メディアはユーザファーストな姿勢が必要–フジテレビとBuzzFeedが見据えるこれからのコンテンツづくり #tbfes

THE BRIDGE編集部 by THE BRIDGE編集部 on 2016.2.25

「Tech and Life」をテーマに開催された「THE BRIDGE Fes」。イベント当日の夜、朝日新聞メディアラボ渋谷分室ではナイトクロール・セッションと題して、Fesチケット購入者向けにトークイベントとミートアップを開催した。Fesの様子はこちらで一覧できる。

ナイトクロール・セッションのトークテーマは「メディアはどこへ向かうかーーニューメディアとレガシーメディアの両面から見つめる未来」について。

ゲストは、BuzzFeed Japan 創刊編集長 古田 大輔氏と、株式会社フジテレビジョン コンテンツ事業局長 の山口 真氏 。モデレーターはTHE BRIDGE 編集記者のモリジュンヤが務めた。

まずは、ゲストの2人によるライトニングトークからナイトクロールセッションはスタートした。

ネット上で放送後7日間は無料番組配信、テレビ局と違法動画の戦い

株式会社フジテレビジョン コンテンツ事業局長の山口 真氏

株式会社フジテレビジョン コンテンツ事業局長の山口 真氏

フジテレビ入社当初は、警視庁・警察庁・財務省・自民党本部・総理官邸などの報道局で、記者 を務めていた山口氏。その後、コンテンツ事業局に異動して、インターネット上での動画配信を担当することになった。

山口氏:リーチの拡大”や“違法動画対策”などを考え、番組放送が終わってから7日間は無料で番組を見ることができる「+7(プラスセブン)」という動画配信サービスを始めました。すると、日に日にスマートフォンからの視聴率が増えるようになりました。

現在では、在京民放5社が「+7」のような取り組みを行っており、全てのテレビ局の放送番組をまとめてチェックすることのできる「TVer(ティーバー)」という共同サービスを開始しました。

TVerにはいくつかの目的がありますが、各テレビ局が共通して問題意識を持っているのは、違法の動画投稿で放送後のテレビ番組を見ている人の割合がとても高く、マネタイズできずに困っているということでした。

なので、各テレビ局が正規商品をネットに流すことで、各社の動画配信サービスに人が流れるようにしようと話が進んだのです。

現在、「FOD(フジテレビオンデマンド)」という動画配信サービスを運営しており、この10年間で会員数は80万人を超え、MAUは250万人以上となり、有料課金や無料広告で黒字化している。

スポーツのライブ配信、FODオリジナルコンテンツの配信、雑誌・コミックの配信、ホウドウキョクで24時間のニュース配信、Netflixとの共同事業など、ポートフォリオのようにサイト上にさまざまなコンテンツを配置し、今後もインターネット上で幅広い切り口のコンテンツ配信を行う予定だという。

1投稿が数億ビュー超え、ユーザーが受け入れるコンテンツを追求する

BuzzFeed Japan 創刊編集長 古田 大輔氏

BuzzFeed Japan 創刊編集長 古田 大輔氏

BuzzFeedは2006年にニューヨークで生まれた。11カ国に支社があり、世界中に展開しているメディアの一つだ。編集部は各国の編集担当者とインターネットで連絡を取り合いながら連携し、配信を行っている。

古田氏はBuzzFeedに携わる前、朝日新聞社に13年間勤めていた。社会部で事件・事故・災害などの記者を担当し、その後は国際報道部でタイ・シンガポールの海外特派員だった。

インターネットの発展とともに新聞紙の購読者は減っていく。その現状への危機感から、シンガポールから帰国後、朝日新聞デジタル部門への異動を希望。そこで動画配信や、SNSを使ったインタラクティブなコンテンツの配信などに2年間携った。BuzzFeedの人たちに出会ったのは、その活動の中でだったという。

古田氏:BuzzFeedは「世の中の人たちに受け入れられるコンテンツとは何か」を真摯に追求していました。インターネットの一番素晴らしいところは、“動画が使えること”や“インタラクティブな表現ができること”ではありません。

自分たちの出しているコンテンツが、どのような人たちに読まれているのか検証するためのデータをとれることが何よりも素晴らしいことです。BuzzFeedは、ただデータを取るだけではなく、その分析結果をより良いコンテンツ作成にどう活かすのか突き詰めていました。その姿勢や取り組みに魅力を感じた事が、転職を決意した理由の一つです。

BuzzFeed Japanは、「ニュース」「バズ」という2種類の部門に分かれて情報を配信している。ビジュアルを重視した記事が特徴だ。BuzzFeedが世界全体で運用しているFacebookページは80以上。1つの投稿で1億ビュー、何百万シェアという数字を叩き出す。

コンテンツは内製で、ウェブ業界で主流の外部ライターを大量に抱えるスタイルは取らない。米ビジネス誌『FastCompany』が世界で1番革新的な企業に贈る「Most Innovative Companies」というランキングで2016年版にBuzzFeedは1位を受賞している。

2人のライトニングトークが終わった後は、トークセッションへと移った。

読者は今どこにいる?受け入れられるコンテンツの作り方と届け方

モリ:インターネットでニュースコンテンツを配信することに対して、今後、どのように取り組んでいきたいと考えていますか。

山口氏:テレビによる報道は、今でも大きな存在価値があると思っていますが、インターネットの世界にもっと歩み寄らなければと強く思っています。

古田氏のお話にもヒントがありました。大事なのは作り手の思いよりも、世の中の人に受け入れられるコンテンツを作るということです。映像がある、豪華な俳優が揃っているだけでは、今後テレビ局は勝ちぬけません。

1980年頃のニュースショー全盛期だったころから、作り手側が固定した考えで放送を行うようになりました。今や、ニュースショーが放送される時間にテレビの前に集まる人は減っていると感じます。

普通は、自身が得たいタイミングで、ニュースアプリなどを使って必要な情報を入手します。ユーザーのニーズを分析して、求められている情報を配信することが重要なんです。そこでテレビならではのコンテンツを作り直せば、生き残れる余地はあると思っています。

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古田氏:新聞紙の読者層に、20〜30代はものすごく少ないです。インターネットのユーザーは増える一方。ネットで情報配信することは、今の時代における大前提ではないでしょうか。

でも、だからといって新聞がダメだという話ではないんですよ。例えば、朝日新聞。新聞紙だけでなく月間億単位のビューがあります。読者のいる場所にコンテンツを届けることが大事だと思います。

そして、それこそがBuzzFeedの中心戦略の一つです。自分たちの情報を、Twitter・Facebook・Instagram・Snapchatに配信する。Facebookページも80以上あるので、読者層に合わせた情報を各プラットフォームごとに配信しています。

読者層やプラットフォームに合わせて情報を配信することに関しては、大きな戦略の話だけでなく、細かいこだわりがあります。

BuzzFeed Japanを立ち上げてまだ1ヶ月ほど(2016年2月19日現在)ですが、ネットメディア出身のライターの表現力には、毎日驚いています。書き方が新聞記者と比べて大きく違う。

例えば改行の使い方ですと、ネットメディア出身者は、新聞記者と比べて改行の使い方がうまいんです。デザイン的にどこに鉤括弧を使うべきか、どのように改行を使うと読みやすいか、読者のことを考えた記事が書けるんです。

紙なら改行がなくて良いものも、ネットで同じことをやられると辛いんですよね。

適した表現を選択する。人の心を動かす動画コンテンツとは

モリ:インターネットメディア出身のライターさんは、視覚的にどう伝わるかを重視して、改行の仕方等を変えているというお話でしたが、インターネットメディアにおけるビジュアルの話ですと、グラフィックや映像などテキスト以外のコンテンツの使い方も重要だと思います。最近では、動画が注目されていますが、テキストじゃない情報発信について、どのような可能性を感じていますか?

山口氏:まずテレビ局が反省しなきゃいけないことは、今まで動画に頼りすぎて文章が疎かになってしまっていたことです。そしてもう一つは、世の中にとって重要なことの99%はカメラに映っていないということです。 映像に出ていることが世の中の全てではありません。

映像で見せるべきか、文章で見せるべきか、それはきっと配信する情報によって変わってきます。映像を使った方もいいことがあれば、イラストを使ったほうがいいこともある。あるいは、自身が語って伝えないと伝わらないこともあると思います。

つまり、表現方法と選択肢は多ければ多いほど良いのです。なのでテレビ局側は、固定した考え方をまずやめたほうが良い。Webメディアが面白いことをやっていれば、前向きに学んだほうが良いと思いますね。

古田氏:こちらはBuzzFeedに掲載した「あぁかわいい… ハムハムキャッチャーなる遊びが至福」という記事です。ハムスターがテーブルから落ちそうになっている状態を、手でキャッチしているVine動画を載せた記事なのですが、この記事を文字で表現するのってかなり難易度高いですよね。

古田氏:ネットって、死ぬほどかわいい動画だったり、ユニークな動画が溢れているので、多くの人たちに魅力を届けるために、動画を使わない手はないです。

僕自身がデジタルの仕事に携わった最初の頃にダメだったと思うことは、“動画が使えるから動画を使う”という考え方でした。動画を使うべきものは何か?誰に伝えたいのか?ターゲットユーザーに伝えるには動画が本当に最適なのか?追求すると答えが見えてくるのだと思います。

山口氏:要は最適なツールを使い、伝えるジャンルも絞る必要はないということです。視聴者が求めているものを届けることが大事なんです。

あと、テレビ局が他のメディアに負けないコンテンツがあるとすれば「政治経済」であることは間違いないです。テレビ局は、国会の中に10〜20人の記者を常に待機させており、その記者たちは毎日政治の取材をしています。そういったリソースの使い方が出来ているのは新聞社とテレビ局だけです。

ただ、現状ですとそのリソースをかけているわりには、良いアウトプットが少なすぎる。1日の間で全然原稿を書いていない記者もいる。裏話を持っているのに出せない記者がいる。もっとテレビしか持っていないような情報を、今後配信していかなければいけないと思います。


ayupyAyupy Goto。ayupy(あゆぴー・ぴーあゆ)と呼ばれています。1990年大分県別府市生まれ。美術高校・美大育ち。新卒でスタートアップに入社して人事・新規事業・クリエイティブマネジメントなどを経験。現在はフリーランスとして独立し、クリエイター支援事業を行っている。アート、デザイン、テクノロジー、教育分野の仕事に携わる。DeNAのCreativePR担当も務め、UIデザイナーのコミュニティ育成に励む。

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