グッドパッチCEOが語る「組織が急成長するときに、起業家が気をつけるべきこと」

ゲストライター by ゲストライター on 2016.2.11

本稿は、東京に拠点を置くUIデザインエージェンシー「グッドパッチ」の代表取締役社長の土屋尚史氏の個人ブログ「Like a Silicon Valley」より、許可を得て編集・加筆の上で転載しています。原文はこちら、『2015年を振り返る』。

Goodpachの代表取締役社長の土屋尚史氏、増床したばかりのオフィスの新フロアにて。 Credit: Yuki Sato / The Bridge

Goodpatchの代表取締役社長の土屋尚史氏、増床したばかりのオフィスの新フロアにて。
Credit: Yuki Sato / The Bridge

グッドパッチとしては去年は念願の海外オフィスとしてベルリンにオフィスを出す事ができたし、Prottとアットホームとの共同事業のTALKIEがグッドデザイン賞をダブル受賞し、MERYやガールズちゃんねるはクライアントのサービスGrowthに大きく貢献した代表的な事例となった。自社サービスであるProttもユーザー数は5万人を越えて、多くの企業に導入された。12月にはFiNCとの資本業務提携も発表し、話題に事欠かない1年だった。

では、自分としては昨年の1年どうだったかと言われると、とても苦しい1年だったという言葉が真っ先に出てくる。Kaizenのすどけんさんの振り返りブログを見ると同じような感想で驚いた。課題もとても似ていた。

この1年色んな所で会う人たちに「グッドパッチさん勢いありますねー」「うまくいってますねー」とか言われたが、その度に全くそんな事ないと思っていた。そりゃ社長をやっている以上、いくら悪い状態でも周りに弱みは見せれないし、普通かつ謙虚に振る舞わないといけない。もちろん、起業して4年ちょっと経つしこれまでも問題は沢山あったし、辛い事も沢山あった。だけど昨年1年、特に後半はその中でも苦しい期間だった。

組織化に苦しんだ1年

グッドパッチは2015年の頭に社員の数は50人を越えたのだが、ずっと組織がミドルマネジメントがいないワントップフラット体制のままだった。30人を越えたあたりから組織化をしないといけないといけないと思いながらも、徐々にやっていこうと言いながら人ばかりが増えていった。その結果、50人を越えるまで僕が営業、新規事業、採用、広報、財務、資金調達、給与振り込みまでやってしまっている状態になった。去年の4月から本腰を入れて組織を作っていこうと組織デザイン室を作ったがなかなか前に進まない。問題はいくつかあったのだが、まず僕がこれまで組織とは何かをずっと知らずにやってきてしまったことによって、全くイメージがわかず最適な組織の形が見えずに時間ばかり過ぎていった。

そもそも、僕は良かれと思って社長と社員の間に誰も入らないワントップフラットな組織の形にしていた。ダイレクトに社長のメッセージを社員に伝えたいし、社員も社長に直接言えたほうが良い、そう思っていた。しかし、途中から人数が増えすぎて社員1人1人とのコミュニケーションを取る時間は極端に減り、良かれと思ってやっていたワントップフラットはお互いを不幸にする形になってしまっていた。

もっと早くに外部の協力者を入れるべきだったと少し後悔している。知識がないことに加え、事業を成長させるために採用スピードを落とすわけにもいかず、色んな事が後手にまわりどんどんスタックしていき、社員とのコミュニケーションもどんどん取れなくなり、不満の声がどんどん大きくなっていっているのは気付いていた。7月にリンクアンドモチベーションの近藤さんに出会って、相談に乗ってもらい仕事をお願いしてから、組織周りの事はどんどん進んでいったのだが、時既に遅しだった。

8月から退職者がどんどん出始め、後半の5ヶ月は僕にとっても試練の時期となった。しかも、辞めたいと言ってくるのはみんな3年前の秋葉原時代に入ったメンバーばかり。一緒にグッドパッチを成長させてきたメンバーがみんな自分の元を去っていく。しかも、なぜか時期が重なり、酷い時は4日連続で僕の元に退職の意を伝えにスタッフがやってきた。精神的にはタフな方の自分もさすがに堪えた。理由はステップアップの転職や他社からの引き抜き、独立など様々だったが、経営側がメンバーのケアをできてないのは明らかだった。残ったこの1年で入ったメンバー達の不安もどんどん募っていった。

そんな混乱期の中で、なんとか10月からミドルマネジメントをいれた新組織体制をスタートし、12月からは今まで取締役は僕1人だったのだが新取締役を4名とCTO執行役員を任命し、この数ヶ月で急激に組織ができていってる。今のところ、この組織化はとても良い方向に行っていると感じている。これからももちろん課題は出てくると思うが都度修正しながら良い組織を作って行きたい。

Goodpatchの増床した新フロア Credit: Goodpatch

Goodpatchの増床した新フロア
Credit: Goodpatch

起業家から経営者への意識転換

自分にとって、2015年は起業家から経営者への意識変革を求められた1年だった。僕にとって理想のリーダーとは誰よりも前線に立ち、リスクを取り先頭をきって道を切り開いていく、背中で見せるタイプのリーダーが理想だった。起業家はそういうタイプが多いかもしれない。世の中に新しい価値を作り上げる人、とにかく0→1をやりたいタイプ。だけど、0→1が立ち上がって、組織が成長してくるとトップは考え方を変えないといけないフェーズが来る。

会社を継続的に成長する仕組みを作り、会社の進むべき方向性指し示し、戦略を作り、意思決定をする。それが経営者の仕事。アメリカだと良くファウンダーがサービスを立ち上げた後にVCがプロ経営者を外から持ってくるケースもあるが、日本の場合はプロ経営者自体の数も少ないし、僕はファウンダーが一番強い思いを持っているはずなのでその思いを持っている人間が経営をし続けるのが良いと思っているので、起業家がどこかで経営者に考え方を変えて会社を経営していくのが一番良いと思っている。

僕にとって去年がその意識変革の年だったんだと思う。本来であれば30人を越えた辺りで気付かないといけなかったのだが、結局50人を越えるまで先頭切って自分で全部やってしまっていた。やっと2015年の後半に気付けてよかった。

苦しみを乗り越えた先の光が見えた12月

後半は苦しかったが、その期間があったお陰で会社の事、事業の事、仲間の事をより深く考える事ができ、自分がやるべきことがより明確になった。そして、後半に任命した新役員陣とリーダー陣はみんなこの1年の間にグッドパッチにジョインしたメンバーだが非常に優秀かつグッドパッチのビジョンとミッションに深く共感し、責任感を持って業務に臨んでくれている。特に後半の混乱期を一緒に乗り越えたお陰で役員リーダー陣はより結束力が強くなった。苦しかったがグッドパッチが成長するためには必要な期間だったのだと思う。

そして、残ったメンバー達はモチベーションも高く、前を向き、グッドパッチをもっと良くしていこうとする姿勢を感じれる。僕は現時点でのメンバーがグッドパッチ過去最強のメンバーだと思っている。チームとしてとても強くなっていると感じる。

グッドパッチに集まってくるメンバー達の質は年々上がっていってる。ただ優秀だとか大企業で働いていたとかではない、みんなデザインが大好きでデザインの力を深く信じ、グッドパッチのやっている事、成そうとしてる事に共感して、それを一緒に実現したいとグッドパッチに入社してきている。

今年初めにはまた一気に14人の仲間が増えた。春先には80人を越える組織になる。

高い理想を抱いてグッドパッチの門を叩いて入ってくる仲間をがっかりさせないくらい熱い会社にしたい。

2015年グッドパッチ忘年会にて Credit: Goodpatch

2015年グッドパッチ忘年会にて
Credit: Goodpatch

関連記事:UIデザインエージェンシーのグッドパッチがベルリンに初の海外拠点を開設、海外展開を本格化

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