LinkedInはどこでつまづいたのかーーそして、復活への道のりは?

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この数ヶ月、テクノロジー関連メディアからWall Streetの情報通まで、LinkedInの評価に関する議論で盛り上がっている。Morgan Stanleyのアナリストによると、「予想以上の減速が続いたこと、経営ミスがあったことで株価は一定の値幅で上下し続ける(最善のシナリオ)または弊社の下落株評価(60米ドル/株)に近づくものと思われます。」

LinkedInのネットワークの仕組みはスパムエンジンに過ぎないという人もいる。Morgan Stanleyのように、LyndaやSales NavigatorといったLinkedInの比較的新しい商品による成長見込みが過大評価されていたという者もいる。

もちろん、テック業界はプロダクトデザインやネットワーク効果が原因だといい、大手金融機関は「経営ミス」と決めつけるのも無理はない。

だが、本当にそんなに単純なことだろうか? LinkedInのような猛者が突如経営能力を失うなどとは、にわかに信じがたい。LinkedInの広告やリクルートツールの手直しは必要だろうが、それだけで会社の価値が半値になる理由にはなり得ない。実際、LinkedInは広告網で大きな成功を収めてきた。昨年は広告による収入が20%アップしている。では、いったい何が起きているのだろう?

ソーシャルネットワークと企業ソフトウェアになじみのある人ならわかるだろう。LinkedInのビジネスモデルには矛盾点がある。

LinkedInは法人向けソフトウェア会社の皮をかぶったソーシャルネットワークだ。この2つのモデルが文字通り会社を引き裂き、ユーザーもクライアント企業も遠ざけている。それはソーシャルネットワークにおける囲い込みがもたらす当然の結果であり、アクセスを厳重にすれば関係性が解消してしまう。

法人向け施策を探る

巨大なソーシャルネットワークであることと、法人向けソフトウェア会社であることは両立できない。前者はオープンプラットフォームとサードパーティーによる開発に、後者は計測可能な投資利益率を求めるビジネスに対して独占的にソフトウェアを販売するモデルに依存するものだ。

昨年、LinkedInは自身のAPIを閉鎖し、競合とみなした法人向けソフトウェア開発者を締め出し、顧客の選択肢を制限し、法人顧客のニーズを満たす責任のすべてを自らに押し付けることになった。さらに悪いことに、「競争力のあるサービス」の定義を広く応用した。結果、LinkedInが開発する意図も能力もないソリューションや特化された能力まで囲いの外へ追いやってしまったのだ。

これこそまさに、同社が法人ソフトウェアへの移行を始めた瞬間だった。そして、その戦略はすでに裏目に出始めていた。この動きにより、Salesforceのようなサードパーティー開発からSales Navigatorのようなツールのユーザーまで多くの人を宙ぶらりんにしてしまった。

Twitterでも同様のケースがあり、次に何が起こるのかは予想がつく

LinkedInの多芸は無芸となり果てた。巨大ソーシャルネットワークであり、広告プラットフォームであり、リクルートテクノロジーソリューションプロバイダーであり、販売促進ツールであり、オンライントレーニングプラットフォームである―スタックなしソフトウェアの時代におけるまぎれもないスタック販売者なのだ。

最も重要なのは、スタックを作る代わりに一つずつ買収してきたということだ。Bizoの評価減は一例に過ぎない。アナリストは既にLinkedIn最大の買収であるLyndaがマーケットリーダーであるにもかかわらず、CEOのJeff Weiner氏が拡張と統合のために「予想以上に巨大な投資が必要」と述べたことを危惧している。

さほど遠くない昔にLinkedInがのし上がった真骨頂に戻ってもいい頃ではないだろうか。

方向性を正す

LinkedInは得意なことに集中し、ソーシャルネットワークビジネスモデルを再活性させて成長を刺激する必要がある。それは広告販売とリクルートソリューション、LinkedInのコアビジネスから始まるのだ。

広告は成長著しく、Mary Meeker氏によると特にモバイル広告は毎年34%伸びている。

リクルートソリューションの規模やネットワークの方向性はLinkeInの強みだ。さらに重要なのは、ビジネス顧客と個人ユーザーが一堂に会していること。企業は人を、人は職を求めている。

LinkedIn独自の調査では、「需要の多い人材プールで候補者を探すこと」はリクルーターにとって今年最も困難であることがわかった。LinkedInのほかに誰がこの問題をよりよく解決できるだろうか? つまり、LinkedInの人材ソリューションは最も大きな収益性を持っているのだ。

しかし、独自のAPIを再度開放、それも以前より広範囲で開放しない限り、同社の長期的持続可能性に展望はない。APIへのアクセスをマネタイズすることでLinkedInは休止状態の、しかし利益性の高い収入の流れを起こすことができる。開発企業は世界最大のプロフェッショナルネットワークデータとそれにアクセスできることの価値を認識しているため喜んでお金を払うはずだ。LinkedInは、法人に注力する会社に、高い価値のあるレイヤーをそのネットワークの上位に築くことを任せて、顧客には選択肢、専門性、高い品質を提供し、健全な成長への道を進めばよい。

どのマネタイズモデルも成功するであろうし、実質LinkedInにとってはどれもリスクをとることなく持続可能で高成長な法人からの収入を得る方法である。偶然にも、アナリストが求めていることと全く同じだ。

LinkedInが永久にプロフェッショナルソーシャルネットワークに君臨すると思ってはいけない。すでに代替的ソリューションへの需要も競合相手も現れている。しかし、LinkedInの特性であり新たな成長への鍵となるのは、その膨大なソーシャルグラフである。その価値を活用するには、APIを開放して開発者に委ねることだ。

難しいことじゃない。古き良き資本主義の応用だ。ベンダー、顧客と提携先が揃っていれば、誰もが優良なエコシステムの恩恵を受けることができる。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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