BASEがメルカリから4.5億円を調達ーー手を取り合う両社、それぞれの狙いとは?

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資本業務提携を発表したメルカリとBASEの創業メンバー

新年早々に明るい話題がひとつやってきた。

一部報道があった通り、インスタントコマースのBASEと、フリマアプリのメルカリの2社は1月4日、資本業務提携を発表する。BASEの実施する第三者割当増資をメルカリが引き受けるもので、BASEが調達する資金は4億5000万円。株式比率や払込日などの詳細は非公開となる。

また、今回の提携に伴い、メルカリの取締役である小泉文明氏がBASEの社外取締役(※)に、プリンシパルエンジニアの長野雅広氏が同じく技術アドバイザーに就任することも発表される。

BASE、資本提携の狙い

創業数年の若いEC関連スタートアップが手を組む理由はどこにあるのだろうか。取材に応じてくれたメルカリ代表取締役の山田進太郎氏とBASEの鶴岡裕太氏は、提携の経緯をこのように振り返る。

「(両社に出資しているEast Venturesの支援先の)プロゲートの移転祝いで久しぶりに鶴岡さんと会って話をしたのがきっかけですね。元々、お互いに会社を紹介しあったり、ECという観点からも近い位置にいました」(山田氏)。

「採用などの面でメルカリのHR部門の方に相談に乗ってもらったり、そもそも資金調達をしていた最中ということもあってタイミングがあったんです」(鶴岡氏)。

鶴岡氏によるとBASEも17万店舗を獲得し、今後は主に訪問客側のトラフィックを伸ばそうという計画があるのだそうだ。このマーケティング費用を中心に資金調達をかけ、このコマースプラットフォームを拡大させる。ここに、現在事業好調で、投資するに十分なキャッシュを持っているメルカリが現れた、というのが今回の顛末となる。

メルカリのメリットは?

では、メルカリ側のメリットはどういうものだろうか?

もちろん今後、両社の主力事業であるECやマーケットプレースでの機能連携なども実施されるという話なのだが、それよりも短期的に効果的と思える内容だったのが「人材の獲得」だ。

山田氏と小泉氏の話によればメルカリは現在、日米合わせて230名ほどの陣容に拡大している。中でも際立つのがテクノロジーに強い人材たちだ。創業者である山田氏をはじめ、取締役の富島寛氏と石塚亮氏の3名は共に経営経験を持った技術者であり、現在、執行役員CTOの柄沢聡太郎氏や冒頭の長野氏など、他社がみると誰もが羨むようなエンジニアたちが次々とメルカリの門を叩いている。

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子会社ソウゾウは開発言語に「Go」を使うことで人材採用の幅を広げた

実はこの取材の前に、私は山田氏とあるセッションで同席することがあり、その時にこの人材採用について興味深い話を聞いていた。

元々、エンジニアの採用というのは大変難しいものだ。そのために彼らもGithubを使った新人採用や、経営経験のある優秀な人材の一本釣りなど、試行錯誤を繰り返していた。中でも最近の取り組みで効果的だったのが元コミュニティファクトリー創業者、松本龍祐氏によるメルカリ子会社「ソウゾウ」の設立だったという。ここではメルカリの新規事業開発を目的に、エンジニアが興味を持ちそうな環境が整えられた。

結果として成長期のメルカリとはまた違ったエンジニア人材が採用できたという。

今回、BASEとは人材採用についても共同戦線を張り、共にエンジニアを中心とした採用活動を進めるという。また資本提携があるので人材交流も可能性があり、例えばメルカリからBASEに出向、なんていう手法も使えると話していた。

幅広い内容で人材を募ることができる、というのは現在のメルカリにとって(もちろんBASEにとっても)十分なプラス要素になり得るだろう。

長期的な視点ーーPAY.JPのゆくえ

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少し長期的な視点に立つと、両社ともECという事業から決済に向かうのはある意味必然とも言える。過去、この話題は何度か両社からも聞いていたし、BASEは早々と決済事業のPAY.JPを立ち上げている。

ただ、この辺りはまだお互い具体的な行動があるというより、少し先の出来事として計画しているような雰囲気だった。メルカリもBASEも今後、株式を公開して幅広く資本を集める事業体に拡大する可能性は十分にあり、決済のような堅牢なインフラを求められる事業についてはその時が来てからでも遅くはないだろう。

EC市場もなんだかんだ言ってまだまだ伸びしろが残っており、市場についても海外に目を向ければ広大だ。更に決済まで可能性を見出すとなれば、あれやこれやと手を出すよりまずはしっかりと陣容を固めるのが先決と考えてもおかしくはない。

同時期を生きる国内スタートアプリが手を組むことでどういう化学反応が起きるのか。引き続き彼らから目が離せなくなってきた。

※初出時に取締役となっておりました。正しくは社外取締役です。訂正してお詫びいたします。

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