美容師のためのAirbnb、フリーの美容師が面貸し美容室を見つけて予約までできる「AIR SALON」

by Yukari Mitsuhashi Yukari Mitsuhashi on 2016.6.24

24時間365日休まずサービスが稼働するIT業界の労働環境は過酷だと言われますが、ほんの短時間接しただけでそれを上回る大変さを感じさせる職業に美容師があります。店舗の営業時間終了後や美容院の定休日にも研修などがあり、月に数日休めればいいほう。忙しく働いた分だけ収入になるのかというとそうでもなく、30歳美容師の平均年収は約285万円にとどまります(厚生労働省による平成27年賃金構造基本統計調査参照)。

そんな現状を打破するために、将来は自分のお店を持つことを目指す美容師が後を絶ちません。独り立ちするためには、経験と実力があってお客さんが付いて来ることが条件ですが、まとまった資金を必要とする「個人開業」以外の形が増えているようです。それは、フリーランスの美容師として「面貸し」を活用するもの。面貸しは、美容院の空いている席を借りて仕事をすること。美容院にとっても、稼働していない席を有効に活用できるため、双方にWIN-WINな関係が生まれます。

面貸し美容室のシェアリングサービス

フリースタイリストのためのサロンシェアサービス「Air Salon」
フリースタイリストのためのサロンシェアサービス「AIR SALON」

そんな両者のマッチングを行うのが、美容業界版 Airbnbとも言える「AIR SALON」です。フリーの美容師は、スポットで必要な日時の面貸し美容室の空席を探すことができます。2015年11月にまずβ版をリリースし、今年7月初旬に正式オープンを予定しています。

個人経営の美容院を中心に、現在60店舗ほどが掲載されています。β運用期間中の累計予約回数は、数百回以上。予約は1枠30分で、予約した時間分の手数料が発生する仕組み。手数料はというと、最初の30分は200円、それ以降は30分ごと100円を美容院から徴収するモデルです。

Googleなどで「面貸し」というキーワードで検索すると、「東京」「大阪」などエリアと共に検索されていることがわかります。従来、こうした面貸し美容室は、検索したり電話をかけたりすることで探す方法が一般的でした。中には、希望するエリアの美容院を自分の足で回る美容師もいるようで、どちらにしてもアナログな作業です。

AIR SALONなら面貸し美容院の情報が一箇所に集まり、また予約までオンラインで完結するため、一度利用した美容師のリピート率は高い水準を保っています。

母親に起因する美容業界へのこだわり

Airsalon 代表取締役の阿部 竜作さん(右)と 執行役員の魚住直輝さん(左)
Airsalon 代表取締役の阿部 竜作さん(右)と 執行役員の魚住直輝さん(左)

AIR SALONを立ち上げたのは、大阪出身の起業家 阿部竜作さん。新卒で入社したGREE(グリー)ではソーシャルゲームの運用に携わり、社内の新規事業コンテストで美容業界関連の案が最後まで残ったものの、3ヶ月以内のリリースという条件に間に合わず立ち上げを断念。その後、転職先のmixi(ミクシィ)でカットモデルや美容院のお得な情報がわかる「ミニモ(minimo)」に携わった後に、AIR SALONを起業しました。

会社員勤めの頃から、阿部さんの美容業界への強いこだわりが感じられます。それには、美容師だった母親の影響が。阿部さんが大学生になる頃に母子家庭になり、美容師をしていた母親が養ってくれました。月の休みはたった2日なのにやっと生活していける程度の手取りにしかならず、辛そうに働く母親の姿を見てきました。美容業界や美容師というキャリアの現状を疑問視せずにはいられませんでした。

「独立しないとまともに稼げない美容業界の構造が問題だと感じました。美容業界の市場規模は1.5兆円で横ばいが続いていますが、店舗の数は右肩上がりで増えています。ところが、1店舗の売り上げは年間で600万円。これでは、美容師という職業が厳しいのは当然です。そのひとつのソリューションになればと、AIR SALONを立ち上げました」。(阿部竜作さん)

店舗を持たない独立を後押し

前述の通り、面貸しが可能な美容院を探す方法はこれまでオフラインが一般的でした。そもそもオンラインに情報が存在しないことのほうが多いため、他に手段がないのです。古い商慣習が続く業界の中で、インターネットをフルに活用できていないフリーランス美容師をAIR SALONがサポートします。
阿部さんがオンライン事業にこだわるのは、インターネットに救われたご自身の経験に基づいています。少しでも早く生活費を稼ぐため、大学を断念して高卒で家電量販店に入社することが決まっていましたが、短期目的のために大学を諦めていいのか悩んだ挙句、家族に内緒で大学の入学手続きを進めていたんだそう。

「手続きを進めるためには、まず50万円の前金が必要でした。何か手段がないものかとYahoo!知恵袋で質問してみると、大阪の区役所では個人が30万円まで借りられると教えてくれる人がいて。結局、残りの額は親族に借りて無事に大学に進学することができました。インターネットでこの情報にたどり着いていなければ、今の自分はいません」。(阿部竜作さん)

現在、AIR SALONは阿部さんを含む主に3人のチームによって運営されています。目下注力するのは、面貸しの掲載店舗を増やすこと。また、「エリア名 面貸し」といった検索での流入が増えるようにSEO対策にも力を入れていきます。さらには、美容師のための管理ツールを提供していく予定も。まずは美容師に特化して展開し、将来的にはネイリストやマッサージ師など他業界への横展開も検討しているとのこと。

まだ小規模にとどまるフリーランス美容師のマーケットですが、AIR SALONの存在が「店舗を持たずに独立する」という働き方をより多くの美容師にとって現実的な選択肢にしてくれるかもしれません。

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