アジアの人気ゲームを欧米に展開するベルリンの「Aeria Games」、独自ノウハウで成長中

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Above: Manuel Figeac (left) and Tom Nichols of Aeria Games in Berlin. Image Credit: Dean Takahashi
上: ベルリンのAeria GamesのManuel Figeac氏 (左) と Tom Nichols氏
Image Credit: Dean Takahashi

Aeria Gamesについて聞いたことがある人は少ないかもしれないが、同社はベルリンで300人規模のモバイル/オンラインゲームパブリッシャーに成長している企業である。そのビジネスモデルは一つだけ、アジアの人気ゲームを欧米に展開することだ。
Aeria Gamesは7年にわたりこのビジネスを続けており、この戦略により、多くのゲーム会社が苦戦を強いられている時にも成長を続けている。

「一つのアイデアとして7年前にスタートしたことですが、私たちはそれ以来ずっと続けています」。

Aeria GamesのCOO、Tom Nichols氏はGamesBeatのインタビューでこう語る。

「始めたばかりの頃は、欧米のゲーム市場には無料でプレイできる良いゲームがあまりありませんでしたが、アジアにはたくさんありました。ですので私たちはそういったゲームを欧米に広めていったのです」。

Above: Aeria Games headquarters in Berlin Image Credit: Aeria Games
上: ベルリンのAeria Games本社
Image Credit: Aeria Games

Aeriaの成功の大部分はウェブやPCのオンラインゲームからきているが、同社はさらに、全世界で340億米ドル規模に成長したモバイルゲームにも参入しようとしている。幸運なことに、韓国、中国、台湾、日本といった市場にはモバイルゲームで多くのヒット作がある。同社はこれらの市場のゲーム企業と提携し、ヒット作をヨーロッパと北米に導入し、成功を狙っている。

Aeriaはおよそ3年前からモバイルゲーム市場に参入しており、導入第一作であるImmortalisは日本のゲームデベロッパーによるものだ。Immortalisは成功し、Aeriaは定期的にこのようなゲームをローンチしている。今年、同社はモバイルとPC向けに6作のゲームをローンチすることができた。ほとんどのゲームが、長時間プレイするハードコアまたは中庸ゲーマー市場を狙っており、メインのターゲットは25~35歳の男性である。

東洋と西洋のグラフィックのスタイルは大きく異なっており、Aeriaはゲームのグラフィックに大きな改変を加える必要があった。そのため同社はベルリンにこのような大規模の社内ゲームスタジオを設立する必要があった。Outsparkのようなゲームパブリッシャーは同様の成功を収めるべく何年も挑戦しているが、同社はどちらかというとヨーロッパより北米をターゲットにしている。

Above: Aeria Games headquarters in Berlin Image Credit: Aeria Games
上: ベルリンのAeria Games本社
Image Credit: Aeria Games

「ゲームを英訳するのは最初のステップです」とAeria社内スタジオVPのManuel Figeac氏はGamesBeatのインタビューで語っている。「ほとんどのゲームは国際化を前提に作られてはいません。私たちは異なる言語・異なる市場にゲームをリリースするために手直しする必要がありました。フランス語、イタリア語、ドイツ語を追加する必要があります」。

同社最大のヒット作の一つにあげられるAura Kingdomは、台湾のゲームデベロッパーX-LegendによるPC向けオンラインファンタジーRPGである。Aeriaは同タイトルを2014年初頭にリリースし、アニメファンの間で大ヒットしている。このヒットにより、X-LegendはAeriaに対してゲームの欧米展開を何度も依頼している。

Aeriaはまた、日本のNexonがリリースしたオンラインファンタジーRPG、Shaiya(シャイヤ)でもヒットを記録した。このゲームは7年前にリリースされたものだが、今でもオンラインで人気を博している。

上: ベルリンのAeria Games本社 Image Credit: Aeria Games
上: ベルリンのAeria Games本社
Image Credit: Aeria Games

「現在私たちは面白いモバイルゲームを扱っています」とNichols氏は述べている。「弊社は中国デベロッパーによるリアルタイム戦略ゲーム、Dawn of Godsを数ヶ月前にローンチしました。グラフィックのスタイルを変更し、時にはストーリーを変更することもあります。このゲームのヒーローはアジア人のルックスで、建物は曲線屋根、ストーリーは三国志に基づいていました。私たちはこれを古代ギリシャ、ノルディック、そしてエジプト神話に変更しました。ストーリーに登場する神々とルックアンドフィールを変え、成功を収めています」。

ドイツのメディア企業ProSiebenSat.1 Mediaの傘下にあるAeriaはこれを「ポート・アンド・パブリッシュ(移植と販売)」と呼ぶ。多くの作業を伴うように聞こえるだろうが、実際そうである。Aeriaは現在、4つのプロジェクトを同時並行で進めることができる。

「人は私たちがどんな特別なことをしているのか聞いてきます」とFigeac氏は述べる。「PCゲーム市場では、一部のゲームタイトルをアジアから欧米向けに移植・展開することは可能です。しかし、モバイルゲームにおいては両者はまったく異なる市場なのです。私たちはゲームをある市場から別の市場に移植することに独自の強みを持っています。アジアのゲームを何も変更せずに欧米で販売するだけではまったく上手くいきません。アジアのゲームのストーリーやテーマと共鳴する欧米文化の類似点を模索しているのです」。

この作業のためには多くの種類のスタッフを必要とする。Aeria社員のほとんど全員がベルリンにいるが、同社はきわめて国際的な企業であり、44ヶ国からなる従業員を抱えている。Nichols氏は以前Sega、Atari、Turbine、LucasArtsでマーケティングや役員を務めており、数年前に北米でAeriaに加わった。

同社は今も社員を増やし、新しいゲームに業務拡張している。4月、Bless Onlineを北米とヨーロッパ向けに移植・展開すると発表した。6年を超える開発期間を要したBlessは、Neowiz Gamesによる超大規模なマルチプレイヤーのオンラインファンタジーRPGで、同タイトルには120万行以上のダイアログ(会話)と10種類の種族が登場する。Aeriaは北米版の来年のローンチを目指している。これはAeriaがそれほど多くを変更しないタイトルの一つだ。Blessには250人のプレイヤーが250人と相対してバトルできる巨大なマップが複数ある。

「このような世界観に没頭するゲーマーは今でも多数います」とNichols氏は言う。「このタイトルはUnreal Engineで作成され、見た目は素晴らしいです。同タイトルのライセンスを得ることができて私たちは大変嬉しく思います。MMO(多人数同時参加型オンラインゲーム)市場は年々変わってきており、多くの人が携帯電話でプレイするようになっています。しかし、ゲームの世界にどっぷりハマれるインタラクティブ没入型ゲームを好むプレイヤーは今でも数多く存在するのです」。

これは現在作業中の多くのゲームの一つにすぎない。

「弊社は8タイトルを同時に作業できるように体制を整えています」とNichols氏は述べる。

「現在弊社はPCゲーム1~2タイトル、モバイルゲーム3~4タイトルのおよそ6タイトルを1年で手がけることが可能です」。

多くのゲームタイトルを手がけていながら、Aeriaはそれほど知名度が高くはない。つまり同社は、他の多くのモバイル/オンラインゲーム会社同様、ユーザ獲得のために費用を投じなければならない。しかし同社の親会社はドイツの一大メディア企業であり、複数のテレビ局ネットワークを保有している。同社はまた、買収により成長することをためらわない。2012年にAeriaはGamepotと合併し、2014年にはProsiebenSat.1 Mediaに買収されている。

「弊社はドイツでコスト効率良くテレビ広告を打つことができます」とNichols氏は言う。

「これはドイツで大きな効果がありました。私たちの戦略はビジネス上のリスクを大きく減らしています」。

またFigeac氏は「弊社はまた、他の地域ですでに成功しているゲームに賭けています。この戦略が上手くいくという手ごたえはこれまで以上にあります。リテンション(顧客が継続してくれる率)は高く、プレイヤーはゲームでお金を使ってくれるでしょう。これは何度も証明されています」とも語っている。

上:Dawn of the Gods Image Credit: Aeria Games
上:Dawn of the Gods
Image Credit: Aeria Games

「私たちが手がけたゲームについて、それほど多くは知られていないと思います」とFigeac氏は言う。

「しかし私たちはそれを変えていきたいのです」とNichols氏は語った。

上: ベルリンのAeria Games本社
上: ベルリンのAeria Games本社
Image Credit: Aeria Games

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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