将来の利益を安定させるために鍵となる「新興市場」

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Martin Koppel氏は、FortumoのCEOである。

via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.
via Flickr by “Seba Della y Sole Bossio“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

欧米市場では、デジタルユーザ数が伸び悩んでいる。アメリカイギリスでは、スマートフォン普及率は80%近くになりほぼ飽和状態にあるため、デジタル機器やサービスを新たに利用しようとする人が少ない。欧米では、ユーザ一人あたりの平均収益は高いが、そのために競争も激しい環境下にあり、顧客獲得にかかるコストが嵩んでいる。

ユーザのパイが増えなければ、既存顧客を取り合うだけになるリスクに直面することになる。類似のサービスを提供する競合他社と増えないパイを取り合う競争をしていると、販売予算が急増するだけである。同時に、新規顧客をあまり増やすことができないため、儲けが減ることになる。

欧米市場とは異なり、新興国の経済のデジタルエコシステムは成長し続けている。インドは、2017年にはスマートフォン所有者数でアメリカを追い越すとされている。SuperDataResearchによると、2015年、デジタルゲームの消費は、アジア太平洋地域で67%、中東や北アフリカで60%増加した。一方で、ヨーロッパでは21%、北米では13%とわずかに増加しただけであった。

しかし、伸び率だけを見ていると誤解してしまいがちだが、インドのスマートフォン所有者数は、まだ現在のアメリカより少ないのだ。中東のゲーム市場は、北アメリカの10分の1の規模しかない。ここで言いたいのは、これらの新興市場が急速に成長し、今後5年以上引き続き拡大していくということである。これらの市場が成熟してしまった後に顧客拡大を図ろうとしても遅すぎるのだ。

新興国の顧客は、市場に進出するまで5年もかかるなら、それまで待ってはくれない。グローバルなブランドがなければ、ローカルなブランドが表れる。この主たる例は、ソーシャルネットワーキングのカテゴリで見ることができる。Facebookが欧米市場のユーザを増加させることに注力している間に、VKontakteは、ロシア市場を独占してしまった。世界には、アメリカに住んでいる人の数よりも多くのロシア語話者がいる。大きなチャンスを逃したわけである。

その他の数ある分野でも似たような例を見ることができる。Netflixは、iFlix(アジア)やViaplay(北欧)などと競合している。Spotifyは、中国(QQ Music)、日本または台湾(KKBox)の市場を獲得できていない。Uberは、中国(Didi Kuadi)、インド(Ola)、東南アジア(GrabTaxi)との競争の最中にいる。グローバル展開が遅れるほど、「しまった」感が大きくなるだろう。

グローバル展開しない会社には、主に二つの理由がある。第一に、現地の市場に関する理解の欠如だ。インドでは、iPhoneではなく、Micromax、Karbonn、Lavaなどのスマートフォンブランドが人気を博している。フィリピンの人々は、GDPが7倍も違うにもかかわらず、ドイツの人々と同程度の額をデジタルコンテンツに費やす。インドでは、現地のポーカーゲームが、収益ランキングでZyngaを抜いている。現地のエコシステムや成功を収めるために会社をどう変えればいいかを理解するには入念なリサーチが必要になる。

第二の理由は、世界展開が非常に難しいことがある。世界には、200近い国があり、各国には独自の言語と文化がある。アメリカの3億の人に対しては、一貫したマーケティングで良い。しかし、ロシア、ベトナム、トルコは、合わせればアメリカと同数の人がいるが、それらの国の顧客を取り込むには、3倍の努力が必要になる。この難題を乗り越えるには、一度に全世界に展開しようとしないことが理にかなっている。そうするよりむしろ、最もサービスを展開したい市場を見つけるとより良いだろう。その後でも、何年かかけて世界進出プランを練ることも可能だ。

世界展開が一晩にして成功することはない。骨の折れる仕事になることは間違いない。事業を行っている欧米市場のデータやトレンドだけに頼っている企業は、成長市場の最新の事情を知らないためにビジネスの危機に直面するだろう。現在、その難題に直面している企業もあれば、まだそこまで行っていない企業もある。一つ確かなことは、概して、音楽、ビデオ・オン・デマンド、モバイルコマース、デジタル経済は、欧米市場ではなく新興市場から成長するということだ。

現在の成功と未来の成功の健全なバランスを保つには、国際化が必要だ。バランスを保てなければ、2、3年の内に多くのデジタル業者が顧客を獲得できる市場は表れないだろう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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