「若い人たちに新しい可能性を」ーー田村淳さん支援者としての顔、出資先にBASEやキメラも

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DEF ANNIVERSARY(デフ・アニバーサリー)代表、松村佳依さん

「仕事で忙殺されて自分の時間を犠牲にしている人って多いと思うんです。だから記念日ぐらいは周りの人たちを大事にしたいって思って」。

こう語るのは松村佳依さん。若干25歳ながら、都内でウェディングを中心に人々の記念日をプロデュースする「DEF ANNIVERSARY(デフ・アニバーサリー)」の代表を務める女性社長だ。

新卒で人材大手に入社、3年間ほど営業などの経験を積んだ彼女が起業を志したきっかけは、親族の病気だったという。

「大学時代、オーストラリアでかなりサバイバルな自給自足の生活を送ったことがあるんです。電気も水道も電波もない場所だったんですが、そこで出会った言葉も通じない人たちとのつながりのある時間がとても幸せだったんです。けど、就職して、祖母が病気になった際、仕事が理由で駆けつけることもできませんでした。これって正しいのかなって」(松村さん)。

DEF ANNIVERSARYはそういうつながりを大切にしたい人たちのために記念日のプロデュースを展開している。例えば「結婚式を贈る」というコンセプトのWedding Forwardは、様々な事情で結婚式を挙げられなかった夫婦に、周りの家族や友人から結婚式をプレゼントできる、そんなサービスになっている。

そしてこのサービスを全面的にプロデュースするのが田村淳さん。そう、お茶の間のテレビの向こうで活躍しているあの人物だ。

起業家を支援する「投資家」の顔も

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田村淳さん。忙しい中快く取材に答えてくれました。

「最初は只々、会社を飛び出しただけの無鉄砲な人なのかなって。でも話をしてみると、緻密に計算しているし、人の感情をよく理解していて珍しいなって。これは面白いかもと」(田村さん)。

一緒に事業を立ち上げる知人を介して紹介を受けた田村さんは、社長になりたいという彼女の志願を受けて「やってみなはれ」的に即決したそうだ。会社の創業は2014年12月24日。松村さんの参加は設立後だが、このような経緯で松村さんがこのプロジェクトの実質的な代表を務めることとなった。

「社長になりたい!っていう人はバカかよほどしっかりと考えてる人かどちらかだと思うんですよね。松村さんはものすごく自分で責任を負いたいという意向がすごくあったので、ちゃんと自分で考えて動きたいんだろうなと思って(決めました)」(田村さん)。

実は田村さん、芸能活動と並行してこのように若手の起業家を支援する活動も実施しており、この支援先にはインスタントコマースで成長著しいBASEや、家入一真氏の新プロジェクト「キメラ」などが含まれているという。

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支援先のBASEでの一コマ/facebookより

「実は何社か(BASEやキメラ、Progate)に投資をさせて頂いてまして、少ない額なんですが積極的に自分でできる範囲の投資はやっていきたいと思っています。もちろん(投資も含めて)成功して欲しい、儲けたいという気持ちもありますが、それよりもこのお金で若い人たちに新しいことを考えてよ、っていうのが楽しみだし、それが将来的に社会のためになるのであればいいなと」(田村さん)。

因みに田村さんの投資活動をサポートしているのがEast Venturesの松山太河氏だ。田村さんも太河氏を通じてこのスタートアップ人脈と交流を深めることになり、前述のような起業家支援に繋がっていった、というわけだ。

「太河さんや家入さん、鶴岡さんと話をしているのが楽しいですね。ITの人たちってもっとドライなのかと思ってたんですけど違うんですよね。若い起業家の方々もコミュニケーション能力が高くて、礼節を重んじる。いずれはそういう方々と一緒にやりたいなと思ってますよ」(田村さん)。

出資を含めた支援を受けているBASE代表取締役、鶴岡裕太氏は田村さんの支援をこんな風に語る。

「創業時に、家入さんや太河さんの紹介で淳さんにお会いする機会を頂きました。西麻布のお鮨屋さんで凄く緊張しながら事業の説明させて頂いたのを今でも鮮明に覚えています。そして創業直後のラウンドで投資して頂きました。僕らスタートアップにとっては、どんなに最高のプロダクトを作ってもやっぱりユーザーの皆様に知って頂いて使って頂かないと意味がないと思うのですが、その点で創業期からBASEをヘビーユーズして下さり感謝してもしきれないくらい凄くお世話になりました。

最近も定期的にご連絡を取らせて頂いて、淳さんならではの視点で様々な意見を頂けるので凄く助かっています。プロダクトの性質にもよるとは思うのですが、当然僕らが持ってない多くの事を持たれていると思うので、今後も淳さんの様な事例が多く出ると良いなと思っています」(鶴岡氏)。

米国で認知されるセレブ投資トレンド

ところでこういったいわゆるタレント人材の投資は、北米のハリウッドを中心とするセレブ・スターたちが手がける「セレブ投資」と呼ばれるトレンドにもなっている。アシュトン・カッチャーやジェシカ・アルバのような役者たちの投資や起業活動もしばしば話題になるし、レディー・ガガの元マネージャー、トロイ・カーター氏に至っては起業家支援プログラムも立ち上げているほどだ。

<参考記事>

一方、個人的な印象ではあるものの、国内の芸能界関連で未公開株への投資が話題になるのは詐欺や一発儲けましたといったゴシップや事件のような話題の方が目立つ傾向にあるように思う。

そういう意味でも松山氏のようなベテランが間に入って手引きをするというのは理想的なスキームではないだろうか。もし、今後、田村さんのような芸能業界の方々がスタートアップ支援に入ってくる場合は、どこがその役割をしているか重要視されるように思う。

インターネットの力でタレントの活躍の場を広げる

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芸能活動を通じ培った経験を元にアニバーサリー・プロデュースの事業を手がけ、若手起業家の支援では投資家としての顔も持つ田村さん。

今後はこれらをうまく融合させ、自身が成長を果たした芸能業界、タレントやクリエイターがもっと活躍できる場所を作りたいと語る。

「後輩にフライパンを脇で曲げるっていう芸をもった人がいて、結婚式で披露してたんですが、全くウケなかったんです。それである日、そのフライパンに離婚とか不倫とか悪いことを書いた紙を入れて炒めるフリしてから「厄災を封じ込める」って曲げればいいんじゃないってアドバイスしたんです。で、それやった結果、その後輩のところに結婚式の出演依頼、100倍ぐらいくるようになって(笑」(田村さん)。

田村さんの話では、やはり芸を持った人たちでもテレビなどで活躍できるのはほんの一握りなのだそうだ。けど、彼らは司会もできるし、芸もできる。こういったタレントたちと、記念日を大切にしたいと思う人たちをマッチングする。

田村さん自身はインターネットの知識も技術もないと語るが、彼が出資・支援を通じて繋がったスタートアップたちは業界の中でもキラリと光るチームばかりだ。

こうして投資や支援が新しいビジネスを生み出すきっかけとなれば、セレブ投資と言われる活動は決して単なる儲け話だけではなく、こういうシナジーを生み出す活動としてまた違った認知が広がるのではないだろうか。

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プレゼンテーターとして田村さんも出演する「贈る結婚式」の一コマ/YouTube動画より

「今、SHOWROOMっていうライブ配信のサービスと連携して地方にいるおばあちゃんでも孫の結婚式に参加できるサービスできないかって準備しているんです。そもそも冠婚葬祭って代々伝わる方法でいいと思っちゃってるんだけど、別に1000年前と同じじゃなくてもいいじゃないですか。

葬式だってそうなんです。人って不完全だからその不完全なところを見せることで、泣きがあって悲しいわけです。

だから自分の葬式では自分のアダルトビデオのコレクションを陳列してくれってもうひとりのパートナーには伝えてあります。不謹慎だ!っていう大人もいるかもしれないけど、命日に思い出してくれるフックになってくれるかもしれないじゃないですか。なんでアダルトビデオ陳列してあったんだろうって。

まあ、俺は死んでるから恥部を晒されても分かんないですしね(笑」。

話は尽きなかったが今回はこの辺りに。今後も、田村さんのようなタレントのスタートアップ支援を追いかけたいと思う。

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