「女性のテックコミュニティ」にこだわる理由とは? プログラミング超初心者を惹きつける「GGC Tokyo」の取り組み

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上:GGC Tokyoのイベントの様子
上:GGC Tokyoのイベントの様子

女性向けテックコミュニティというのが日本でもじわじわと広がっているようだ。もともとテック業界といえば男性比率が高く、プログラマーを対象にしたミートアップなども男性中心というイメージだ。

そんな男性的なイメージがあるテック業界で活躍する、興味を持つ女性を増やすべく活動しているコミュニティがいくつかある。その一つ「Geek Girls Carrots Tokyo」のファウンダー、キム・キュヨンさんに今回お話を伺った。

キムさんは、サイバーエージェントにてゲーム部門の海外事業・海外マーケティングを担当したあと、同社を昨年8月に退職し、現在は株式会社ウィキッズにジョイン。また、個人でもゲームの海外事業に関するコンサルティングを行っている。そんな「本業」に取り組む傍らで、今回紹介するグローバルな女性テックコミュニティのGeek Girls Carrotsの日本版を立ち上げ、Tokyo Local Leaderとしても活動している。

佐藤:さっそくですが、Geek Girls Carrots (GGC)ではどんなことをされているのですか?

キムさん(以下敬称略):ポーランド発祥の女性テックコミュニティで欧米圏では割と広がっているのですが、アジア圏では日本で最初にスタートしました。

GGC Japanは昨年4月のキックオフイベントからスタートしました。それ以降、2、3ヶ月に一度ミートアップやワークショップをやったり、キャリアハックとコラボイベントをやったりもしました。

昨年前半は、私自身がエンジニアでもないこともあって、非エンジニアが対象のアイデアソンとかゆるいミートアップが多かったのですが、今年後半にはじめて「Code Carrots」をやってみて、どちらかというとビジネスサイドよりでプログラミングは未経験だけれども、エンジニアとやりとりをする機会があるという方々を対象に、超初心者向けのプログラミングワークショップを開催しました。

かなりそれが良いイベントだったので、今年はそういうワークショップも継続しつつ、もっと定期的に1ヶ月に1度ぐらいは集まれる機会をつくりたいなと思います。

佐藤:いつも何人ぐらいの方が集まるんですか?

キム:ミートアップは多いときに50人ぐらい、ワークショップはメンターの数に限りがあるので20人までというように制限をかけたりすることもあります。

「面白そう!」と思った瞬間にファウンダーにコンタクトをとっていた

佐藤:GGC のことを最初に知ったのは、私の記事がきっかけだと聞きました。記事を読んで、すぐにGGCのファウンダーにコンタクトして「日本でも立ち上げよう!」と思ったのはなぜですか?

キム:GGC以外のことでもそうなんですけど、私は「面白そう!」と思ったことについて、一歩踏み出すのがとても速くて、あの記事を読んだときに「面白いな、日本でもやってみたいな」と思ったとほぼ同時ぐらいに、すでにLinkedinでファウンダーを探して、コンタクトしたんです。

上:GGC Tokyoのファウンダー Kyuyon Kimさん
上:GGC Tokyoのファウンダー Kyuyon Kimさん

佐藤:すごい行動力……!

キム:それで、直接ファウンダーと話をしてみると、彼女ももっとグローバルに広げたいと思っている、アジアで開催できるなんて夢みたい、と言って喜んでくださって。だったらトライアルで4月に1回、ロールモデルに適していそうな女性に登壇してもらって、あとは懇親会というようなゆるいキックオフパーティーをやってみようと話になって、実際に4月にキックオフイベントを開催しました。

「プログラミング言語は宇宙語」という方を対象にした「Code Carrots」

佐藤:その後、反応が良かったというプログラミングワークショップ「Code Carrots」はどんな方が集まられたんですか?

キム:今回は初心者にターゲットをしぼっていて「プログラミングをやってみたいけど、何の言語から始めればいいかも分からない」「普段プログラマーとやりとりしているけど、画面が黒いだけでちょっとコワイ」とか「営業担当でクライアントとやりとりしてるけど、クライアントのビジネスモデルがよく分かっていない」とか「ディレクターでエンジニアに依頼を出すことが多いけど、エンジニアのしゃべっている言語が分からない。宇宙語だ」というような方々が参加されました。

佐藤:じゃあ、プログラマーに転職したいというよりも、基本知識を身につけて今の仕事に活用したいというような方ですね。

キム:そうですね。で、これがきっかけでプログラミングに興味を持ってもらってプログラマーを目指すということがあってももちろんいいですし、そうじゃなかったとしてもOK!というかんじでやりました。

上:GGC Tokyoでのプレゼンの一部。「うちの嫁は僕よりギークなエンジニア」というケースも今後増えるかもしれない。
上:GGC Tokyoでのプレゼンの一部。「うちの嫁は僕よりギークなエンジニア」というケースも今後増えるかもしれない。

佐藤:当日はどんな流れですか?

キム:最初の1時間は簡単に講義をして、そのあと実践でコードを書いてもらいながら説明をするという形にしました。そのときは、占いサイトの見た目を変えたり、生年月日と名前を入れると運勢が表示される形だったのですが、その仕組みをメンターと一緒にちょっと変えてみたり、といったことをやりました。

基本的な知識は最初の講義で吸収してもらって、そのあとは「じゃあ、これをこう変えるにはどうしたらいいんだろう」ということを自分で考えてもらって、そのあとはメンターにマンツーマンで指導をしてもらうという流れです。

佐藤:言語は何を使ってたんですか?

キム:HTML/CSSとJava Scriptでやりました。

最近、女性を対象にしたコーディングコミュニティというのが日本にもいろいろ存在することが分かったので、他のコミュニテイのことも理解しつつ、お互いにシナジーを生み出せるような形になるといいかなと思ってます。

他のコーディングコミュニティはがんがんコードを書くというイメージもあるんですけど、GGCは私自身もそうなんですけど、非エンジニア層でビジネスサイドの方々も多いんですね。なので、この前のCode Carrotsのようなプログラミング初心者を対象にしたものをやりつつ、もっと深めてみようとなった場合には他のコミュニティとコラボしたり、といった役割分担ができるのではないかと考えているところです。

「女性のコミュニティ」にこだわる理由とは?

佐藤:女性向けのコーディングコミュニティとしては、他にどんなものがあるんですか?

キム:この前、女性限定の「Geek Women New Years Party 2016」というのが開催されたんですけど、その共催コミュニティを見てみると、PyLadies Tokyo、Java女子部、Django Girls Japan、Rails Girls(Tokyo)……などなど、たくさんありますね。

佐藤:コミュニティ同士のネットワークが広がっていくのも素敵ですね。あと、基本的な質問だけど、GGCは女性限定ということで、男性は参加できないんですか?

キム:男性で参加を希望されたケースもあって、その場合は参加していただいています。でも、人数はとても少ないですね。メンターの方は男性が多いですが。

上:GGC Tokyoの様子
上:GGC Tokyoの様子

佐藤:「女性のコミュニティ」にこだわる意義はどこにあると思います?

キム:いろいろあると思うんですけど、他のプログラミング系のワークショップやミートアップって、どうしても男性比率が高くなりがちじゃないですか。で、男性比率が高くなると、より未経験者の女性とか多分来づらいんですよね…。特にGGCでは、プログラミングをこれから始めたいというステージの人が多いので、そういう人たちが気軽に参加できる場所を提供するためには、女性に限定したほうが気軽な気持ちで来てもらえますね。それが理由としては一番大きいかなと思います。

あと同じ業界で働いている女性同士のつながりを求めている方も多いですね。懇親会とかも、最初は盛り上がらなかったらどうしようと心配していたのですが、実際は結構盛り上がりますね。こういうミートアップに参加する方って、やりたいことやビジョンが明確な方が多いので、参加者の方同士で一緒に何かやってみようというふうに盛り上がることもあります。

佐藤:確かに興味が近い人同士だと、GGCを超えてつながりができそうですよね。

キム:それから、メディアと連携して発信もしていきたいと思ってます。最近はだいぶテック業界で働く女性のイメージがキラキラしたものに変わってきつつあると思うのですが、それをもっと促進できるなと思ってます。

今はプログラミングに興味を持つ女性って、まだ男性より少ないと思うんですよね。大学生だと、女子大生ハッカソンなんていうイベントとかもあったりして、結構盛り上がっているかんじもするんですけど、20代後半から30、40代などに対しても、いろんな形のロールモデルを発信して知る機会をつくっていきたいなと思っています。

佐藤:GGCの参加者は年齢層はどんなかんじですか?

キム:年齢層はバラバラで、大学生から40代後半まで幅広いです。ボリュームゾーンは、20代後半から30代前半ですね。

あと年齢に関わらず、女性同士で集まって、テンションが上がるようなカップケーキとか、ロールケーキタワーとか、そういうのは用意するようにしてます。

「ハッカソン=ピザ」というイメージをなくしたい

佐藤:もちろん、キャロットも?

キム:キャロットの人形は毎回用意してます。キャロットケーキも用意したいんですけどね(笑)。

Geek Girls Carrots は、なぜキャロットなのか?とよく聞かれるんですけど、私も最初にファウンダーに聞いたら、ハッカソンとかああいうイベントって、男性がいて、だいたいピザを食べてるじゃないですか。ピザとビールみたいなイメージだと思うんですけど、そういうイメージをもっとなくして、女性らしいヘルシーで明るいイメージを出したいということでキャロットになったそうなんです。

佐藤:それは知らなかった!(笑)

上:イベントで用意されたGGCのキャラクターを使ったカップケーキ
上:イベントで用意されたGGCのキャラクターを使ったカップケーキ

キム:やっぱりコードを書くっていうとピザというイメージがあるんですけど、そのイメージを変えたいなというのがあります。なので、かわいいお菓子とか、すぐにテンションが上がるものは毎回用意するようにしています。

あと、かわいいものを置くと写真を撮ってシェアされる機会が増えるので。

参加者の中にはコードを書いたことがないアパレル系の方とかもいるんですけど、そういう業界にもアピールできるような、明るいイメージをつくっていきたいですね。

佐藤:GGCのミートアップは誰でも参加できるんですよね?

キム:誰でも、興味さえあればOKです。毎回テーマが設定されているので、そのテーマに興味がありさえすれば、参加していただけます。

佐藤:今後も、ますますコミュニティが広がっていくことを期待してます。ありがとうございました。

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GGC Tokyoの次回のイベントは、1月25日(土)。「新年のセキュリティ講座」と懇親会の2部構成で開催されるそうです。イベントの詳細はこちらからどうぞ。

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