The North Face、IBMのワトソンを使ったスマートなモバイルショップアプリをもうすぐローンチ

Matt Marshall by Matt Marshall on 2016.3.10

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アウトドア用品のThe North Faceは来月モバイルアプリをローンチする予定だ。このアプリはユーザに最適な商品を提供できるよう、世界で最も賢いコンピュータであるWatsonが採用されている。

このアプリはIBMの高性能人工知能コンピュータ、Watsonを小売業界で初めてモバイルアプリに採用しており、ユーザが電話に向かって自由に話しかけることで、Watsonのショッピングアシスタントが質疑応答形式で最適なものを見つけてくれるのだ。

使い方

例えば春物のジャケットが欲しいとしよう。このアプリを使えば通常オンラインショッピングをする際に行うジャケット画像が載ったページを何ページもスクロールする、という作業をしなくて済む。The North Faceでは重さやスタイル、プロテクションレベルが異なるジャケットを350点も扱っている。

中綿はダウンにするか、合成断熱材か、それともコットン等のより軽いものにしようかなど、どこから手を付けたらいいかわからない時もある。そんな方のためにWatsonは、ジャケットを着て具体的にどこへ行くのか、またそれはいつなのか(着用時の気温を知るため)、男性用なのか女性用なのか、どのようなアクティビティをしようと考えているのか、などを聞いてくれる。

そしてこれらの要素を自動的にまとめて、ユーザに最適なジャケットを見つけてくれるのだ。

デスクトップ上でのテスト結果は良好

上: The North Face のショッピングアシスタント、デスクトップ版

上: The North Face のショッピングアシスタント、デスクトップ版

カリフォルニア州アラメダを拠点とするThe North Faceは11月にこの技術のテストを開始したものの、その大部分はデスクトップ向けであった。モバイルサイトでのテストは携帯電話のスペックの問題でなかなか困難だったようだ。同社のeコマース部門シニアディレクターであるCal Bouchard氏は「一つの画面で数多くの製品を表示するのは難しく、また製品画像が重いためにページがダウンしたり、レンダリング時間が遅くなったりしてしまいました」と、VentureBeatのインタビューで語った。

期待のもてる結果を2ヶ月にわたったテストで得ることができ、テストは正式に1月に終了した。テスト版でのユーザはおよそ5万人、平均利用時間は2分。「ユーザから寄せられたフィードバックは最高が3のうち2.5で、75%の人がまた利用したいと答えました」とBouchard氏は語った。アプリのおすすめ商品クリックスルー率は60%であった。

Above: Cal Bouchard, senior director for ecommerce, The North Face

上: The North Facebo のeコマース担当シニアディレクター Cal Bouchard氏

公式トライアル期間は終了したものの、このアプリを試すことができるリンクはそのまま公開されているので、私も試してみた。www.thenorthface/xps。結果は長所短所が相半ばするものであった。最初に検索した時にはフリーズしてしまった。私が思わず変化球を投げてしまったからかもしれない。というのも私は1歳2ヶ月の息子の服を探していたのだが、Watsonにはまだ子供向けの用品は搭載されていなかったのだ。なので、今度は「次の週末をニューヨークシティで過ごすために『男の子』向けのジャケットを購入したい」と言ってみた。だが、Watsonは私に男性用と女性用どちらのジャケットが欲しいのか、と尋ねるだけでその後またフリーズしてしまった。

私はリロードし、「男の子」の代わりに「キッズ」という言葉を使ってみた。すると私の言ったことを理解してくれたようで、Watsonはまだ子供向け用品の検索は未学習であると教えてくれた。しかし全般的に言えば、私はその収集データやバックグラウンドで行われていた計算に驚かされた。

現在は小学2~3年生レベル、しかし知的レベルは向上中

Above: The North Face’s existing mobile app

上: 既存のモバイルアプリ

Bouchard氏はまだこのアプリにはバグがあり得ると認めたうえで、現時点では予想の範囲内だと言う。Watsonの人工知能は物事を教えられることで機能し、「今は小学2~3年生レベル」だそうだ。時間をかけて学習していくことで人工知能はどんどん性能が上がっていく。キッズの類義語である子供、息子、娘なども全てすぐに理解できるようになるだろう。彼女が言うにはあと数年もすれば人工知能はいいところまでいくのだそうだ。(私が体験したバグは2週間後に再度挑戦しても変わらず存在した。)

実際、このアプリが来月公開になれば、(Bouchard氏は4月、とだけ言い具体的な日にちを明かしてくれなかった)The North Faceの春の新作ウェアなどさらに大量のデータを扱うことになり、より賢くなるはずだ。

「これは革新的だと考えます」

The North Faceはこのユーザー体験を構築するにあたって、オークランドのデザイン会社であるFluidと提携した。Fluidは同サイトを運営するソフトウェアを開発、提供している。これは偶然ではなく、FluidはIBMがWatsonの人工知能がeコマースにおいてどのように機能するかを示すために選んだ会社でもある。IBMは2年前にFluidに資金提供した。これはWatsonが各産業に深く関わり、より知能を高めるためのIBMの戦略の一部であった。The North Faceのショッピングアシスタント技術は構築に12ヶ月を要し、Fluid がその機能をお披露目する初の試みとなった。

このプラットフォームのスマートさによって、ショッピングにおける人工知能利用においてIBMはAmazonのAlexaなど他と一線を画する。「Amazonは何百万もの在庫を低価格で管理する技術では勝っているかもしれませんが、個々人のニーズに対応する能力ではそこまで優れていません。Watsonを利用することで、The North Face はユーザーが誰であり、何をしたいのか、次にどんな冒険をするのかを把握するのに適した場所になります。私たちが参入できるニッチ分野なのです」とBouchard氏は語った。

「これは前代未聞です。消費者と自然言語で質疑応答を行う人工知能Watsonの技術を使用しているところは他にありません。これは革新的なことだと私たちは考えています。」

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

Matt Marshall

Matt Marshall

起業やテック・イノベーション・シーンを、スピーディーかつ詳細に誰もが書いていなかった中で、Matt はそれを実現すべく2006年9月に VentureBeat を設立。2001~2006年は、San Jose Mercury News でVCを中心に取材。2002年に、北カリフォルニア・プロフェッショナル・ジャーナリスト協会から「今年のジャーナリスト賞」を受賞。1995~1998年、Wall Street Journal でドイツ・ボン駐在の特派員として勤務。1994年には Washington Post のライター。ジョージタウン大学で、政治学の修士号とドイツ/ヨーロッパ研究に関する学士号を取得。

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