クラウドとチャットで健康管理ーー法人向けヘルスケアプラットフォーム「carely」がインキュベイトファンドから1億円を資金調達

Junya Mori by Junya Mori on 2016.3.7

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企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できるとする「健康経営」への注目度が近年高まってきている。経済産業省は東京証券取引所と共同で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定し、公表している。

一方で、2015年12月からは従業員のストレスチェックが義務化された。企業は健康への様々な対応を求められている一方で、リソースが不足しており健康への対策は満足にできていないところがほとんどだ。

ヘルスケアスタートアップ iCARE はこうした状況を打開するべく、新たに企業の健康創出プラットフォームサービスとして開発した「carely」をリリース。合わせて、iCAREは、インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合を引受先とする、総額1億円の第三者割当増資を実施した。

iCAREは、慶應義塾大学大学院経営管理研究科の同期3人が立ち上げたスタートアップ。2011年6月に創業し、2年ほどは元々の仕事に従事しながら活動していたが、2013年に健康管理システム「Catchball」をリリース。サービスの提供を行ってきた。

「まだ健康管理へもクラウドツールへの関心も低かったですね」iCARE代表取締役 CEO の山田 洋太氏はそう当時を振り返る。産業医・内科医・心療内科医としても活動している山田氏は、医師としてのサービス提供に合わせて「Catchball」を導入してもらっている状態だった。

時間が経過し、健康管理やクラウドツールへの意識も変化した。そこに合わせて彼らが開発したのが「carely」だ。彼らの問題意識は、「Catchball」時代から変わっていない。企業で働く人の健康情報が分散しており、担当者が代わると断絶する。産業医も把握できないこの非効率さを改善し、健康情報を見える化しようとしている。

「carely」は、従業員の健康情報を、クラウド上で一元的に統合管理し、可視化、分析する。勤怠を含めた人事労務情報、健康診断やストレスチェックの結果、産業医面談の情報などが管理可能になる。

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「carely」は、従業員のパーソナルな健康情報を可視化し、何か問題が発生したときや相談したいときに健康データに基づいてチャットを通じて具体的な改善を行う。

「carely」のチャット機能では、個人の健康データに基づいて医師や保健師がチャットで健康相談に応じる。チャットを通じて、健康診断やストレスチェック実施後の保健指導をはじめ、健康情報のコンテンツ配信も行う。

「carely」は言うなれば、「Web上の保健室」。企業が苦労している従業員とセンターとの健康診断の日程調整、ストレスチェックの実施などにも利用でき、従業員にとって健康に関するタッチポイントになる。

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iCAREはこうしたシステムの利用に加えて、「carely PRO」として健康業務代行や健康経営コンサルティング等を行うプランも用意している。「carely」活用を促進するため、企業に実施義務がある健康診断およびストレスチェックに関連する業務を代行。

実施後のデータは「carely」に健康情報として管理し、チャット健康相談に活用する。さらに、企業の産業衛生体制の立ち上げや日々の衛生委員会の運営など、健康経営に寄与する産業衛生活動を全面的にサポートする。

健康管理は、大きくフィジカルとメンタルに分かれ、それぞれ「健診業務」、代行等の「関連業務」、「相談業務」の3つのステップに分かれている。これまで、ヘルスケア関連のサービスを提供しているプレイヤーで、このすべてをカバーしているところはない、と山田氏は語る。

山田氏「代行業務などを含む「関連業務」の領域は、健診に対応するセンターがFAXでしか連絡できないなど、効率化、システム化が難しい部分です。そのため、健康のプラットフォームを作ろうとするプレイヤーも、この領域には取り組んでいませんでした。私たちは 「carely」のサービスを提供しながらこの部分においてもオペレーションを磨いていきます」

iCAREの経営陣は、医療現場や大手企業で業務改善や効率化に取り組んできた経験を持つ。経験やノウハウを活かして、「carely」のオペレーションを改善していく方針だ。

「carely」のモデルは、オペレーションの改善が必要なポイントが複数存在している。先述の「関連業務」についてもそうだし、チャットでの相談についても医師や保健師がどのようにチャットで相談に応じるかという点は、細かな改善が重要になる。

山田氏「従業員がチャットで相談するタイミングは業務時間ではなく、朝や夜、休み時間などです。そのため、朝昼夜休日もシフトを組んでチャット相談のサービスを提供します。

現在は、クオリティを担保するためにテストを重ねている段階。チャット相談の利点は、テキストでコミュニケーションを行い、履歴が残るため、PDCAが回せる点です。電話での相談だとブラックボックス化していたところが可視化され、改善しやすくなります」

「carely」は、すでに導入している企業がいくつか存在している。ダイエットジムとして知られる「RIZAP(ライザップ)」もそのひとつだ。RIZAPは、「carely」を導入したことで健康診断を受ける従業員の割合が、5割ほどだったところから9割以上へと改善されたという。

iCAREは当面、サービスを磨くことを優先しながら、導入企業数は100社を目標に掲げている。iCAREが目指すのは、医療行為を行うことではない。同社は「予防・改善」につながるプログラムをクラウドを通じて提供する「クラウドホスピタル」という構想を描いている。

企業が保有するヘルスケアデータを一元管理し、健康データに基づいてチャットでの健康相談を行い、将来的にはどのソリューションが合っているのかをレコメンドできるようになることを想定している。

クラウドサービスである「carely」が磨かれていくことで、これまで従業員の健康面に投資が難しかった中小企業も、健康管理を行うことが可能になっていくだろう。今回の増資により、iCAREは経営体制、開発体制、マーケティング体制の強化を行い、サービスの改善を行っていく。

Junya Mori

Junya Mori

モリジュンヤ。2012年に「Startup Dating」に参画し、『THE BRIDGE』では編集記者として日本のスタートアップシーンを中心に取材。スタートアップの変革を生み出す力、テクノロジーの可能性を伝えている。 BlogTwitterFacebookGoogle+

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