宇宙ゴミを掃除するAstroscaleが、産業革新機構やジャフコらからシリーズBラウンドで3,500万ドルを調達

Masaru IKEDA by Masaru IKEDA on 2016.3.1

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左から:産業革新機構 専務執行役員 土田誠行氏、宇宙飛行士 山崎直子氏、Astroscale CEO 岡田光信氏

シンガポールと東京を拠点に、宇宙ゴミ(スペースデブリ)の除去技術を開発するスタートアップ Astroscale は1日、シリーズBラウンドで産業革新機構(INCJ)とジャフコ(東証:8595)から最大3,500万ドル(約39.4億円)を調達したと発表した。産業革新機構はこのうち最大3,000万ドルを引き受け、ジャフコは自社のファンドで500万ドルを引き受ける。ジャフコのファンドには LP が存在するため、間接的にはジャフコ以外の投資家も今回のラウンドに参加することになる。Astroscale は2015年2月に、ジャフコ、Mistletoe のほか、エンジェル投資家の山岸広太郎氏(GREE 共同創業者)、笠原健治氏(ミクシィ 共同創業者)、諸藤周平氏(エス・エム・エス 創業者)、西川潔氏(ネットエイジ 創業者)らからシリーズAラウンドで770万ドルを調達している(当時のレートで約9億円)。

会見の冒頭、宇宙飛行士の山崎直子氏が講演し、自身の「ディスカバリー号」のミッション(STS-131)でスペースデブリの危険にさらされた体験を披露。宇宙開発において、スペースデブリの除去が重要であることを訴えた。現在、10センチを超える大きさのスペースデブリは地上からのレーダー照射により検出し、スペースシャトルや国際宇宙ステーション(ISS)では、軌道を変更してスペースデブリを避けるような対応がなされている。しかし、スペースデブリは秒速7.5kmと非常に高速で移動しているため、地上からのレーダー照射では検出できない1センチ以上10センチ未満のスペースデブリであっても、ロケット、人工衛星、国際宇宙ステーションにぶつかると被害は甚大なものになる。

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Astroscale は昨年、切削工具メーカーのオーエスジー(東証:6136)のスポンサードを得て、地上からではなく衛星からスペースデブリを検出するしくみとして「IDEA OSG 1(イデアオーエスジーワン)」の開発に着手。また、スペースデブリを除去する方法としては、極めて軽量で宇宙で利用できる粘着剤を搭載した捕捉衛星「ADRAS 01(アドラスゼロワン)」を用い、比較的小さく高度が低いスペースデブリについては粘着剤でつかまえ、そのまま高度を下げて大気圏再突入させる。大きなものや高度が高いものについては、スペースデブリは回転しており、その移動には高エネルギーを必要とするため、危険度の高い軌道からの除去(decongestion)という形をとる。捕捉衛星には、超小型衛星ほどよしの技術が生かされ、推進系にはイオンエンジン、過酸化水素水を使った姿勢制御系スラスタ、固体スラスタの3つのしくみが搭載される。

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左から:スペースデブリ捕捉衛星の ADRAS 1、スペースデブリ検出衛星の IDEA OSG 1

Astroscale の CEO である岡田光信氏は、このプロジェクトの実現にあたり、9大学11研究室、高専2校、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、精密備品製造の由紀精密をあじめ約50社からの協力を受けていると強調。関係者のチームを「Space Sweeper(宇宙のお掃除屋さん)」と名付け、チーム一丸となってこのプロジェクトを成功に導きたいと抱負を述べた。

Astroscale では2016年から2017年頭にかけて、スペースデブリ検出衛星である「IDEA OSG 1」をロシアから打ち上げ予定。スペースデブリ捕捉衛星の「ADRAS 01」を2018年前半に打ち上げ、実証実験を始めたい考え。人工衛星の小型化によって、Axelspace に代表されるように、衛星産業のトレンドが小型の衛星を低軌道で数多く打ち上げることで時間に縛られない観測ができる「constellation」中心になることから、彼らを顧客とすることで、故障衛星の除去や軌道安全性の確保を請け負うなどしてマネタイズしたい考えだ。

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Masaru IKEDA

Masaru IKEDA

1973年大阪生まれ。インターネット黎明期から、シンクタンクの依頼を受けて、シリコンバレーやアジアでIT企業の調査を開始。各種システム構築、ニッポン放送のラジオ・ネット連動番組の技術アドバイザー、VCのデューデリジェンスに従事。SI、コンサルティング会社などを設立。Startup Digest(東京版)キュレータ。

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