価値あるボットをつくるためのゴールデンルールとは?

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Christine Deakers氏はデータ分析会社Mixpanelのマーケティング部に勤めており、成長するチャットボットムーブメントを研究している。

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via Flickr by “Logan Ingalls“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

F8の壇上に颯爽と現れたMark Zuckerberg氏は、チャットボットを発表した。チャットボットは今まさに盛り上がりつつある。軽やかな足取りでチャットボットをF8の場で発表した。これらは実現に向けて動いている。Facebookの新しいメッセンジャープラットフォームにおける主なツールとしてチャットボットを使えば、顧客向けにパーソナライズされたコミュニケーションと顧客との取引が可能になる。

Facebookはチャットボットの世界で最新最大の取り組みを行っている。SlackやKikが登場して久しいが、Facebookの参入はチャットボットの必然性を示唆するものだ。

約18ヶ月前にボットをローンチした最初のプラットフォームの一つKikは、チャットボットの成功に何が必要かを探るため、デベロッパーやプロジェクトマネージャーと協働してきた。

「メッセンジャーアプリがソーシャルネットワークを凌ぐ世界では、企業はこの新しい領域でデジタルなプレゼンスを拡大していかなければいけません」とKikのデベロッパーエバンジェリストIvar Chan氏は語った。「多くのプロダクトはまだ、メッセンジャーボットがいかにエンゲージメント率、コミュニティ、強力な配信チャネルの構築を促進させるか、十分に気づいているとはいえません」

そのように考えるのはIvar氏だけではない。グロースとプロダクトの専門家たちはこの領域について、同じように考えている。UberのAndrew Chen氏は2月のインタビューでこう語った。「メッセージングがモバイルアプリ配信において次世代プラットフォームを作り出すと思います。」

ボットの魔法とはつまり、摩擦を減らすことである。ボットを使えば欲しいものを手に入れる時間を短くできる。ジョーク、ニュース、テイクアウトの注文や最新の分析報告書のメトリック、なんであろうと。

しかし、この件で今年私が行った研究とこれまで話をしてきたボットメーカーによると、この革命において汎用型ボットが存在しないのは明らかであった。

「メッセンジャーアプリのボットを通じて購入する、理想的な対話型取引の世界にたどり着くには、デベロッパーはどうすればユーザにまた使いたいと思ってもらえる楽しい経験を提供できるか考える必要があります」とIvar氏は語った。

ボットの行動をプログラムするにあたり、共感とユーザ体験が指針となる。Kikが価値あるボットを作るための3つのルールをまずはゴールデンルールから紹介しよう。

1. ボットはすべて、それぞれ違う生き物として取り扱おう

ボットはそれぞれの商品や目的に沿って作られたもので、定められたことまでしかできない。何よりもまず、チームは商品にどのようなボットが適しているのかを知る必要がある。

「ボットは4つのクアドラント(円を4分割したもの)の1つで機能できるのです」とIvar氏は説明する。「X軸はエンゲージメントタイム、Y軸はリピート率を表します。各クアドラントはどのタイプのボットにも当てはまります。」

「あなたの開発するボットが短いエンゲージメントタイムと高いリピート率を求めているのであれば、それはおそらくニュースボットで、毎日ゴシップや情報を配信するものです。」

一方で、ストーリー性のあるコンテンツは長いエンゲージメントタイムと低いリピート率を狙うべきである。ストーリーが終わればユーザが再度閲覧する可能性は低いが、ボットがうまく作用すればユーザを意図した方向に転換できるはずだ。

次に、短いエンゲージメントタイムと低いリピート率のボットは、表現だけではあまり有能でないように思える。しかし、これらはコンサートやイベント用に作られた一度限りのボットとして使うことができる。ライドシェア、eコマース、配送やバンキングボットもこのクアドラントに分類できる。商品とユーザのニーズによるものだ。

「一度きり、数分だけボットを使います。しかし、短いエンゲージメントタイムと低いリピート率のこのクアドラントに属するものが、悪いボットというわけではありません。このクアドラント向けのボットというだけのことです。」

Ivar氏が話してくれたのは、デベロッパーとプロダクトマネージャーが最もワクワクするのは右上のクアドラントだということだ。「誰もが長いエンゲージメントタイムと高いリピート率を求めています。デベロッパーはそれを追い求めます。しかし、まだボット制作は始まったばかりなので、特に商品に関しては何がそのクアドラントに当てはまるのか正確にはわかりません。」

2. 正しい距離感でボットを作る

好きな人に最初に送るテキストメッセージと同様、どこか控えめなボットは最初から馴れ馴れしいボットに比べて、時間をかけて絆を強めていくものだ。

プロダクトマネージャーとデベロッパーは右上のクアドラントを考える上で、2つ目と3つ目のルールも肝に銘じておくべきである。

ホラー映画『インシディアス 序章』のリリースにあわせ、Kikは登場人物の一人であるQuinn Brennerを演じるプロモーションボットを作った。

「Quin Brennerにテキストメッセージを送ると彼女は何が起こっているかヒントを出してくれますが、しばらくすると通常のメッセージによる会話と同様、尻すぼみになります」とIvar氏は語る。「一度では全部体験できず、すべてを知るには数日かかるのです。これはティーンエージャーにとても好評でした。」

このボットの目標は、オーディエンスとサスペンスを演出して映画のチケットを購入してもらうことであった。高いエンゲージメント率もQuinnボットには織り込み済みだ。Kikのユーザは2日間で50~60回Quinnとチャットを行った。ミレニアル世代が毎日テキストメッセージを送るのは67回ということを考えればなかなか驚異的な数字である。Quinnの場合は、少しの忍耐が大きな成果につながった。

人間とボットの交流において適切な頻度というのを導き出すのは難しい。

例えば、フードデリバリーアプリがボットを作ってKikユーザがテイクアウトの注文を送信するとしよう。今夜、彼女は中華料理を食べたがっている。人間とボットのデリケートなバランスを考慮して、Foodbotはカンパオチキンの到着予定時間をチャット送信するが、Foodbotはその後毎日デリバリーオプションのリマインダーを送るようなことはしない。

代わりに、Foodbotはユーザから来るように仕向ける。例えば、一週間後のナショナルパンケーキデーに向けてIHOP(パンケーキショップチェーン)で使える割引券を提供するなど、何かお祝いする理由があるまでユーザへの直接連絡は控えるのだ。

ボットが商品とオーディエンスにとって適切な距離を保っていれば、ユーザを取り込むことができる。これは最後のルールにつながる。

3. ボットはエンゲージメントを最優先すべき

エンゲージメントを最優先すれば、コミュニティは成長し、コンバージョン率も自然と上がる。

Kikとボットを作る際、コメディウェブサイトのFunny Or Dieはフォロワーを笑わせ続けることができれば彼らが離れていくことはないとわかっていた。そのため同サイトは好循環を生み出せるようエンゲージメントに集中することにしたのだ。広告よりも笑いがエンゲージメントとコミュニティ成長率に貢献した。

Funny Or Dieは、一般的なチャターは各セッションで25個のコンテンツ、平均3.5分エンゲージすることを発見した。結果、ネットではKikを取り巻くFunny Or Die現象が起こった。

Kikのチャターが最新のアプリ内GIF動画をシェアすると、その動画を見た仲間が面白いとただ思っただけでなく、多くの人がFunny Or Dieを直接フォローし始めた。

「150万チャターの獲得に3ヶ月ほどかかりました」と同社マーケティング配信部門VPのPatrick Starzan氏は語った。「ソーシャルネットワークは同人数に達するまで2~3年かかりましたけどね。」

ユーザのエンゲージメントを最優先するコミュニティを作ることで、Funny Or Dieも高いコンバージョン率を得ることができた。

「Kikチャターに通常新しい動画リンクつきのブロードキャストメッセージを送信する際のコンバージョン率は最高10%で、これは価値ある数字です」とStarzan氏は語った。

Funny or DieはFacebookやTwitterといったソーシャルネットワークで毎日5~6回コンテンツを送り出しているが、コンバージョン率はいまだに低い。

ソーシャルネットワークに比べ、ボットは小さなことから多くを生み出すのが得意だ。企業はメッセンジャーアプリでボットを使ったスパムを顧客に送るべきではない。むしろ、メッセンジャーボットはブランドや商品よりも顧客を喜ばせる可能性を秘めている。

プロダクトマネージャーとデベロッパーはボットを使った実験に抵抗があるかもしれないが、Kikが80社以上の提携先を得る成功を収めているところを見ると、先行きはかなり明るいだろう。

この記事は以前のMixpanelブログ内容を改変し、更新したものである。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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