遠隔治療で医療のユーザー体験を向上する「ポートメディカル」に7年間の臨床経験を持つ伊藤恭太郎氏が参画

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テクノロジーの活用への期待が高まる医療やヘルスケア分野。2015年11月半ばにα版を開始した国内初の遠隔診療サービス「ポートメディカル」は、慢性疾患を中心に、医師による遠隔治療を提供するプラットフォームです。約200人の診療実績が集まったα版運用期間を経て、現在は機能拡張やガバナンス、また医療関係者の社内体制を準備し、4月の正式オープンに向けて動いています。

運営会社であるポートの執行役員に就任したのが、最近までドリームインキュベーターのビジネスプロデューサーを勤めていた伊藤恭太郎氏です。伊藤氏は、東北大学医学部を卒業後、東京大学医学部付属病院にて研修を経て、聖路加国際病院にて救急科や集中治療科における実務上の責任者となるチーフレジデントを務める等、医師として約7年間の臨床経験を有しています。

今後は、ポートメディカルの開発担当として、ビジネスと医療の両側面から事業をサポートしていきます。

手段はLINEが一番人気、医師は隙間時間を活用

ポートメディカルの利用者は若い世代を想定していましたが、実際には35歳以上、とりわけ40代と50代の利用者が多く見られました。まさにポートメディカルが治療対象とする慢性疾患を持つ人たちで、馴染みのない形であるにも関わらず、もっと活用したいという声が聞かれました。

ポートメディカルの遠隔治療は、LINE、Facebookメッセージ、Skypeなど複数のツールを活用することができます。その時々に応じて、メッセージしたりテレビ電話したりと組み合わせて使うことで利便性を高める狙いです。でも、実際にα版を運用してみたところ、最も頻繁に利用されたのが、LINEでした。

「テレビ電話の場合、事前予約が必要なこともあり、患者側も医師側も負担が大きいことが課題になります。LINEなどより気軽な方法での診断を望む方が多かったのが現状です。そのため、独自でコミュニケーションアプリの開発をスタートしました。

一方で、服薬の指導や注意事項など直接電話等で伝えたほうが安心な内容もあるため、上手く組み合わせた形を模索して、より良いユーザー体験を提供していきたいです」(春日氏)

厳選な審査を経てポートメディカルに参加している医師は、普段は診察所で患者さんを診ています。メッセージを使った診断なら、患者さんを診察する合間合間などちょっとした隙間時間などに行うことができるため、兼業することでより多くの患者さんを診ることが可能になります。

医療のユーザーエクスペリエンス

左から、COOの丸山氏、CEOの春日氏、執行役員で医師の伊藤氏、CTOの浦田氏
左から、COOの丸山氏、CEOの春日氏、執行役員で医師の伊藤氏、CTOの浦田氏

2015年8月、厚生労働省によって遠隔医療の法律が規制緩和されました。これを機に、今後もポートメディカルのような遠隔治療を含むテクノロジーを活用したさまざまなソリューションの登場が期待されます。これからは、薬の質や技術の質といった特定部分の評価に止まらず、「医療の包括的なユーザーエクスペリエンス」に目が向けられるようになってくると話す伊藤氏。

患者が診察所に出向いて来ないことには医師は診察できないため、常に「待ち」の状態にあると言えます。金銭的、地理的、心理的、時間的、さまざまな理由で通院できない患者は、最初から診察対象から除外されてしまっています。

例えば、高血圧の潜在的な患者の数は国内で4,000万人に上ると言います。ところが、そのうち75%が通院しておらず、これもまた医療へのアクセスが決して容易でないことが起因しています。

考えてみれば、診察所の営業時間は一般的な職場の就労時間と完全に被っており、その時々で待ち時間も読めないため、半休をとるくらいの勢いがないと医師に診てもらうことかできません。また、地方ではそもそも医師がいない場所も少なくなく、高齢者が2時間もバスに揺られて診察所に通うような不便も。

ポートメディカルの挑戦は、いかに医療のアクセスを簡易化できるかです。

「今後、インターネットで医療のあり方を大きく変えていけると考えています。ウェアラブルデバイスなどの登場で、判断材料にできるデータの量も増えていきます。それだけ判断の質が上がっていくはず。一度かかると長く付き合う生活習慣病などは、生活習慣の管理が肝心です。ポートメディカルで、よりきめこまかなコミュニケーションを実現していきます」(伊藤氏)

47都道府県の診察所を開拓

遠隔治療は、利用者に対して利便性を提供するだけでなく、医師の時間がより効率的かつ有意義に活用されることにも繋がります。ポートメディカルが診察対象とするのは、採血データや血圧計データ、検査キットなど、客観的なデータを元に判断できるものにまずは限定してスタートする予定。

こうすることで、直接対面せずとも症状を判定していくことも可能になります。その結果、医師が対面で行う診察は、より難易度の高い処方に優先されていきます。

ポートメディカルでは、大手の臨床検査会社、保険会社、医療機メーカー、大学の研究所などと提携の話もすでに実現間近に迫っているとのこと。保険会社とのやり取りで、海外に行っている、または旅行中の日本人に遠隔治療のニーズがあることがわかっています。病院に行かずとも、また日本にいなくても、主治医に遠隔治療をしてもらうことができる時代が到来するのかもしれません。

ポートメディカルが目指すのは、一人でも多くの医師に登録してもらうことです。47都道府県の診察所を開拓することで、遠隔治療においてもなるべく近隣の医師とマッチングすることが可能になります。そうなれば、遠隔でもアドバイスを受けて、必要に応じて診察所に出向いて治療してもらうといったオンラインとオフラインを上手く組み合わせた新しい医療の形が実現するはず。

国内で先陣を切る遠隔治療サービスとして、ポートメディカルが私たちの生活をどう変えていってくれるのか、期待して見守りたいと思います。

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