NYで全米最大規模のテックイベント「TechDay」が開催——スタートアップ550社が出展、3万人が集結【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2016.4.22

本稿は、ニューヨークを拠点に活動するジャーナリストで翻訳家の安部かすみによる寄稿である。


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4月21日、ニューヨークで全米最大規模のスタートアップイベント 「TechDay」が開催した。毎年春に開かれる恒例のイベントで、今年で5年目を数えるもの。

今年は計550ものスタートアップ、30のアクセレレーターがそれぞれのブースを出し、テック好きはもちろんのこと、投資家や就職活動の学生、報道関係者など3万人以上が会場に足を運んだ。昨年の出展は400社、来場者数は1万人強という数字を比べても毎年驚くほどスケールアップをしており、今回から導入された新たな試みもいくつか目を引いた。

午前10時からスタート。入場無料とあり多くの参加者が訪れ、入場のための長蛇の列ができた。

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今年の新しい試みとしては、会場内に2箇所のデモステージが設けられ、ピッチの機会が与えられたことだ。また、ABC局の人気リアリティー番組『Shark Tank』も特設ブースを構えるなど、例年にも増して異様な活気や盛り上がりに包まれた。

550社の中で目立つための各社アピール合戦

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「TechDay」の大きな特徴は、その出展ブースの多さだ(550社が12カテゴリーに分けられている。テゴリーは「B2B」「エンタープライズ」「音楽&メディア」「健康&フィットネス」「Eコマース」「フィンテック」「ソーシャルメディア」「オンデマンド」「ソーシャルインパクト」「EdTech」「ハードウェア」「そのほか」)。

つまり、ここを訪れ各ブースを眺めるだけでニューヨークや全米におけるその年のテックトレンドが感じられるのだ。しかし何せ数が数だから、美術館と同じでまずは目的を決めそれをめがけて行かないと、かなり疲労困憊してしまうことになる。

もしくは会場内をブラリと歩きながら、ふと目に飛び込んできたものや食指が動くブースでサービスについて説明を受けたり、彼らのアイデアを体験するという楽しみ方もある。よって、1人でも多くの人に注目してもらうために、スタートアップは各社さまざまな趣向を凝らす。

私は今年の特徴を見るため、まずは会場を一周した。そこで感じた今年の傾向を書いておこう。

出展ブースは「体験もの」が特に人気

歩きながら各ブースを見て感じたことは、そのサービスを体験できるものに、来場者は興味を示しているということだった。体験型としては、例えば以下のスタートアップが特に人々の注目を浴びていた。

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自分の希望するヘアカットに応じたサロンを簡単に探せ、予約や支払いができる無料IOSアプリ「SQUIRE」。会場では無料で散髪サービスも。

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ロンドン発の雑誌『The Economist』のブース。同誌では最近の特集記事で博物館とバーチャルリアルを取り上げたことで、「ZenoLive」と共同でバーチャルリアルの世界で架空の博物館体験(約5分)を提供した。

そのほか、毎年各社競って魅力的なノベルティーグッズや菓子、ドリンク(ウィスキー含む)が用意されるが、生花や実用的なトートバッグなども人気を集めていた。

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UrbanStems」はフラワーギフトの急なオーダーにも対応。ニューヨークとワシントンD.C.で展開しており、1時間以内で届けるのが売り。この日は無料で生花を配布、母の日も近いとあって関心を寄せる参加者が多かった。

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ニューヨーク支社を持つ日本発の「Nulab」。ツイートするとTシャツやトートバッグ、お菓子のうまい棒などをもらえるとあり、人垣ができるほどだった。

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自分の住む街で、また旅先で、その道の専門家と繋いでくれ、新しい体験を提供する「LoKi」。なんとこの日にこの場でローンチ!

今年は「Shark Tank」「デモステージ」も新設

今年新設された『Shark Tank』のスペースでは、番組プロデューサーに直接プレゼンできるとあって、異様な盛り上がりをみせた。開場から2時間でプレゼン待ちは200人! 1人(1社)に与えられた時間は1分ほどにも関わらず、それぞれが持参したプレゼン資料をもとに5分越え、10分越えの白熱したプレゼンが繰り広げられていた。

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また、今年から会場内2箇所でデモステージが設けられたのだが、事前登録したスタートアップが前述のカテゴリーごとに登壇し、それぞれ3~5分程度のピッチを行った。この試みは今年が初めてなので去年と比べることはできないが、実生活にリンクしているサービスほど、参加者の興味をそそる傾向にあった。

例えば、記憶に残ったものとして、地下鉄アプリの「Dash! Transit」や、SNSアプリ「Valor Connect」のCEOのピッチだ。

地下鉄やバスなど公共交通機関を賢く乗る(乗り継ぐ)アプリは有料無料を含めて山のようにあるが、多くは時刻表に関するものや駅の構内でうまく乗り継ぎするためのもの。しかし、ニューヨークを例にとると、地下鉄やバスは時刻表通りに来たためしがないと言っても過言ではないほど時間にルーズで有名だ。この場合1本乗り遅れるといつ来るともわからない次の電車を〝永遠に〟待たなければならない。「Dash! Transit」はそんな乗客の不満を解決するサービスとして、昨年ローンチされた。

このアプリの特徴は、スマホのプッシュ通知機能によりアプリを立ち上げることなくリアルタイムの時刻、つまり次の電車が何分後に到着するのかを教えてくれるというもの。地下鉄サービスに不満を持つ多くの人々にとって魅力的なアプリに映った。

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「Dash! Transit」のデモの様子

「Valor Connect」は新しいタイプのSNSアプリだ。アメリカではビジネスの成功の鍵として「It’s not what you know but who you know」(何を知っているかではなく、誰を知っているか)ということわざが有名。つまりこの国では、スキルや経験よりも大切なことはネットワークやコネクションだということだ。しかしネットワークイベントに精を出しても、労力を使うだけで重要な人とうまく繋がれなかった、コミュニケーションできなかったというケースはざら。

「Valor Connect」はアプリ上で、自分の興味や関心に応じて相手を選別し、スワイプするだけでビジネスの鍵となるであろう人物と繋いでくれるというもの。すでに世界中に進出中で、市場ターゲットとして未上陸の日本にも数年以内に進出することは充分考えられる。

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「Valor Connect」のデモの様子

これら特に印象に残った2つのデモは共通点として、それぞれ「あなたは今の交通アプリに満足していますか?」「SNSがたくさんあり過ぎると思いませんか? それぞれをビジネスに有効に活用できていますか?」という疑問をオーディエンスに投げかける形でピッチがスタートした。

人は満たされないものや改善の余地があるものに対して不満を抱えている。生活を便利に豊かにしようと不満なポイントを改善した努力の結晶が、このTechDayに集結したアイデアなのだ。それぞれの新しいサービスが、(できれば無料もしくは低価格で)簡単に使え、便利で多くの消費者に必要とされれば、大ヒットは間違いないだろう。

「ここには近い将来、FacebookやDropboxにとって替わるスタートアップがいるのかもしれない」。世界中から集まった550もの夢や希望に満ちあふれる会場を歩きながら、そう思った。

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