開始2年半で240億円の売上改善ーーKaizenが800万ドル(9.6億円)を調達、UIから経営改善のプラットフォームへ

SHARE:

kaizen01

ウェブサイトのUI改善を実現するプラットフォーム「kaizen Platform」を提供するKaizen Platform, Inc.(以下、Kaizen)は2月1日、シリーズBラウンドで第三者割当てによる増資を実施したと発表した。

引受先となったのはYJ キャピタル、NTTドコモ・ベンチャーズ、セゾン・ベンチャーズ、コロプラの4社と、既存株主のEight Roads Ventures Japan(旧Fidelity Growth Partners Japan)、グリーベンチャーズ、GMO VenturePartnersの3社。

調達した資金は800万ドル(120円換算で9億6000万円)で、割当株式の比率や払込日などの詳細は非公開。同社は創業3年で累計1780万ドルを調達している。調達した資金は経営基盤の強化、プロダクト開発の推進、および海外展開に使われることになる。

また、同社は2013年8月のサービス提供開始から約2年半で積み上げたエンタープライズ版の導入社数が170社となり、同プロダクトが改善した売上規模は2億ドル(約240億円)に上ることも公表している。

UIから経営改善のプラットフォームへ

「国内の事業をより拡大させるということで、ネットメディア、モバイル、ゲーム、金融の分野に知見のある事業会社を中心にお声がけさせてもらいました。コロプラさん以外は私たちの顧客でもあります」。

こう答えるのはKaizenの共同創業者兼CEOの須藤憲司氏。グロースハッカーとUI改善ツールという組み合わせで企業のウェブサイトを改善し、企業にもたらした売上は前述の通り240億円、関わったグロースハッカーの数は2900名に上るという。

kaizen03

須藤氏は事業を進める中、開始当時「PlanBCD」という名称だったKaizen Platformが徐々に単なるA/Bテストサービスから企業の事業、経営改善に範囲を広げている状況があると語る。

「PDCAを回す際、社内リソースだけではまわらないという課題があるのです。これまで私たちはグロースハッカーをクラウドソーシングすることでそれを解決しようとしてきましたが、実際は代理店やお客様のマーケティング部門、デザイナーなど、コラボレーションの組み合わせは多岐に渡るんですよね」。

通常はこういった事業改善はコンサルティング会社が請け負うことが多い。しかし、ユーザーニーズが多様化する現代、単一のアイデアのみで改善を実現することは成功確率を狭めることにつながる。

須藤氏の考え方は、オンラインを中心とした売上改善にはセオリーがあり、それに最適なチームを組むことでその成功確率を飛躍的に高められるというものになる。そのために必要なのが必勝パターンの情報とコラボレートする人やチームの2つであり、これを繋ぐのがKaizen Platformになるというのだ。

kaizen02

「KPIを可視化し、課題設定をしっかりして成果を共有すれば、事業改善の確率は高まります。この時に必要なのがリソースの壁を取り払うことなんです。いわば経営のオープンソース化であり、社内だけでなく社外も、また法人だけでなく個人も含めて自由にコラボレートする環境が理想なんです。私たちは新しい時代の経営基盤を作っていると考えてますよ」。

では、このようなコンセプトを実現するため、Kaizenはどのような打ち手を持つのか。ポイントになるのがより幅広い情報開示と個人の見える化だ。

Kaizenにはこれまで240億円規模の売上を改善、つまり積み上げた施策の情報が蓄積されている。ある時はUIの改善、ある時はポイントバックやキャッシュバック、といった具合だ。例えばある事業者がサイトでの売上を改善したいとKaizenを利用した場合、許諾などの条件によって情報が開示されており、どのような方向性で改善すればよいか、ある程度の指針は立てられるようになるという。

kaizen04

個人の能力の見える化も重要なポイントだ。Kaizenは元々グロースハッカーのクラウドソーシングがアイデアのポイントだった。須藤氏は彼らの能力を数値化し、しっかりと見える化することで、企業がこの人に依頼をしたいと思わせる仕組みづくりを推進しているという。

「彼らはビジネスを改善するという価値を売っているんです。なので、人気の方の値段はどんどん上がるようになっています。ある企業では一回のテストで1億円を改善したような事例があります。こういった案件に貢献してくれた人を可視化することでグロースハッカー側も、より自分の改善案件の情報を積極的に出してくれるようになるわけです」。

Kaizenの提唱する経営基盤のオープンソース化は、加速度的に進む経営環境の多様化に対応する新しい考え方になるかもしれない。このコラボレーションプラットフォームが単なるUI改善からどこまで進化するのか、更に今後の展開に興味が持たれる。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する