2016年、インドのeコマースはどう変わるか?

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eコマースは、まぎれもなくインド経済を支える主要な産業の1つになっている。Goldman Sachs のレポートによると、2015年から2018年度の間で41%のCAGR(複合年間成長率)で伸びると予想されている。

インドの消費GDPは10年以内に2兆5,000億米ドルになり、そのうち10%はオンライン消費となる。つまり、eコマースは、2,500億米ドルもの消費を生み出す重要な役割を担うことになると予想されている。

2016年からは、インドのeコマース産業は顧客満足やビジネス規模の拡大を信頼性、確実性、収益性を通して実現するために、長期的なビジョンに注力するよう再調整する必要がある。

企業は、全株主により良い体験を提供するために革新的で顧客志向のソリューションを提案する必要がある。これまでにないほどのインパクトのあるデジタルコマースエコシステムを生み出すには、4つの分野に重点を置くことが重要である。

4つの分野とは、デジタル決済、O2O及びオムニチャネル、ローカライズさ れたインターフェイス、そして、予測解析である。

デジタル決済によって付加価値取引が可能に

カード決済からより快適なデジタルウォレットの採用に至るまで、支払い方法はeコマース利用者が快適に付加価値のある取引を行うには不可欠なものになった。

2016年は、顧客体験を改善することに焦点を当てたより効率的なデジタル決済ソリューションを数多く目にすることになるだろう。このようなソリューションが現れれば、金融サプライチェーンや返金方法にも影響を及ぼすことだろう。

銀行はすでに、IMPS取引を通してこのソリューションの構築を支援している。この取引を利用すれば、返金業務をより速く処理することができ、ケースによっては1時間以下で返金することさえ可能になる。

2016 年は、より速い現金取引ソリューションが顧客や販売者向けに開発されるだろう。例えば、銀行は金融サプライチェーンを強化するために、取引のあるeコマー スに対応した物流会社と協力することができる。

この協力によって、銀行システムで迅速な現金の回収・登録が可能になり、さらに、マーケットプレイスや販売者へ早期に支払いを行うための効率的な技術統合も可能になる。

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同時に、インドのモバイルウォレット市場は2020年までに66億米ドルに到達すると予測されている。この予測から、シンプルで安全なデジタル決済オプションとしてデジタルウォレットが導入される可能性が高いと思われる。

Host Card Emulation(HCE)、Near Field Communication(NFC)、Bluetooth Low Energy(BLE)、 Quick Response(QR)コードのような様々な決済ソリューションがあり、デジタルウォレットはすでにワンタッチの安全な決済ソリューション、とりわけキャッシュバック取引を通して価値を生み出している。

今後はRBIの2段階認証権限を満たしているだけでなく、MPIN のような既存の技術よりも高速で安全な「On the go Pin」のようなソリューションが現れて、オンラインでのワンタイムパスワードやオフライン取引の必要性もなくなっていくだろう。

O2Oとオムニチャネルにより統合された取引が可能に

消費パターンの変化に伴い、ウェブやアプリ、実店舗など複数のチャネルから顧客にアプローチする必要性を認識する小売業者やマーケットプレイスが増えてきている。

オムニチャネルプログラムが強化されたことで、eコマース企業は、実店舗とオンラインの両方の製品の特定と配送を統合しやすくなり、顧客へ付加価値やロイヤルティを提供できる。

インドでは、まだオフラインの実店舗で商品を実際に手にして選ぶことを好む消費者がかなり多い。オンライン・ツー・オフライン取引は独自のポジションにあり、多様な消費者の要求や購買活動に応えている。

テクノロジーは直感的なO2O体験にとって不可欠な要素であるので、企業は独自の視点で差別化された体験を提供するために、まずデータ統合や未来を見通した分析に注力することができる。

実際に、地元密着型サービスの成功例である Click And Collect コマースサービスアシスタントを構築する一連の戦略的な取組みは、単純化された技術ソリューションの強固な土台の上に行われることになる。これらの取組みの例は、自動車、アパレル、不動産業界などの分野で見ることができる。

オムニチャネルの必要性がブランドにもっと認知されれば、オムニチャネルはさらに広がり、広く浸透するだろう。

ローカライズされたインターフェイスの価値の認識

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eコマースビジネスの急速な成長に伴って、eコマース業界は、市場シェアを増やすことのできるまだ未開拓分野のインドの人々の層に、まず目を向ける必要がある。

IAMAI(インド・インターネット&モバイル協会)のレポートによると、インドの2億5,900万のインターネットユーザのうち、第2級・第3級都市に住む1億2,700万のインターネットユーザは、言語の壁に阻まれて、まだオンライン上に現れていないという。

しかし、このグループの消費需要は英語圏のものと並ぶほど多様で高い。したがって、eコマース産業をまだ開拓されていない市場に広げていける可能性がある。未開拓市場には1億人以上のインターネットユーザがいると見積もられている。

次に成長が見込まれる領域は、言語ベースのインターフェイスソリューションやバックエンドサポート、顧客対応チームを作って地元の顧客だけが独自に体験できるものを提供することであると私たちは考えている。

この可能性を認識し、最初にUIを11地域の言語でローンチしたeコマース企業がSnapdealだ。これは、農村地域もデジタルウォレットで経済活動に巻き込んでeコマースのトレンドを広げていくと考えられている。

将来は現金不要な経済になる可能性が高いだろう。

革新が単純化と予測化の波に乗る

価値あるコマース体験は、商品の特定、購買、配送がいかに簡単であるかにかかっている。

顧客志向という考え方をすれば、複数のプラットフォーム、チャネル、アプリなど「一繋の真珠」にまたがるユーザエクスペリエンスの様々な側面を混ぜ合わせることを思いつくだろう。

これこそが、産業が成熟するにしたがってeコマースの取組みに対する反省、さらには弾みとなるものである。この側面が、ブランドやプラットフォームを利用した時に顧客が体験することなのだ。

顧客にインパクトを与えるには、まず、インターフェイスを直感的に操作できるものにできて初めて第一歩となる。製品の特定の効率性、他ユーザの購買体験に影響を受けるソーシャルプラットフォームの統合、オフライン閲覧体験の向上のような数多くの革新は、全ての段階が初めにインパクトを与えるための準備なのである。

現在、eコマースマーケットプレイスが注目すべき重要な領域は、主に信頼性や利便性の欠如による顧客の不満にリアルタイムに対応することだろう。技術の最先端で言えば、詐欺を未然に防ぐことができる厳しい製品品質チェックのようなソリューションを使って問題解決が行われる。

ビッグデータを使った解釈や予測分析の利用などは、eコマース企業が顧客対応を強化する方法を考える際に重要な要素となっている。

実際、顧客へ製品を勧めたり、販売者にビジネスソリューションを勧めたりする時は、顧客の嗜好を見極められるかにかかっている。しかし、データ解析は、特に工程管理の場面では活用されていない場合が非常に多い。

2016年のeコマースビジネスは、バックエンドソリューションを管理するためにデータ解析とより密接に関係してくるだろう。今日のエコシステムを見てみると、物流パートナーやマーケットプレイスは製品をより効率的に追跡することでプロセス管理の改善を促進し始めている。

例えば、特にオンライントラフィックの多い日に需要急増の予測を立てたり、組立て、配送障害を賢く管理したりするのに使われている。

eコマースは、エコシステムを強化するために多額の投資がなされていることからしても、より高い段階へと引き上げられるだろう。

バリューチェーンの様々な要素を変えることに取り組んでいる企業は、持続可能なeコマース部門を作ることも可能だ。したがって、デジタル決済、O2Oコマース、事前に単純化した技術革新は、顧客や販売者どちらに対しても価値を向上させてくれるだろう。

産業が進化するのに伴い、農村地域にいる人々もオンラインショッピングに巻き込もうということに重点が置かれることで、eコマースはさらに変革していくだろう。

デジタルコマースは、インド市場にさらなる革命を引き起こすだろう。そして、これらの展開を経て、最終的には国の経済成長を強固にする重要な役割を果たしていくのである。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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