しているのか把握しておくことが不可欠である。そして、貴社が挑んでいる問題が、顧客が貴社の失敗を望む他の人たちの目に脅威に映るほど、大きなものであることを認識しなければならない。

例えば、Castlight Health(訳注:サンフランシスコのヘルスケア大手)の顧客は、自家保険(訳注:保険会社を使わず、従業員の医療給付リスクを自ら引き受ける)の企業だ。Castlight は企業のヘルスケア費用削減のために存在し、これによって保険会社が依存するヘルスケア提供者の利益が必ず減る。Castlight は創業当時に事業を成功させるため、保険会社や製薬会社の利益責任者が求めた価格や品質データを確保すべく、彼らに代わって企業を後押しする必要があった。保険システムの中で、1社以上の利害関係者を喜ばすことができるのはめったにない。だから、顧客を選び、見極めることが重要なのだ。

掟4. B2B に特化せよ

多くの場合、大半の医療費は、消費者ではなく、雇用主が払っている。5,000万人のアメリカ人は、自家保険の雇用主を通じて保険に入っている。医療費負担適正化法(ACA)による消費者自己負担額は現在、年間6,600米ドルを上限としており、自家保険の企業は、その上限を超えた全ての経費を払っていることになる。

慢性疾患患者や、急性症状(妊娠や、虫垂切除など)が偶然始まった人は、誰でも自己負担額限度を超えることが多い。結局、患者は、費用曲線を曲げうる高価なものではなく、検体検査、画像診断、インフルエンザ予防接種のような、安価で選択制ケアを求める消費者のように行動してしまうだけである。人は常にお金のあるところに行きたいものだ。企業も同じだ。

B2Bの他の利点は、ヘルステック分野における消費者口コミ力の弱さを補えることだ。企業は、何十いや何十万人およぶ潜在ユーザを集められるので、卓越したチャネルパートナーになりうる。ユーザに瞬時にアクセスし、顧客獲得費用を下げるられるのだ。

このような顧客獲得は以前から、企業のランチルームでのマーケティングや25ドルクーポンを使って行われてきたが、最近では目に見える形で罰則を適用し、従業員間に普及させるため参加を必須とする企業が増えている。

掟5. 「集団健康(Population Health)」と「ビッグデータ」は、バズワードであることに留意せよ

健康プランや医者は、ハイリスクの患者を発見することに今日非常に長けている。それは、申告歴を反映したプランや、本質的な診断技術を持っている医者だ。実際、医者にハイリスクの患者をリストにあげるよう頼むと、コンピュータ予測よりもしばしば優れたことをする。集団健康とビッグデータの難しいところは、リスクにさらされた患者をみつけることではなく、むしろ、リスクを変化させるために何をするかという点だ。

「ビッグデータ」は、治療計画を患者個人にあわせることで治療の改善に寄与すべきだが、我々の保険システムは、これを現実のものとするのに必要な信頼性からかけ離れている。ビッグデータに重要なのは、正確な診断、治療、結果を一貫して伝達してくれる、大幅に改善された保険制度をまず求めることだ。それが手に入れば、我々はそこから、保険制度を最適化してゆけばいい。

我々が必死にそれを必要としている産業で変化と革新が見られのは朗報であり、この業界に参入する人材はまわりを活気づかせてくれる存在だ。この状況を持続するには、起業家とヘルステック企業は、これら5つの掟に集中し続ける必要があるだろう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

VentureBeat ゲストライター

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VentureBeat へのゲスト寄稿の翻訳です。

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