SXSW 2016で明らかになった、注目すべき5つのマーケティングトレンド

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本稿の著者である Tom Eswards 氏は Epsilon の Agency Business の Chief Digital Officer である。過去15年間にわたり、デジタル、モバイル、ソーシャルメディアマーケティングに従事し、2014年の iMedia Agency Marketer of the Year のファイナリストに選出された。

Epsilon 以前は、The Marketing Armのデジタル戦略とイノベーション担当の EVP であった。それ以前は、DDB Worldwide 傘下の Red Urban において、デジタル戦略と新生テクノロジー担当 SVP であった。また、クラウドベースのソーシャルソリューションプロバイダー INgage  Networks の CMO も務めた経験もある。Twitterで彼をフォローしよう。


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SXSW Interactive 2016が今週開幕し、美味しいものや楽しいこと、そして顧客との関わりに大きく影響するであろう新生のテクノロジーをチェックしに、数千ものマーケターがテキサス州オースティンに押し寄せた。23年目にしてなおイノベーションにおけるSXSWインタラクティブの影響と役割は衰えていない。

今年明らかになったいくつかのトレンドはブランドと顧客の相互関係に大きく影響するだろう。次の5つに注目したい。

1. どこでもバーチャルリアリティ

バーチャルリアリティ(VR)は過去数年間、SXSW体験の重要な部分を担ってきた。特に Game of Thrones の VR 体験とSamsung Gear VR は卓越していた。今年は VR が最前線である。

Cinematic VR やバーチャルフットボール、VR ストーリーテリングからソーシャル VR を使った都市計画まであらゆるものについて議論された。そして、Samsung Gear VR のラウンジや McDonald’s Loft などさまざまなブランドによる展示も注目を浴びている。

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McDonald’s Loft では、参加者をハッピーミールボックス内へ誘導し、創造性を刺激してくれる V-Artist バーチャルリアリティ体験が展示されている。これは非常に面白いもので、VR にどっぷりつかった体験が可能だ。

Samsungは、#VRonDemand キャンペーンを通して、カンファレンス参加者のいる場所どこへでもポータブル VR 体験を提供している。Gear VR は平均的な消費者にも VR 体験に手が届く良い例である。

#VRonDemand でツイートして DM経由で招待に答えると、Samsung Mobile US チームが Samsung Gear VR 体験をあなたの場所へ届けてくれるというものだ。

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私も試してみたが、1時間以内には Trinity 通りと3番通りの交差点で Gear VR のヘッドセットを装着することができた。Gear VR が消費者にとって最も手の届きやすいタイプの VR になることにマーケターは注目すべきだろう。

2. ソーシャルメディアからソーシャルメッセージングへ

2007年のSXSWで、Twitterはマイクロメッセージングアプリを初めて披露した。2016年、審査員らの議論の中心は消費者がソーシャルメディアからソーシャルメッセージングへシフトしているということである。これには対話型のユーザ体験が台頭してきたことの他にも、次の数十億ドル規模の商機であるメッセージングマーケティングがある。

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SXSW 2016 に至るまでに、個人間のシェアに対する消費者行動とナローキャストネットワークの台頭に大きな転換が起きている。Twitter などのプラットフォームは、さらにプライベートな Snapchat のプラットフォーム機能を統合しているし、Facebook は Messenger を主な進化形商品として押し出している。

この動きはマーケターたちに顧客との関わり方の見直しを迫るものである。機知に富んだ方法でブランドの擬人化をするソーシャルメディアマーケティングの品質云々ではなく、もっと対話を可能にすることである。マーケターは視覚的に、またはメッセージングチャネル経由で説得力のあるカスタマーエクスペリエンスを作り上げることによって、顧客との対話を有効にする重要な機会を見つけなければならない。

彼らが将来に向けて何に可能性を抱いているかということに応えてプラットフォームからもたらされるシグナルと相まったこの消費者行動に関する大きな転換を機に、より個人的なシェアリングとつながりを望む今日の消費者ニーズに見合った新しいプラットフォームがSXSWで紹介されるだろう。

3. 人工知能と感情を持つロボット

ここ1年、ロボット工学と人工知能はメディアと消費者から注目されている。そして今、SXSW 2016 ではロボット工学と人工知能に関する話題が多く聞こえてくる。暮らしの中のロボット、自律走行車の役割、感情を持つロボットが私たちの生活をより良くするのかといったことだ。

JiboSXSW 2015 で最も優秀なパネルの一人は、MITソーシャルロボット研究家のCynthia Breazeal 氏であった。Breazeal 氏は、人間行動を認識、解釈、処理、疑似することが可能なシステムとデバイスをベースにした感情的コンピューティングについて語った。彼女はまた、Jiboという感情的人工知能も紹介してくれた。そして今年、そのJiboが帰ってきた。今回はJiboがどのように進化したのか、そしてどのように私たちの生活をさらに豊かにしてくれるのかといったことが議論されている。

Jibo は今年の SXSW の展示の中でも最も進化したロボットの一つで、まるで人間同士で交流しているかのように感じさせてくれる双方向の対話と表現豊かな経験を提供している。

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デジタルマーケターにとって感情を持つロボットは、高度な文脈コンテンツのコミュニケーションに新たな可能性を開き、IoT ベースの行動データのアクセスポイントとしての機能を果たすことができる。感情を持つロボットの概念の鍵となるのは、消費者感情の反応を考慮し、これらのデバイスと消費者の対話をよりポジティブで個人的なものにする能力である。

4. ダークソーシャル

と言ってもこれは新しいスパイドラマの名前ではない。これは SXSW Interactive で浮上した実在するトレンドである。ダークソーシャルとは、従来の分析にはあまり見られないシェアリングアクティビティのことである。ソーシャルメッセージングへのシフトが起きるにつれ、次第にさらに重要になっている。

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これは、インスタントメッセージやリンク付きのeメール、そして最近では Snapchat、WeChat や WhatsApp のような簡易ソーシャルコミュニケーションアプリから生じるコンテンツ共有とお勧めの集大成である。

Radium One の最近の調査によると、全てのオンラインシェアリングのうち59%はダークソーシャル経由で、91%のアメリカ人は日常的にこれらの手段で情報のシェアを行っていることがわかった。72%は単にユーザが長いURLをメールやショートメッセージにコピペして送るスタイルのシェアである。

簡易ソーシャルコミュニケーションアプリの急激な台頭がダークソーシャルの謎解きをさらに重要にしている。ソーシャルとモバイルが集中したことで、2016年はシェアされたコンテンツの割合は急激に増加し続けていくだろう。

マーケターはダークソーシャルとカスタマーエクスペリエンスの一部としての役割について考え始める必要がある。

5. 全てとつながる

コネクテッドデバイスについて議論しているパネル陣から、新しいマーケットプレイスとしての車を展示しているイベント、カンファレンスフロアでこれからデモが予定されている無数のウエアラブルデバイスや IoT ベースのデバイスに至るまで、消費者がテクノロジーと相互につながることの重要性が展示を通して注目ポイントであることがわかる。

一つのキーとなる体験として、Sony の Future Lab Program で展示されているウエアラブルデバイス「N」がある。これは今回SXSWでローンチする最新のイノベーションだ。

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このデバイスは、Amazon のウエアラブルデバイス Echo のように動作し、動きを妨げないように首輪のような形をしている。あらかじめプログラムされたオーディオのコマンドに応答し、ハンズフリーの写真撮影が可能だ。

Sony は生のフィードバックを求めて、SXSW 参加者のユーザテストを基にプロトタイプの改良を目指していく予定だ。この透明性の高いテストによって参加者に当事者意識がもたらされ、SXSW でのイノベーションをテストする素晴らしいアプローチ方法となっている。

SXSW でフルに発揮されたブランドの体験は、ブランドと顧客の相互関係が近い将来どのようになっていくのかを強く示すものである。マーケターは、さらに便利で人を惹きつけるカスタマーエクスペリエンスを提供するために、テクノロジーとデジタルイノベーションを活用していかなければならない。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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