Facebookの描くマスタープランーー私たちに馴染みのある「ウェブ」が葬られる?

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Armando Biondi氏はFacebook広告の最適化を手がけるSaasソリューション企業AdEspressoの共同設立者兼COOである。彼は過去に5つのテック/非テック企業を共同で設立している。また、Mattermarkをはじめとする30以上の企業のエンジェル投資家であり、500 Startupsネットワークに所属している。

Image Credit: Facebook
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昨年の今頃、筆者はFacebookがGoogleを葬り、世界で2番目の1兆ドル企業に成長する秘密のプランが進行中であると書いた。これは多くの議論を呼んだ。しかし筆者は間違っていた。Facebookのプランは実際には、それよりはるかに遠大だ。

今週キャンディクラッシュを72時間ぶっ通しでプレイでもしていた人でなければ、Mark Zuckerberg氏のF8(Facebookの開発者カンファレンス)におけるキーノートスピーチでその一端を垣間見たはずである。また、発表された内容についての記事などメディアカバレッジも多く目にしたことだろう。

ただ、これらのアナウンスが実際に人々と世界にとってどのような意味を持つのかは読み取れなかったかもしれない。なので、点と点を線で結んでみよう。

あらかじめ断っておきたいが、筆者はFacebookのマーケティングパートナーであるAdEspressoの共同設立者兼COOであり、当社は未公開情報へのアクセス権を持ってはいる。だが、この文章にはいかなる未公開情報も含まれてはいない。

10年戦略

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上記の写真のスライドを見た人も多いだろう。これは、私たちの世代で最も興味深い企業の長期的な考え方を垣間見られるという意味で、非常に意義深いものである。

さらにわくわくさせてくれるのは、Facebookが関連するほとんどの分野でたやすく勝利を収めるために同社がこれまで使ってきたシナリオを明らかにしている3段階の戦法だ。1)インフラを構築し、2)その上に製品/サービスを構築し、3)それを取り巻くエコシステムを構築する。以上。

具体的には、製品について言えば、Facebookは10億人にインパクトを与える「モノ」について語っている。スライドの真ん中のエリアを見てみれば、Facebook Groupsは10億近いユーザ数を持ち、Facebook Messengerも10億近いユーザ数、WhatsAppも同様である。メインのFacebookアプリがもちろんそれをはるかに上回っているのは言うまでもない。

ここには語られていないつながりがあり、F8イベントの期間中にささやかれていたが公には語られなかったことがある。欧米の他のどのソーシャルネットワークも10億ユーザーは獲得していないということだ。

PinterestもSnapchatもほど遠い(いずれもつい最近、1億人の月間アクティブユーザ数を達成した)。Twitterでさえ届いていない(同社はおよそ8億人の「ログインしない」ユーザとおよそ5億人の「ログインする」ユーザ数を公称している)。

それによる語られない巨大な影響とは? Facebook以外の大手ソーシャルネットワークを総計しても、Facebookのひとつの製品のリーチにすら届かないのである。当面、これを深く心にとどめておこう。つまり、人間の行動に根本的な変化が起きない限り(知ってのとおり、数世紀にわたって変わったことはないが)、Facebookはソーシャルメディアのレースに勝ったということだ。

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シェア争いをしているライバルたちにとって、単に「別のユースケース」であるだけでは不十分であり、Facebookがそれを真似できない理由が必要である。なぜなら、今のFacebookには巨大なスケールと野望、そして決断力があるからだ。もし新しいユースケースを防御できなければ、Facebookがそれをコピーするだけである。

これは実際に、「ライブビデオ」の導入(Meerkat、Periscopeがやっていること)、MSQRDの買収による画像とビデオのパーソナライゼーション(Shapchatがやっている)などで見られたことだ。フェアかどうかと聞かれれば、ノーだ。しかし、ビジネスはフェアプレイではなく、勝負である。

コンシューマ視点

したがって、Facebookの課題は競合の存在をどう防ぐかではなくなってきている。もはやそういう段階ではない。Facebookに問うべきことは、どんな新しいユースケースが出現しても実装して吸収してしまえるようレベルにまで、どのように成長を続けることができるのかということだ。その答えは、世界中で中国を除くほぼ全員がFacebookに接続している状況なので、より多くの人をつなげることである。それをやり遂げてしまったら、つながっているときにできることをより多く提供すること。つまり注目を集める経済システムである。

これが、Facebookがレーザやドローン、飛行機について、また革新的5Gネットワーク技術を社会貢献のために提供しようとしていることについて語っている理由である。より多くの人をつなげるということなのだ。

また、Facebookがバーチャルリアリティ、インスタント記事、ライブビデオAPIについて語っている理由でもある。人々がつながったときにできることをより多く提供することである。理解していない人もいるが、大多数の人にとって、Facebookはすでにインターネットへのアクセスの入り口であり出口なのだ。とりわけ、モバイルではそうだ。

ビジネスの視点

ここからが本当に面白いところである。ここはまた、メッセージングが本領を発揮するところだ。確かに人工知能やボットは面白いが、本当のゴールは、またもFacebookのスケールメリットを活用し、メッセージングアプリを最も簡単で早いコミュニケーション手段として確立することである。

もはや他人とだけではなく、アルゴリズムや企業とのコミュニケーションでもある。これは通常、以下のような2つの場面だけで使いたいものだ。A)企業から何かを買いたいとき、B)すでに何か買ったあと、である。

全容が見えてきただろうか? Facebookは効果的な広告チャネルとしてすでに数十億ドルを稼ぎ出し、Googleの競争相手たりえる唯一の代替として確立している。この両面戦略の実行により、Facebookは効果的なeコマースチャネルかつ効果的なコミュニケーションチャネルになっている。具体的には、同社はマーケティングファネルの全域、セールスとポストセールスまで含んだ分野をカバーすることになり、Facebookがそれをやり遂げることができれば、まったく新しい世界の幕開けとなるだろう。

マスタープラン

同社のプランを完成させるもの、そして最重要の要素がある。Facebookは企業ページの数について何度も繰り返し語ってきた。現在5000万である。なぜそれが重要なのか?

理由はこうだ。もし広告、セールス、サポートすべてがFacebook上で行われ、その中心が企業のFacegookページなのであれば、企業として自社のウェブページを持つ必要があるだろうか? ないだろう。また、自社のウェブページを立ち上げることはいまだに一苦労だが、Facebookの企業ページを持つことはきわめて簡単である。

効率、利便性、スピードは、テクノロジーと人間の行動において最大の理由付けになる。どんなレベルであっても厄介さを取り除けば、集客力は一段階上がるものだ。Facebookがそれをさらっとやってのければ、それはもはや必要不可欠なほどパワフルになる。情報ベースのウェブでなく、人のつながりをベースにしたウェブになるのだ。これはとてもわかりやすい。ウェブページは大昔からあるようにも思えるが、最初に作られたのは1991年8月6日である。25年にも満たない過去のことである。それを考えてみれば明らかだ。

いま私たちが知っているウェブは、単に例外だったのかもしれず、まったく異なる方向に行くはずだったものが最初に回り道をしただけなのかもしれない。数年たてば、ウェブは公的なものではなく民間のものになっているかもしれない。おそろしい? 必ずしもおそろしくはない。確かに言えるのは、とても興味深い状況になるだろうということだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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