疲れていることは褒め称えられることでもなんでもない

Jason-Fried-profileJason Friedさんは、BasecampのファウンダーでCEOです。「Getting Real」「Remote」、そしてニューヨーク・タイムズのベストセラーで日本でも話題になった「REWORK」(邦題:「小さなチーム、大きな仕事」)の著者でもあります。本稿は、もともとIncに投稿され、Mediumにも再掲された記事をご本人から許可を得て翻訳したものです。Twitterは、@jasonfriedでフォローできます。


image via. Flickr
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カンファレンスで登壇する時、僕はいつも他の講演にも足を運ぶようにしている。後方に立って耳を澄まし、観察し、その場の空気を感じ取るようにしている。

最近、気がかりなことをよく耳にする。起業家の多くが寝不足であることを自慢し、その1日16時間という長い労働時間について力説している。いかなる代償を払っても、ひたすらハッスルすることでしか前進できないのだと。やるべきことは底を尽きないのだから、休みなんて糞食らえだと彼らは言う。

これはビジネス界における最も有害なメッセージの一つだと思う。継続された疲労は、通過儀礼なんかじゃない。それは、愚かさの象徴だ。文字通り、愚かでしかない。自然な睡眠時間に満たない日が続くごとにIQテストのスコアが低下することは科学者も指摘する通りだ。その影響が誰の目にも明らかになるまで、さほど時間はかからない。

1日16時間を基本に働いている人たちは、疲労困憊している。彼らは、その疲れが自分の仕事ぶりや成果に悪影響を及ぼしていることに気づくこともできないほど疲れ切っている。

寝不足であることは、ただ自分の健康やクリエイティビティに妥協を生むだけに留まらない。それは、君の周囲の人たちにも影響する。十分に眠れていない時、君の忍耐力もまた不十分になる。人に対して普段よりぶしつけになり、相手への忍耐や理解力も欠けてしまう。何かに対して長期間にわたって注意を向けたり関わったりすることを難しくする。

同様に、寝不足な管理者もその管理能力は劣ってしまう。それは、単に部下に対して酷い模範を示すことになるだけではない。どうせ彼らを無感覚状態に陥れてしまうなら、そもそもなぜ素晴らしいスタッフを採用する必要があるのだろう?

長時間働くことの目的がより多くの仕事を終わらせることなら、そして君が仕事の質を大切にするなら、寝不足が続くことを正当化などできないはずだ。そんなことをしようとするのは、疲れ切って頭が働いていない人だけだろう。

長時間働き詰めている人からは、こんな言い訳を耳にする。事業を立ち上げたばかりの頃は何もかもを注ぎ込まなければいけない。だから仕方がないんだ、と。その気持ちはよくわかる。その主張にはたしかに一理ある。

でも、僕が繰り返し目にしてきたのは、人が一度始めた無茶な働き方をやめることはないということだ。僕たちは習慣の生き物だ。何かを始めた時にしていたことは、その後も継続される傾向がある。最初に長時間働いていて、それ以外のやり方を知らない時、君はそれが唯一の道であると思い込んでしまう。このパータンに陥って燃え尽きてしまった起業家を何人も見てきた。

だから、睡眠をたくさんとることはすごく重要だ。特に、君が自分の習慣をつくろうとしている時は。十分に寝ていると、出だしも好調になり、思考力も高まり、より素晴らしい同僚や上司になることができる。睡眠はクリエイティビティを発揮することに大いに役立ってくれる。睡眠は課題解決にも欠かせない。君は、仕事におけるクリエイティビティや課題解決を増やしたいんじゃなかったか?ーーそれを減らすのではなく。

君の脳は夜も活動している。寝ている間も、日中手が回らなかったことを処理しているのだ。目覚めても目の下にクマがある状態と、新しいソリューションと共に目覚めるのとでは、君はどちらを選ぶ?

たしかに、緊急事態が発生すれば残業が必要になることもある。また、どうしても動かせない期日もあるし、最後の踏ん張りが必要なこともある。それはそれでいい。その疲労は継続されるものではないはずだから。それは一時的なものだから。でもあくまでそれは例外で、デフォルトであってはいけない。

長い目で見ると、睡眠より仕事のほうが重要だなんてことは決してない。もし、君が睡眠の重要性を確信できないでいるのなら、これを覚えておくといい。人の命が尽きる速さは、食料不足よりも睡眠不足のほうが早いことを。

1日の12時間目、13時間目、14時間目、15時間目に解決しなければいけない問題など、一握りに限られる。ほぼすべてのことは、次の日の朝まで待つことができる。

おやすみ、そしてぐっすり寝てほしい。

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ところで、快適な睡眠のために、AetnaのCEOは従業員に最大500ドルを支払っている。そこには科学的根拠に基づいた理由がある。(TW、リンクをどうもありがとう)

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Basecampでは、仕事は一週間に40時間で十分だと思っている。僕たちはみんなに毎晩たくさんの睡眠時間をとるように勧めている。

*この記事は、2016年4月の雑誌「Inc.」に掲載されたものです。

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