これからの日本の未上場の資金調達環境をどうみるか

240105_101666379922895_4508047_o編集部注:本稿はベンチャーユナイテッドのチーフベンチャーキャピタリスト、 丸山聡氏が運営するブログ「No Guts, No Growth.」からの転載記事。国内スタートアップの資金調達環境について考察がなされていたので、同氏に許可を頂きこちらに掲載させてもらった。

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Image Credit :Electric Peak / yellowstonenps on Flickr

年明け以来、世界的に株式市場がざわざわしていて、米国における未上場企業の資金調達状況においてはベンチャー投資、上場IT企業にシフトかとか、いわゆるユニコーンに対しての冷たい風が吹きはじめていて、私も面談などでこれから先の資金調達動向ってどうなるんですか?っていうことをいわれるので、私がどうみているかについてざっと書いておこうかと思います。

2015年は日本においてはファンド組成規模は大きかった

まず1つ目の事実として、インキュベイトファンドの村田さんが「2015年国内VC環境レポート」をまとめていましたが、これの3ページ目のところにある、新規のファンド組成額が2013年と2015年に2,000億円を超えているという点があります。

2015年のその内訳としては、同資料の4ページ目に独立系が715億円と金額ベースで最大になっている点も見逃せません。

2015年の日本における投資金額は減少している

2つ目の事実として、2013年と2015年に2,000億円超のファンド組成がなされているにもかかわらず、同資料の9ページには2015年下期においては投資金額は減少しています。(集計中とはありますが)

この2つの事実から言えることは、独立系を中心としてファンド組成はされるなかで、投資余力はまだあるということなのではないか。ということです。

ただし、前述したWSJの記事の米国の事例に近しい感じで、2014年後半くらいから日本国内においてもベンチャー投資のなかに占める割合では、個人やファンドではない事業会社などの投資主体が増えてきている印象があります。

統計データはないのであくまでも印象です。

過去のリーマンショック時などを振り返ると、こうした投資主体は株式市場が低迷したり、景気が減速したときには投資意欲が減退する傾向にあったこともあり、今後の株式市場と景気動向によっては、変化が起こってくる投資主体ではあるのではないかと思います。

また、金融系なども本体の業績如何ではリスクアセットの圧縮が求められる可能性もあるので、VC投資についても手控えることも想定できます。まー、これはどんな状況下でもそうなんですが。

ただ、今回でいえば、上述したように2015年に700億円超の独立系VCのファンド組成もあり、事業会社系VCのファンド組成などもあったことを踏まえれば、超悲観的になる必要はないと思います。

ただし、いくつかの留意点はあるかなと。

これからの日本国内における資金調達環境の留意点

まず1つ目には、企業価値については2015年よりかはややシビアになっていくだろうという点です。

これは、まず株式市場の低迷によってIPO時の企業価値が低くなることなどによって、投資採算を考えると投資時の企業価値をある程度シビアに見ておく必要があります。また、M&AでのEXITについても同様に買い手側の企業価値算定はシビアになるので、そこでの期待するリターンも下がるという点があります。

投資主体が減っていくなかでは、いくつかの投資主体と条件を交渉するということが難しくなることが出てくるというところにあるかと思います。

また、前回の調達から事業が大きく成長していないケースなどでは、調達の難易度は高まる可能性もあり、前回の調達した企業価値次第ではダウンラウンドなども起こる可能性はあるのではないかと思います。

2つ目には、資金調達ができる会社と資金調達できない会社にわかれていくだろうという点ですね。

資金調達できる会社については、まず大前提として、ユーザーや顧客に支持されるいいサービスやいいプロダクトがあるという点の上である程度のステージであれば、トップラインがしっかりと伸びていて、調達資金を使うことで収益面でも大きく成長できるだけの戦略がシャープになっていることなどが求められてくるのかなと思います。

まだスタートしたての会社であれば、ユーザーやそのアクションがしっかりと伸びていて、IPOに向けたマネタイズのプランなどを想定しておいたほうがいいし、どういう戦略でどう伸ばしていくのかがしっかりと語れることが求められていくのではないかと思います。

いずれにしても、きちんとスタートアップ(“新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長”)できていてそこからさらにどう伸ばしていけるのかっていうところのアイデアが尽きない会社にとってみれば、VCの投資能力もまだあるので、企業価値について著しく強気に出なければ、資金調達については企それほど悲観的になる必要はないのではないかと思います。

むしろ、資金調達がどうなるのか不安だという場合には、さまざまなテクニックに走るのではなく、とにかく自分たちのサービスやプロダクトがユーザーや顧客に支持されているように磨きこむとともに、スタートアップできているのか?を常に問いかけていき非連続な成長を貪欲に目指していくことが大事なんじゃないかと思います。

正直、これからの先の株式市場と景気の動向によって未上場の資金調達環境がどうなるのかはわかりません。

ただ、株式市場は景気を先回りするということがあるとするのであれば、景気減速する可能性はあり、未上場への資金供給はいまよりかは減ることも想定されるかなとは思います。

そうしたときに不安になったり浮き足立つのではなく、とにかくサービスやプロダクトを磨き、急成長を追い求めていくことが重要だと思いますし、そもそも起業して外部から資金調達をすることの意味っていうのはそういうことだし、そこが改めて問われることになっていくのではないかなと思っています。

【丸山氏のブログはこちら】

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