ビックデータで介護サービスのインフラを目指すウェルモ、VCや地銀などから総額7,500万円の資金調達を実施

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IT化が進んでいない分野の一つに「介護」がある。介護利用者にリハビリを提案するケアマネージャーの多くが、FAXや電話によるコミュニケーションをしたり手作業で事業所を探したりするなど、アナログなやりとりによる非効率な作業によって離職につながっているケースも多く発生している。そこで、2013年創業のウェルモは、介護事業者向けの業務支援システムの開発に乗り出した。

ウェルモは、3つのサービスに取り組んでいる。まずは、介護に関するニュースや行政情報などをまとめた介護情報サイト「ミルモプラス」。次に、200項目以上の検索項目から介護事業所選定が行える検索機能を備え、保険請求分・自己負担分を計算できる保険点数計算サービスなどの情報もまとまった「ミルモタブレット」。

そして、通所介護事業所・住宅型有料老人ホーム・サービス付高齢者住宅などが、自社の施設情報を入力することでミルモタブレットに情報を届ける営業支援や日々の稼働率などから経営管理が行える「ミルモプロ」だ。ウェルモ代表の鹿野佑介氏は、もともと人事管理やマネジメント業務の会社に勤めていた。そうした経験をもとに、ITで介護分野を変えようと考えたことがサービスのきっかけだ。

福岡で創業したウェルモ。福岡市内7区だけでも2100ヵ所の介護事業所、1100人以上のケアマネージャーがおり、そのすべての事業所の詳細を把握することは困難だ。また、介護事業所の多くもウェブサイトを制作していないなど、情報発信があまりできていないことも多い。そこで、ケアマネージャーたちは「ミルモタブレット」が提供する膨大な事業所のデータから、介護を必要とする人のニーズやリハビリの訓練内容をもとに検索をかけ、条件に合った事業所を探すことができる。

情報を一元管理しデータベース化したサービスで、いわば「介護事業所版食べログ」とも呼べるものだ。また、介護保険の点数計算も備えており、介護に関する情報がすべて電子化されたことで作業の効率化が図られ、短縮された時間を通じて速く利用者にサービスを提供することが可能に。

「ミルモタブレット」のデータ元となる事業所情報は、各事業所に無料で提供している「ミルモプロ」をもとに、施設情報やサービス、稼働率などもリアルタイムで更新し、反映。事業所情報を更新することがケアマネージャー向けの営業ツールとなり、自社の施設に合った介護利用者をつないでくれることから、自社の情報を事細かく入力するインセンティブにもなる。さらに、介護事業所の基礎情報は厚労省が提供す介護事業所のオープンデータを活用。行政のデータベースをもとに網羅的な事業所データを収集。

加えて、個別のヒアリングや調査シート、「ミルモプロ」をもとに情報の拡充を行っている。事業所の運営者は、日々の経営管理もミルモプロで行うことができ、どういったサービスを今後提供するかなど、今後の事業計画づくりにも活かすことができる。行政のオープンデータを活用したビジネスとして、総務省が実施する地域情報化大賞2015で奨励賞を受賞するなど、行政らからの評価も高い。

「ミルモプロの活用そのものが営業に直結できる仕組み。そして、データが集まれば集まるほど、ケアマネージャーが検索し利用者に最適な事業所をすぐさま提案することができるようになる。作業の負担軽減と効果的な介護を提案することができる仕組みのために、介護事業者一つ一つを周りながら、どういった情報がケアマネージャーにとって必要なのか、どういった施設の多様さがあるのかといった施設情報の項目作りに時間をかけてきた」(鹿野氏)

本日、ウェルモはアーキタイプベンチャーズ、大分ベンチャーキャピタル、佐銀キャピタル&コンサルティングを割当先とする7,500万円の第三者割当増資を実施したと発表した。すでに福岡市内のケアマネージャーや介護事業者らへの利用シェアは高く、今後は北九州市などの福岡県全域への利用を広げていく。また、2017年には横浜市への展開も予定。今回の調達で、開発強化や人材採用も含めた組織づくりに力をいれていく。

介護利用者と介護事業者のマッチングだけでなく、集まった介護情報の基盤プラットフォームを活用することで、新たな金融資産にもなると鹿野氏は考えている。介護事業者のさまざまなデータを組み合わせることで、金融機関などに対して情報支援を行うことができる。データを活用したデータビジネスを一つのマネタイズポイントとし、ケアマネージャーに配布するミルモタブレット、介護事業者のミルモプロを無償で提供することでサービスの浸透をは早めていく。いままで労働集約的な要素が多かった介護の分野に対して、データベース事業を核としてIT化を推し進めようとしている。

「日本各地の政令指定都市の展開をもとに、全国の介護事業所の情報を見える化を目指す。もちろん、各地の都市で介護に対する利用ニーズは変わるため、それぞれにローカライズが必要。各地に支社をつくりながら、介護情報のデータベースを拡充することで、すべての介護事業所に対してさまざまな角度から支援できる仕組みを作っていきたい」(鹿野氏)

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