B Dash Camp 2016 Spring in 福岡のピッチアリーナで登壇したスタートアップ全18社をご紹介 #bdash

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本稿は、B Dash Camp 2016 Spring in Fukuoka の取材の一部である。

今回の B Dash Camp 2016 Spring in Fukuoka のテーマは「change」であるが、プログラムのアジェンダ構成についても一部変更された。前回までは、メインセッションと並行したトラックでファイナリスト選考が実施されていたが、今回は事前の書類選考の基準が引き上げられ、ファイナリスト選考はメインセッションで扱われるようになった。

本稿ではファイナリストとして選ばれた4チームを含む、ピッチアリーナに登壇した18チーム全社を取り上げる。優勝チームは、4日夕方18時に発表される予定だ。審査員を務めたのは、次の5名の方々だ。

  • 赤坂優氏(エウレカ 代表取締役 CEO)
  • 青柳直樹氏(グリー 取締役 執行役員常務 事業統括本部長)
  • 朝倉祐介氏(スタンフォード大学 客員研究員)
  • 國光宏尚氏(gumi 代表取締役社長)
  • 宮田拓弥氏(Scrum Ventures ゼネラルパートナー)

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ファイナリストに選ばれた4チーム

Nine by Lip(日本)

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顔写真だけでマッチングする Tinder では、マッチングの成立に偏りが生じる。「Nine」はInstagram で撮影した写真の中から、評価の高かった写真9枚を抽出することで、ユーザの日常や性格を他ユーザに見せ、マッチングを図ろうというアプリ。個性の宝庫である Instagram の写真のストックから、人工知能を使って最強の直感的プロフィールを自動作成するので、マッチングした後のチャットにおいても、盛り上がる話題に事欠かない。

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HelloWings by Outland(台湾)

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以前は Tixchart の名前で知られた HelloWings は、LCC(格安航空会社)に特化した価格比較サイト。107カ国3,000社の LCC からリアルタイムでのチケット価格の比較、日時を指定したフライトのチケット価格の比較、一年を通してのサーチャージなどを含む最低価格を知ることができる。

Skyscanner などは Amadeus、Sabre、Galileo などの航空会社の GDS (Global Distribution System) に接続しているのに対し、HelloWings は航空会社のウェブサイトから直接クローリングして情報取得している点で差別化しており、出発地・目的地・日時などを指定するだけで、複数の LCC 横断でベストな航空券の組み合わせを提示する。AirAsia グループの起業支援組織 Tune Labs の支援を受けている。

SmartHR by KUFU(日本)

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SmartHR は、中小企業向けの雇用保険や社会保険の自動化ツール。正式版公開後3ヶ月で650社に導入されている。日本の2,700万人が勤務する419万社の中小企業をターゲットにしている。昨日から電子政府API連携により、役所へのウェブ申請機能がリリースされた。将来的には、SmartHR で健康保険組合を設立し、ユーザとなる中小企業の健康保険料を安くする。また、保険会社へのビッグデータ提供、製薬メーカーとの事業連携なども計画。

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Gozal by BEC(日本)

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Gozal は中小企業のバックオフィス自動化を目指すスタートアップ。中小企業の経営者は、バックオフィスに年間で1ヶ月をバックオフィス業務にかけていると言われる。しかし、多くの経営者は業務を適切に行えているかどうかは不安と語る。機械学習を活用することで、必要なバックオフィス業務をクラウドサービスにより自動化を図る。現在10種類の手続がオンライン化できており、既に1,000社の企業が採用している。2017年までに、100種類の手続をオンラインで完結できるようにしたいとのこと。

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以下は、ファイナルラウンドには残らなかったものの、ピッチ登壇をした残りの14社だ。

ちきゅう(日本)

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ちきゅうは、中小企業向けの顧客管理・商談管理を中心とする CRM (customer relation management)、メール配信・スコアリング・ワークフローなどを中心とする MA(marketing automation)の機能を提供。創業者の浅井氏は、前職で売れにくいプロダクトの販売を任され、さまざまな分析を行って改善を試みた結果、月平均の売上規模が3.6倍に向上したことから、データベース・マーケティングが結果を生み出すことを実感。一方で、CRM は企業の15.9% にしか導入されておらず、その理由が小さくて小回りの利く CRM が存在しないからと考えた浅井氏は、この事業を開始することにした。

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Senses by マツリカ(日本)

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マツリカを創業した黒佐氏は以前、ユーザベースで営業・マーケティング・顧客サポートの統括責任者を務めていた人物だ。社内で配置転換のたびに業務知識や手順を教育する必要が生じるため、結果的に業務内容に精通した人にのみ業務が属人化してしまう問題を痛感し、営業支援ツール「Senses」を開発。いつ連絡をとるべきかなど、ステイタスの確認はモバイルでできるようになっており、Gmail とも連携する。

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SkyRec(台湾)

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SkyRec は、リアル店舗のための Google Analytics。店舗内でお客がどの部分に何回、どれだけの時間滞留したかを視覚的に把握することができる。導線分析、売れ筋商品の分析、陳列方法の改善、人気のない商品の排除選定などに威力を発揮する。台湾のある店舗では、SkyRec 導入から3ヶ月で店内のトラフィックが10%改善し、月間売上が18%改善した実績を持つ。台湾 AppWorks(之初創投)第11期から輩出。

Jumpy/児童智能手錶(台湾)

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Jumpy は5歳から8歳の児童向けに開発されたスマートウォッチで、世界初の親子対話型ゲームを提供する。ゲームのほか、日常の予定お知らせ機能、メッセージ機能などが搭載され、保護者は子供がどのような生活を送っているかをスマートウォッチを介して把握することができる。オープンSDKを提供することで開発元の JoyRay(悦睿科技)やサードパーティーが毎月のように新しいアプリをリリースしている。Foxconn のスマートフォン部門に在籍した Jerry Chang 氏が設立。台湾 AppWorks(之初創投)第9期から輩出。

SevenHugs(フランス)

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SevenHugs は IoT スタートアップで、HugOne と SmartRemote という2つのスプロダクトを提供している。HugOne は睡眠トラッキングが可能な IoT デバイスで2015年9月からフランスの主要小売店で購入可能。もう一つの SmartRemote は、ポインティングすることでスマートホーム・デバイスを、リモコンのような感覚で容易に操作ができるデバイス。

スマートホーム・デバイスを操作するためには、モバイルやタブレットを使って、適切なアプリを立ち上げる必要があり、直感的な操作ができないのが難点だ。SmartRemote は位置センサーや加速度センサーなどを組み合わせ、ユーザがどちらの方向を向けているかによって、その先にあるデバイスを操作することができる。2014年に設立し、2015年にシードファンディングで225万ユーロを調達している。

Collabee(韓国)

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Slack などのコミュニケーションツールでは、メッセージが時系列で並ぶため、どの問題について、どの議論がなされていて、その課題が解決したのかどうかを把握することが難しい。Collabee では、課題ごとにスレッドがわかれ、その課題に対する議論は個別の画面で管理される。このため、問題の解決の如何や捕捉が容易。キーワードやファイル名で検索しなくても、タスク、決定要否、画像などから検索できる。電子メールともシームレスに連携が可能。

PocketSuperNova(日本)

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PocketSuperNova は、モバイル動画クリエイター向けの編集アプリ「PocketVideo」を開発。特定のユースケースに向けたビデオ編集アプリが不足しており、ロングテールの動画クリエイターがマネタイズできない問題を解決。現在6万人のクリエイターが登録しており、俳優のマシ・オカ氏らもエンジェル投資家として投資している。現在、ポストバリュエーション2,000万ドルで、500万ドルを調達中。すでに日本の投資会社1社が、350万ドルの投資を確約している。

Caster(日本)

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Caster は、在宅での派遣業を実現するスタートアップで、リモートワークを実現する。人手不足倒産という言葉が生まれるなど、人手が足りない状況は企業にとって大変クリティカルな状況。一方で、旧来型の派遣業のイメージダウンにより、派遣登録者の数も低迷している。

Caster ではオンラインでの派遣免許水準をクリア。11月に登録を開始し、3ヶ月で登録者数が1,000名を突破した。20代〜40代の女性が多く地方在住者が中心。取引先は、チャットワークやエス・エム・エスなどに代表される IT 企業が中心だ。2016年に100社を新規に獲得し、2020年に1万人の登録者がリモートワークだけで生活できる環境を実現するのが目標。

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Nutte by State of Mind(日本)

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Nutte は、ファッションアイテムをたった一点から注文できるマーケットプレイス。日本には縫製職人が数万人いて、彼らはアパレルのサンプルや舞台衣装などを作っている。しかし、縫製職人はこれまで、業界内の紹介でしか仕事に出会うことがなかっため、安定した収入を増やすのが難しかった。

昨年2月にローンチした Nutte は現在、縫製職人を500人以上ネットワークしており、現在の成約率は80%以上。成約した場合は、取引金額の20%を手数料として Nutte に支払う。Nutte を使うユーザは5,000社/人以上が登録しており、業務ニーズはもとより、例えば、ライブハウスで頑張っているアイドルに衣装を作ってあげたい、というようなニーズにも対応できるようになっている。

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Ancar(日本)

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日本の中古車流通業界においては、買取から再販店頭に並ぶまで30%の手数料が載せられる。しかも、90%の中古車は未整備・未点検で流通している。必要のない中間マージンを排除し、消費税も加算されない。Ancar は全国の整備工場をネットワークし、事前査定と点検ができる環境を整備中。現時点で、関東の1都3県でサービスを提供できる。

中古車流通業界は排他的であるものの、創業者である城氏の祖父が業界団体の創業メンバーであることから、このネットワークを利用し、円滑な事業立ち上げを可能にしている。中古車流通のみならず、2016年にはアフターサービス・マーケットにも進出予定。3月には整備工場マッチングアプリ Repea、5月には整備工場用業務管理ツール BizMart をリリース予定。

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ST Booking by はこだてベンチャーズ(日本)

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East Ventures 元アソシエイトの森川氏が創業した ST Booking は、東アジアや東南アジアの留学生を日本の教育機関につなぐためのプラットフォームだ。インターネット上で容易に見つけられない、日本の留学生受入れ教育機関の情報を提供し、教育機関にとって顧客となる生徒の確保を支援する。従来、日本の教育機関は、アジア各地の教育フェアや現地の教育エージェントを通じて生徒を確保している。コストがかかり、ビザ申請をを含めた受入れのためのプロセスも煩雑だ。

ST Booking では日本の語学学校や専門学校50校、ベトナムやタイなどのエージェンシー20社以上とタイアップ、エージェンシーを通じた B2B と、直接生徒を取り込む B2C の両面でアプローチする。2020年には、年間30万人の留学生を日本に招聘しようとする政府の動きも追い風になる。成果報酬ベースで、教育機関から授業料の15〜25%を手数料として徴収することでマネタイズ。将来的には、卒業後の就職先企業とのスポンサーシップ、留学プロセスを効率化する CRM を開発するとのこと。これまでに、Beenext や If Angel から出資を受けている。

ODIN by Panair(日本)

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新電力の参入に伴い、ODIN は電力事業者のオペレーション・コスト圧縮を支援するサービス。広域連携機関と API 接続ができるようになったことから、Panair(パネイル)は Ruby ベースで人工知能を活用したオペレーション・プラットフォームを開発した。契約需要家のスマートメーターから30分毎に消費電力データを自動収集し、人工知能を使って精度の高い需要予測を出すことができる。

これらのダッシュボードを活用することで、たった一人でも電力事業者が運営できる上、Panair が「OEM 電力」を提供することも計画しており、ユーザとなる電力事業者は大手新電力から電源より安い価格で仕入電力を調達することができる。

SCORER by FutureStandard(日本)

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SCORER は、リアルタイム画像自動解析を提供するクラウドサービス。市販のカメラを使い、容易に、来店分析、行列の人数や移動方向、通行人数などを分析できる。カメラ網の構築を進め、流通業界や電力会社などと提携し、大型店舗や電柱などにカメラを配備。一つのカメラが捉えた情報を画像解析し、それを複数の用途で複数のクライアントが活用できる環境を整備できる。

画像を解析する技術(=アプリケーション)は多岐にわたるので、これらの技術はサードパーティが提供できるようマーケットプレイス化する。リリースから1ヶ月で6社とトライアルを実施中。昨年、インキュベイトファンド、YJ Capital、プライマルキャピタルから1.3億円を調達しており、今年は海外展開を目指す予定。Incubate Camp 8th から輩出。

STYLER(日本)

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ファッション業界売上18兆円のうち、取引の大部分はオフラインで実施されている。STYLER はオフラインの購買体験を改善するスタートアップ。昨年12月10日 iOS をローンチし、これまでに、ファッションのリアル店舗と潜在顧客と1万マッチングを達成、これまでに130のショップが参加している。

STYLER はこの日、ヤフーとの提携も発表した。STYLER では現在、オウンドメディア「STYLER MAG」から顧客流入を獲得しているが、このコンテンツをこれまでの FashionSnap のみならず、ヤフーにも提供する予定。2016年夏には、台湾をはじめとする華僑圏に展開する予定だ。

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