福岡拠点、インドネシアからはじめる東南アジアのEC環境整備スタートアップ「anect」

福岡を拠点に活動する二人のメディア人、市來孝人小松里紗による福岡現地取材シリーズ。“福岡のスタートアップ事情に興味のある人”に向けて、現地のキーパーソンの生の声をTHE BRIDGEを通して発信していきます。

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今回取り上げるのはanect 。「anect」という社名は「Asia」+「Connect」が由来。この名前には、アジアの国々を繋ぐような仕事をしたいという想いが込められています。

同社は、Eコマースアプリ「toko-toko」を開発し、現在はインドネシアで展開しています。今回は、同社代表取締役社長 木村一郎さんに「toko-toko」開発の狙いと、今後の展開を伺いました。

Instagramが主流の現地の”ソーシャルコマース”市場に切り込む

–まず、「toko-toko」アプリの特徴について教えてください。

木村:「toko-toko」はいわゆるCtoCのマーケットプレイスアプリです。出品者はスマートフォンのカメラを使い簡単に出品できる点、銀行/Alfamart(インドネシアのコンビニエンスストア)/7-Eleven で支払いが出来る点、一度お金を事務局に支払い、出品者と購入者の双方がお互いの評価をすると出品者に支払われる点が特徴です。インドネシアに住んでいる、商品を「売りたい人」と「買いたい人」をマッチングしています。

–どういった理由から、「toko-toko」のようなサービスを開発しようと思われたのでしょうか?

木村:日本にいるとアマゾンや楽天をはじめ、いわゆるBtoCであったり、BtoBtoCのちゃんとした事業者がものを売ることが主流ですが、東南アジアでは個人が個人に対して売るCtoCが主流で、取引件数の5割超と言われています(参考リンク)。そのCtoCの部分で、支払いをしたにも関わらず商品が届かないケースや、偽物が送られてくるケースなど、よく詐欺が起きる、と。

現地でも今スマートフォンが流行っていて、”ソーシャルコマース”と呼ばれているのですが、ソーシャルコマースのアプリを開発して環境を整備することで、その課題を解決出来ればと思いました。

–「toko-toko」の開発で工夫された点はありますか?

木村:現地のソーシャルコマースはInstagramが主流で、Instagramに出展する商品の写真をアップするという手法が多いです。そのため、似たようなUIにしたり、ハッシュタグで商品を探せるようにして、Instagramに慣れ親しんだユーザーの移行を目論んでいます。また、現地の商習慣に合わせ、買い手が売り手の設定した価格より安い価格で買いたい時に価格を逆オファー出来る機能も提供しています。さらに、現地の人たちのやりとりはLINEやWhatsAppのようなメッセンジャーアプリで行われているので、「toko-toko」内のメッセージ画面上で売買を最後まで進めていけるようにするなど、機能の配置にもこだわっています。

–現在、アプリはAndroidのみでの提供ですが、この理由は何でしょうか?

木村:現地のニーズに合わせています。現地ではAndroidが6割くらい、BlackBerryが3割くらい、iOSは1割弱ですね。ただBlackBerryのOSもAndroidに切り替えるという発表があったので、実質9割くらいがAndroidになるようです。

日本発の品質の高いアプリで東南アジアに勝負をかける

元々、エンジニア出身の木村さんは「東南アジアは今発展しているからこそ、社会的な課題も多いはず。技術を使って何か解決したい」という思いでanectを設立されています。

–東南アジアに関心を持ったきっかけは何ですか?

木村:学生時代からよく海外を訪れていたのですが、東南アジアでの経験が自分の価値観を変えてくれました。その後ビジネスを始めるにあたっては現地の方の人柄や現在の発展ぶりなどのビジネス環境を総合して考えた時にインドネシアが最適と考え、「toko-toko」展開をスタートさせました。

–インドネシアの次にターゲットとしている国はありますか?

木村:商習慣が近いマレーシアですね。また、インドネシア語はもともとマレー語から発展している言語という点もあり、マレーシアでもインドネシア語を話せる人は多いです。それでいて、一人当たりのGDPはマレーシアのほうがかなり高いので。ただ、まずはインドネシア国内での100万ダウンロードを目標に、インドネシアでの展開を強化しています。

–今後も開発は日本、福岡で行うのでしょうか?

木村:拠点は引き続き福岡を想定しています。現地で展開という選択肢もありますが、やはり日本のアプリのクオリティの高さは世界的にもかなりのものだと思います。日本にいるからこそ、そのクオリティを日々体感し、開発に活かすことが出来ると考えています。エンジニアも現地での採用より日本での採用を考えていますね。福岡はエンジニアの採用がしやすい土地柄でもありますから、その点を活かしていきたいです。

–ちなみに、福岡だからこその良さとして感じている面はありますか?

木村:支援者がすごく多いですね。かつ前のめりで支援してくれる、その雰囲気は福岡ならではだと思います。もちろんそれに甘えてはいけないですが、そういった環境の中でやらせて頂けるのは良いことですね。

「東南アジアのプロモーション事情に詳しい人材、あるいはそれを学ぼうという意欲のある方を求めています」(木村さん)

と、今後はマーケターの採用を強化していきたいとのこと。

また先月末には現地でのBlackBerry端末の根強い人気もあり、BlackBerry World(BlackBerry端末のためのアプリストア)でも「toko-toko」アプリをリリース。今後も、現地の商習慣に寄り添った展開が期待出来そうです。

聞き手・執筆:小松里紗、構成:市來孝人、写真:松山タカヨシ

プロフィール

13231181_1053790794692763_798708717_n小松里紗:「ad:tech tokyo 2012」に「Club売れるネット広告つくーる」のキャストとして参加したことがきっかけでWEB業界へ。福岡のITベンチャー・株式会社エニセンスを経て、WEBメディアの立ち上げや運用に携わりながら福岡で会員制バー「Bar Sumica」を経営。WEBや飲食業にとどまらず、MCやライターとしてもマルチに活動。
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hiro市來孝人:メディアプランナー/プロデューサー。PR会社勤務の後独立し「ラジオを通し地域を盛り上がる試みをしたい」と考え、「福岡移住計画ラジオ」を企画し自ら出演(〜2015年9月)。ラジオをきっかけに繋がった福岡の方々の声を、さらにWEBを通し広く・定期的に伝えていくべく当連載を企画。「SENSORS」「AdGang」等でも編集・執筆を担当。
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