スマホ動画広告のApp-CMがシードラウンドで1.4億円を調達、独自の動画再生エンジンでインド・中国に進出へ

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東大本郷キャンパス前の新オフィス屋上に集まった App-CM のチーム。後列左から2人目が CEO の大塚淳史氏。

本稿初出時「シリーズA」となっていたタイトル中のラウンドを、App-CM からの申告に基づき訂正しました(2016年5月13日)

スマートフォン向けの動画広告プラットフォームを手がける App-CM(アップシーエム)は28日、中国を拠点とする世界最大級のアドネットワーク Yeahmobi などからシリーズAシードラウンドで約1.4億円を調達したと発表した。このラウンドには、日本から複数名のエンジェル投資家も参加している。

App-CM は、THE BRIDGE で以前 VIMET の記事で紹介した、大塚淳史氏が創業したスタートアップだ。App-CM の創業後、大塚氏は、VIMET を開発するエメットクリエーションを柳本創氏(代表取締役社長)に託し、App-CM でスマートフォン広告向けの動画再生エンジンの開発に専念してきた。

一般的なスマートフォンの動画アドネットワークでは、コンテンツ内にインラインで動画を表示させるために、CSS Sprites というフォーマットが使われていることが多い。QuickTime(QT)や MPEG と異なり、ウェブブラウザから逸脱しないで再生する方法としては有用だが、パラパラマンガのように静止画の連続で表示するため、QT や MPEG のように動画フレーム間の差分圧縮が機能せず、データ量が大きくなってしまうのが難点だ。

App-CM では、Google が公開しているオープンソースの動画圧縮コーデック「VP9」をもとに、独自の動画再生フォーマットを開発。インストリーム動画広告プロトコル「VAST」に準拠した形で、最大圧縮時でデータ量を従来のしくみの10〜20分の1程度にする手法を編み出した。App-CM で作成された動画広告の初回再生時のみ、このフォーマットに対応した動画再生プラグインが読み込まれる。動画のオリジナルマスター(NTSC フォーマット)は30フレーム/秒あるので、スマートフォンに表示する際にどの程度フレームを間引くかにもよるが、従来のしくみで平均4MB程度あった動画広告のデータ量を、App-CM では最大圧縮時で 200KB 程度にまで抑えられるとしている(以下、ビデオの再生サンプルを参照。)

App-CM は、モバイルゲームなどを扱う日本国内のスマートフォン・メディア200サイト程度に導入されているが、大きなデータ量を必要としない動画再生技術を武器に、モバイル・ブロードバンド環境が発展途上である市場にも積極的に進出する計画だ。Yeahmobi からの資本受け入れによって中国進出はもとより、先月実施したインドのスタートアップ・アクセラレータ Green House Ventures(GHV)との提携により、インド市場への拡大も急ぐ方針だ。

App-CM の技術開発には、CTO の八木田樹氏を中心とした、東京大学大学院情報理工学研究科所属のコンピューターサイエンス研究者のエンジニアらが従事。開発体制の強化のため、App-CM は先ごろ、本郷の東大本郷キャンパスの赤門前に本社機能を移転した。現在、人工知能を活用した動画広告配信最適化アルゴリズムと動画再生エンジンで特許を出願中だ。

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