人は「好き」を仕事にするべきか?

ゲストライター by ゲストライター on 2016.1.21

Jason-Fried-profileJason Friedさんは、BasecampのファウンダーでCEOです。「Getting Real」「Remote」、そしてニューヨーク・タイムズのベストセラーで日本でも話題になった「REWORK」(邦題:「小さなチーム、大きな仕事」)の著者でもあります。本稿は、もともとIncに投稿され、Mediumにも再掲された記事をご本人から許可を得て翻訳したものです。Twitterは、@jasonfriedでフォローできます。


愛したり、好きだったり、どうでもよかったり、嫌ったりできることたち。(イラスト:Nate Otto)

愛したり、好きだったり、どうでもよかったり、嫌ったりできることの例。(イラスト:Nate Otto)

人はほんとうに「好き」を仕事にするべきか?

スタートアップを対象とするカンファレンスに参加したり、モチベーション・スピーカーの講演を聞いたりする機会が十分にあると、ある一つのアドバイスが繰り返されていることに気がつくだろう:自分の仕事を好きになろう!自分がやっていることを好きになれないなら、いっそのこと家にいたほうがいい、と。

偉大なスティーブ・ジョブスは、スタンフォード大学2005年の卒業生に対してこう伝えている。「偉業を成し遂げるために必要なことは、あなたの仕事を愛することだ。もし、まだそれに出会えていないなら探し続けてほしい。決して妥協してはいけない」。

僕はそうは思わない。

もちろん、仕事を好きになることには何の問題もないーただ僕は、それが事業を始めることや満たされたキャリアを築くため、または偉業を成し遂げるための前提条件だとは思わない。むしろ、成功者が「好きであること」にこれほど焦点をあてることを不誠実だとすら感じる。お金持ちが「お金なんて関係ない」というのと同じくらいに。

人間には、自らのモチベーションや歴史を美化する傾向がある。今、自分にとって大事なことに重きを置き過ぎて、始めた頃に大事だったことを忘れてしまう。これは人間の性で、僕たちはこれをいとも簡単にやってしまう。

僕には、素晴らしい事業や重要なイノベーションの多くは、苛立ちや時に嫌悪から生まれているように見える。Uberの共同ファウンダーであるTravis KalanickやGarrett Campは、移動手段や物流が好きでライドシェアリングサービスを始めたわけではない。それを始めたのは、タクシーがつかまらないことに怒りを感じていたからだ。

Kalanickは、今でこそUberを運営することを愛しているかもしれないが、家に帰る手段がないことに心底嫌気がさしていた。パリでたまたま行ったブレーンストームが、その苛立ちを何十億ドル規模の企業へと導く種へと変えた。

普段から起業家と頻繁に話をするが、こうした企業の多くも似たようなことを機に誕生している。ファウンダーが、まだ存在しないものを自ら欲しいと思ったから、または従来のやり方を改善できる機会に恵まれたから。

そのストーリーにおいて、対象への好意や愛は必ずしも重要ではない。むしろ、既存の選択肢への嫌悪と、本来あるべき姿に対する譲れない意見のほうが、その先の成功を予測する確かな要素ではないかと思う。

僕自身のキャリアもまた例外ではない。90年代の中頃、自分の音楽のコレクションをトラッキングするシンプルなツールを探していた。でも、既にあるプログラムはどれも複雑で肥大化していて、僕はむやみに複雑なことが嫌いだった。だから、自分でツールを開発することにして、それを後にAudiofileと名付けてリリースした。

別に音楽を集めることが好きだったわけではないし、ソフトウェア開発だって特に好きだったわけじゃない(当時、学び始めて間もなかった)。また、ソフトウェア事業を立ち上げるという願望があったわけでもない。ただ単に、ニーズを感じてそれを充しただけ。何の問題もない。同様の状況が、今運営しているBasecampを立ち上げるきっかけにもなった。

正直なところ、今ですら、自分の仕事が常に好きかというとそうでもない。書類作業、報告業務、それに成長を続ける大規模企業を任される責任に伴う些細な日常業務。このどれも僕を熱狂させるものではない。それでもなお、他のどんなことよりBasecampをやっていたい。

毎日、チャレンジに満ちたクリエイティブな仕事をすることが自分は得意だと思う。より良いプロジェクトマネージメントツールの開発には価値があり、やりがいのある課題だと感じ続けている。また、日々素晴らしい人たちと共に仕事ができることに喜びを感じている。

もし、僕が人のやる気を起こさせるようなモチベーショナルスピーチをするなら、こう伝えるだろう。もし、君が成功して価値ある社会貢献がしたいなら、自分の仕事に対して内発的なモチベーションを持つことだ。そして、それに時間を費やすことに喜びを感じなければいけない。

愛は育まれるかもしれないーそれは素晴らしいことだ。でも、それが最初からそこにある必要はない。まだない何かを求めることだけで、君は成功することができる。

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この記事は、「Inc Magazine」2014年2月号に掲載された。僕がIncに書いているマンスリーコラムは、Inc.comまたはキヨスクで読むことができる。

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また、最新のBasecamp 3も忘れずにチェックしてほしい。僕が心底愛してつくったものだ。

(翻訳:三橋ゆか里)

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