教育系スタートアップ、中国の「ものづくり」革命の好機をつかむ

TechNode by TechNode on 2016.1.31

Image credit: Bigger Lab

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中国人の保護者が、正規課程の授業と並行して実施される多数の課外授業に子どもを参加させることはよく知られているが、今やイノベーション駆動型の技術への投資が増大したことで、また新たな選択肢が生まれている。それは、中国語で言う「創客課程」すなわち「ものづくり」の授業である。

「我々は経験学習と課題解決型学習の原則に忠実に取り組んでいます」と述べるのは、中国で「ものづくり」教育に取り組む数ある企業の一つ、Join-In(中国名:卓因青少年創意工場)である。彼らは3歳から18歳までの子どもを対象とした幅広い種類の講座を運営しており、その内容は腕時計のはんだ付けからBluetoothで遠隔操作可能な自動運転車の組み立てにまでわたる。

ものづくり教育、言い換えれば「ものづくりを通じた学習」においては、実践的な課題に生徒が一人であるいは仲間と取り組む際に、生徒の経験の一部として学びが生まれると考えられている。原則的に、教師はファシリテーターやガイドの役割を担う。教師の仕事は、生徒が何かしらの学習目標や新しい発見に到達できるように、答えをただ聞かせることではなく導くことなのだ。

急速に進む中国のものづくり革命

中国では、「ものづくり」という用語はいま話題の流行語だ。この用語はハードウェアの事業を指して使われることが多いが、「作る」という言葉は絵画や料理、編み物、3Dプリント、ロボット製作、水耕栽培などあらゆる創造的活動に向けて使うことができる。

ヨーロッパやアメリカにおいて、2000年代初頭にメーカースペース(ものづくり従事者が道具や知識、企画などを持ち寄ることができる共有空間)が現れ始めたが、中国のものづくり革命はその流れの軌跡をたどっている。

2010年に、中国で最初のメーカースペース Xinchejian(新車間)を David Li 氏、Min Lin Hsieh 氏、Ricky Ng-Adam 氏の3人が上海に開設した。それ以来、メーカースペースは上海や北京などの大都市のみならず、南京、蘇州、成都など中国全土で生まれている。

2010年12月には、「我愛発明」(日本語で「発明大好き」といった意味)というTV番組の放送が始まった。番組司会による生放送でのデモや分析に加え、毎回さまざまな中国人による発明が特集される。2014年には、Intel、清華大学、中国教育部留学サービスセンターの主催で開催された第1回China – U.S Youth Maker Competitionを中国教育部が後援した。昨年1月には、中国首相の李克強氏が深圳にあるメーカースペースの Chaihuo Makerspace(柴火創客空間)を鳴り物入りで訪問し、柴火創客空間の2015年最初の新会員となった。

ものづくりに従事する方々は、人々の驚くべき起業家精神や創造性を物語ってくれています。このような活力や創造性は、中国の将来的な経済成長の尽きせぬ原動力となるでしょう。(李氏)

中国のものづくり革命への政府による熱烈な支援は驚くに値しない。多くの中国企業や団体はものづくり文化の教育的価値に着目する一方で、中国政府はものづくり文化を主に起業家精神の起爆剤として見ている。

McKinsey が昨年10月に発表したレポートによれば、中国の労働年齢人口が2050年までに16%減少すると見込まれる中で、国内発のイノベーションはこれからの数十年における至上命題となるだろう。中国のものづくり革命によって、少なくとも部分的には製造業からスタートアップやイノベーションへ、国家の体質が劇的に転換されうると中国政府の目には映っているのだ。

Xinchejian(新車間)が入居する Hero Center(上海創客中心) 2015年7月、池田将撮影

Xinchejian(新車間)が入居する Hero Center(上海創客中心) 2015年7月、池田将撮影

ものづくり教育にまつわる論争

「ほとんど(のものづくり教育に関わるスタートアップ)が行っているようなものづくりのためのものづくりは、特殊な変わった類のおもちゃで遊ぶこと以上の意味を持たないでしょう」と、中国の高校生を対象にサービス展開する教育系スタートアップ Bigger Lab(中国名:必果科技)の設立者 Rock Zou 氏は指摘する。

彼は、材料ありきの過剰なものづくりの授業に言及しているのだ。例えば、上海に拠点を置くロボットのオープンソースハードウェア企業 DFRobot は、対象レベルの異なる材料一式を40種類以上販売している。初心者向けには、簡単な電子回路とはんだ付け作業のみで周囲の光に反応するロボットが組み立てられる「4-Soldering Light Chaser Robot Kit」が提供されている。より高度な材料では、完成形について生徒に自由裁量の余地がある。例えば、マイクロコントローラのArduinoが絡む材料は、より完成形に制約がなく、生徒は自分だけの相互作用型ハードウェアを作ることができる。

DFRobotは自社の材料一式を中国全土の学校に送付し、ものづくりの授業を行う方法を教師に教えている。DFRobotのコミュニティマネージャーであるLuna Zhang氏によれば、これらの講習会には教師に「ものづくり精神」を植え付ける意図もあるという。

Zou 氏は、材料に何らかの教育的価値はあると譲歩しつつも、それは生徒の知的意欲を充分にかき立てはしないと考えている。「思考の限界を押し広げていません。『なぜ我々はものを作るのか』という疑問を持つか、それとも『我々は何を作るべきか』という疑問を持つか、違いはそこに生まれるのです」と彼は主張する。

Bigger Lab の授業は、デザイン思考や利用者調査、高速試作品製作などに重点的に取り組んでいる。

昨年7月の第1回の講座の際、Bigger Labの講座の受講生が上海のユースホステルに宿泊し、他の宿泊者に聞き取り調査を行った。その目的は、ホステル宿泊において億劫に感じている点を解消するための試作品を作ることだった。1ヶ月にわたって、受講生は3Dプリントやレーザーカットなどの技術的技能だけでなく、デザイン思考の様々な原則を学び、最終成果物にたどり着くために役立てた。月末に、受講生は自分たちの企画を Xinchejian で提案した。

あるグループは、宿泊者の手形をスキャンしポストカードに印刷する機械の試作品を製作した。そのグループの受講生の一人は、自身のブログの中で「私たちのグループは、ホテルでの記憶を留めておく方法の開発に取り組むことにしました」と綴っていた。人間テトリスのような挙動だが、人間ではなく様々な姿勢をしたアニメの登場人物を使って行う双方向型のゲームを作ったグループもあった。ホステルでの聞き取り調査に着想を得て、そのグループは宿泊者同士が知り合いになる手助けをしたいと考えたのだ。

彼らは本当に人に話しかけること、とりわけ赤の他人に話しかけることが好きではありませんでした。しかし問題は、もしそれをしなければ、役に立たないものを作って資源と時間を無駄にしてしまう危険があるということです(Zou 氏)

Xinchejian(新車間)が入居する Hero Center(上海創客中心) 2015年7月、池田将撮影

Xinchejian(新車間)が入居する Hero Center(上海創客中心) 2015年7月、池田将撮影

結果、結果、結果

「ものづくりを通じた学習」の原則への賛同を中国人の保護者に説得するのは難しいかもしれない。結局のところ、ものづくりを通じた学習には失敗に対するある種の勇気や耐性が必要となるのだ。

初めはもっと理想主義的に考えていました。私たちは受講生に失敗しても良いということを知ってもらいたかったのです。人生においては、いつかは失敗に直面せざるを得なくなるものです。でも、保護者はそのことを受け入れられないのです。(Han 氏)

Zou 氏同様、Han 氏も材料ありきで設計された教育課程には異議を唱える。Han 氏は前職では Senfu Robotics Education Institute(森孚機器人)でロボット製作の材料を売っていた。その経験が2015年にJoin-Inを設立することを後押ししたのである。「最終製品がいつでも教育的価値を持っているわけではないのです。材料を取り上げたらどうなるでしょう?生徒はそれでも作り方がわかるでしょうか?」

しかしながら、Join-In は保護者に歩み寄るために妥協を余儀なくされている。通常4回の講座で構成される各授業は、具体的な成果物をもって終わる。それは、Join-Inが組み合わせる材料に、創造の余地の中で受講生がいくつかのカスタマイズを加えて生まれる成果物である。

中国人の保護者は本当に結果のことしか頭にないのです。講座の終わりに、保護者は『終わらせられた?全部組み立てられた?』と子どもに聞くんですよ。(Han氏)

Join-In は、自社の教育課程の価値を保護者に納得してもらうためにロボット選手権の開催にも乗り出した。進学先の中学校を決める全国統一の小升初試験の面接の際に、生徒が選手権で授与された賞を提示することができるために、この選手権は保護者に対して訴求力を持つ。多くの教育企業が、注目を集めるためにこの需要に応えようと躍起になっている。

Bigger Lab は、中国人の高校生、特に留学の意欲を持っている生徒を対象としているので、保護者の圧力はそれほど影響力を持っていない。「大学出願の過程において、国内の賞はほとんど意味を持たないのです」と Zou 氏は説明する。

2016年には、Join-In、Bigger Labともに事業を拡大し資金調達を開始する予定だ。具体的には、Join-Inは地方都市の学校を繋ぐことを皮切りに、より多くの生徒を探すために実店舗型の支援センターを建設する予定である。Bigger Labは、より多くの教師の雇用に加えて、教室や生徒の作業場として利用される空間を作ることを予定している。

2016年1月16日13:05更新:Join-Inの中国語企業名「卓因青少年創意工場」を追加。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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