メルカリが約84億円調達、国内の月間流通額は100億円超にーー山田氏が3年の軌跡を振り返る

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大型調達プロジェクトを担当した執行役員CFOの長澤啓氏(右)

これこそがスタートアップだ。

フリマアプリのメルカリは3月2日、第三者割当増資の実施を発表した。調達した金額は総額で約84億円。

引受先となったのは既存株主のグロービス・キャピタル・パートナーズ、World Innovation Lab(WiL)、グローバル・ブレイン、メルカリ経営陣に加え、新たに三井物産、日本政策投資銀行、ジャパン・コインベスト投資事業有限責任組合が今回の調達ラウンド(D種優先株式)に参加している。今回の出資により、同社が2013年2月の創業時から調達した資金総額は126億円に到達した。

また、同社は現時点のダウンロード数が日米合わせて3200万件(内訳は日本が2500万件、米国が700万件)に到達し、国内の月間の流通額が100億円を超えたことも公表している。

今回ラウンドの主目的はやはり米国を中心とするグローバル展開で、広告出稿と回収のバランスを見ながら投下を続ける一方、国内展開については子会社souzohでの新規事業による横展開や、M&Aなどを含めたチームの強化、関連事業への出資などを推進するということだった。

評価額は10億ドル以上という情報も

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写真:THE BRIDGE Fesで壇上に上がった山田氏(左は筆者)

さて、国内スタートアップからもいわゆるユニコーンが出現した。とある関係者から今回の評価額について情報を得たが、現在のメルカリには10億ドル(120円換算で1200億円)以上の値がついているという。

創業3年、2013年7月のサービス開始から約2年半というスピード感で国内の月間流通を100億円規模に持ってきたという「足元の強さ」が評価額の理由と考えれば納得のいくものではないだろうか。単純な比較は難しいが、PC時代のC2C王者ヤフオクが現在、年間取扱高で8000億円規模なので、この短期間でその後ろ姿がみえるところまでもってきたのはやはりすごい。

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資料:ヤフー決算資料2015年10月〜12月より

そしてこの彼らの強さを裏付けているもう一つの理由が豪華な経営陣の顔ぶれだ。

本誌が2月19日に開催したイベント「THE BRIDGE Fes」では、同社代表取締役の山田進太郎氏に公開インタビューをさせてもらった。その時の様子を絡めて、どのようにしてこの強靭な経営陣が集まったのか、少し振り返ってみたいと思う。

創業3年の軌跡ーー経営陣はどうやって集まったのか

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メルカリ(当時の社名はコウゾウ)は3人の起業家によって創業される。すなわち、バンク・オブ・イノベーション創業メンバーの富島寛氏、シリコンバレーでRockYou Inc.を創業した石塚亮氏、そしてウノウ創業者の山田氏の3人だ。

石塚はここでは5月ってなってますけど、事実上は3月からで、この3人がいわゆる創業ファウンダーですね。富島は前の会社で社長をやってたんですがそれを辞めて、この先エンジニアリングができないとダメだってことで、別の会社でエンジニアとしてやってたんです。石塚はRockYouの創業者なんですがそこまで上手くいかず、中国の会社に売却した頃でした。それでお世話になりましたってメールがきたので、じゃあご飯でも食べようと。

メルカリを始める時、ワールドワイドで成功することを目標にしていたんです。

彼はバイリンガルだし、シリコンバレーでの起業経験もあるので、これから何やるの?って聞いたらアメリカに戻ってまたベンチャーやるって話だったので、だったら僕もそうやろうと思ってるからとりあえず日本で1年一緒にやらない?ってことになって。

それぞれ大学在学中、もしくは卒業後という若い時期にスタートアップした3人はソーシャルゲームという共通項の中で再会し、メルカリを創業することになる。2013年7月のメルカリリリース段階では3人含め10人ほどのチームになっていた。

写真:2013年12月に小泉氏が参加

そしてこのリリース直後からメルカリはヒットの予感を感じさせる成長曲線を描き始め、同社は急ピッチで拡大をすることになる。この時期に参加した重要人物が小泉文明氏だ。

小泉も富島も石塚もみんな古くからの知り合いなんです。よく飲んでて、小泉は前職のミクシィを辞めて色んな会社を手伝うようになっていました。当時、石塚がコーポレート周りのオペレーションをやっていたのですが、元々の約束通りアメリカに行こうってことになっていたので、オペレーションが得意な人を探す必要があったんです。

ある時、何人かで飲む機会があってそこに小泉もいたので、じゃあとその飲み会が始まるちょっと前にスタバで話をして。これから何やるんですかって聞いたら、彼、ミクシィがすごい成功をして、ユーザーも何千万人になったし、時価総額も大きくなった。もう一度こういう会社を作りたいんですよねって。

だったら一緒にやろうよ、と。

メルカリが素晴らしいと思うのが、こういった重要な人材を柔軟に起用している点だ。例えば山田氏も小泉氏もエンジェル投資家として個人投資をしている。小泉氏はメルカリ参加当時から別会社の監査役だったり社外取締役なども務めていた。

もちろん彼らはメルカリに100%コミットして事業に全力投球しているが、こういう創業や経営経験のある人材に課外活動を柔軟に認めていることで、より幅広い知見や情報が循環することになる。

写真:メルカリ1周年

会社の「番頭さん」的役割の小泉氏が参加したことも手伝って、会社はさらに拡大を続けることになる。この当時の人数は20名ほど。創業して約1年ほどの頃だ。当時の月間流通額は10億円ほどに到達していた。

2014年5に入ってテレビCMも始まり、数百万ダウンロードいって、流通額も乗ってきた頃ですね。更に販売手数料を有料化して収益も立つようになってきました。9月にはアメリカ展開も本格化してこっちにも力を入れたい。石塚は赴任していましたし、富島もアメリカに専念したい。

そういうタイミングである日、facebookを見てたら濱田(優貴氏・現執行役員)が「辞めます」って。

元々、友達だったのでお疲れさま会をやろうってことになって。彼が副社長をやっていたサイブリッジってすごい利益も出ていたし、有能な会社だったんです。そこを辞めて何やりたいの?って聞いたら違うチャレンジをしたい、もっと大きなことをやってみたいと。

だったら一緒にやろうよ、と。

電撃移籍した濱田優貴氏

電撃的な濱田氏の移籍に続き、今度はヤフーに事業を売却した起業経験者が参加することになる。コミュニティファクトリー創業者の松本龍祐氏とクロコス創業者の柄沢聡太郎氏だ。

たまたま同じ時期なんですけどね。濱田と松本は元々仲が良くて、小泉がミクシィ時代にコミュニティファクトリーに出資してた関係もあって。柄沢は濱田とCTO会みたいなのでこちらも仲が良くて。それで濱田のお疲れさま会に二人ともきてたので、何やってるの?って聞いてたんです。その後も何度か飲み会でたまたま一緒だったりして。

それでもう一緒にやろうよってなったのが経緯です。はい。

壇上でも山田氏と話していたが、辞めたタイミングの「お疲れさま会」は非常に有効な手段だと思った。

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写真:メルカリ2周年

さておき、こうやって強力な起業経験者が次々と集まることになったメルカリ。更にこの経営体制を強化するために打った次の一手が出資だった。今年1月に電撃的な発表で話題になったBASEへの出資だ。

松本は新しい事業をやっているんですが、C2Cって本当にかなり可能性があるんですね。AirbnbもUberだっていわばC2Cじゃないですか。現在、アメリカに力を入れてて、ヨーロッパにも行ってます。そういう状況下で日本が自前で全部やるのはやはり不可能と思ったんです。出資というゆるやかな繋がりでこういう周辺事業領域を攻めるという方向性は今後も続いていきますね。

駆け足で彼らの3年を振り返ってみたがいかがだっただろうか。今日発表された約84億円という大型の調達は、今後、メルカリが更なる強大な組織を作るほんの序章に過ぎないのかもしれない。

この先彼らがどこまで大きくなるのか、期待を持って引き続き追いかけていきたい。

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