<ピックアップ>Former NASA chief unveils $100 million neural chip maker KnuEdge
NASAの元長官Daniel Goldin氏が2005年に創業した「KnuEdge」が10年以上のステルス期間を経て、ようやくその製品を世に発表した。「KnuEdge」はこれまでに既に1億ドルを調達しており、データセンターをより効率的にする「ニューラルチップ」の開発のために長い時が費やされてきた。この「ニューラルチップ」は脳のように機能するため、コスト・パワーの両面で従来のチップよりも効率的だという。
これまで半導体コンピュータの基本アーキテクチャであったノイマン型コンピュータの制限を突破する試みとしては、IBMもまたニューラルネットを活用した新しいコンピュータの開発に取組んでいる。Goldin氏のKnuEdgeも一見IBMの試みに似ているように見えるが、そのアプローチは大きく異なるとVentureBeatの記事は指摘している。
VentureBeatのインタビューでは、Goldin氏は同社が既に2000万ドルの収益を上げており、航空宇宙産業、銀行、ヘルスケア、接客産業、保険産業といった分野でハイパースケールコンピューティングに取り組む企業と積極的に関わっていると答えている。
「すべては火星のミッションからスタートしました」とGoldin氏は語る。遡ること2000年の頃、宇宙船をコントロールする際の時間遅延があまりに長いと彼は感じていた。その際、火星プロジェクトに必要なのはテクノロジーを限界まで追求するソフトウェアで、それには何千万行ものコードが要することが分かった。
その実現にはあまりに費用がかかり過ぎ、国が賄うことはできないという結論に至ったGoldin氏は自ら会社を立ち上げる決意をし、こうして KnuEdgeが誕生した。名前は明かされていないが、複数のエンジェル投資家からも資金を集めた。
KnuEdgeのチップは大きなプラットフォームの一部に過ぎない。同社はKnuVerseという、軍レベルの声認識と認証技術で、次世代コンピューティングにおいて用いられるであろう声インターフェイスを解読する技術も開発している。人間の声を用いた特許付きの認証技術であり、ノイズが非常に多い環境でも認証可能であるという。コンピュータ、ウェブ・モバイルアプリ、IoTデバイスに対して、数語を語りかけるだけで認証が可能とのこと。
さらに、KnuPathというチップも発表した。一つのチップに256個のプロセッサコアを搭載しており、各コア同士が即時につながることが可能であるため、マルチコアチップが抱える大きな課題の一つを解決できるという。このチップは最大で51万2000のデバイスに接続することが可能で、最も負荷の高いコンピューティング環境においても、システムが動作することを可能にする。
このチップは、人間の脳が小さいパワーで計算処理をする生物学的な理論に則って開発されている。そのベースとなっているのは、Goldin氏が名付けた「希少マトリックス異種機械学習アルゴリズム(sparse matrix heterogeneous machine learning algorithms)」というアルゴリズムだ。C++ソフトウェアが動作し、プログラマーはそれぞれのコアに異なるアルゴリズムをプログラムして、同時に動作させることができる。Goldin氏は次のように説明する。
人間の脳には数千億ものニューロンがあり、各ニューロンが少なくとも1万から10万のニューロンにつながっています。脳は世界で最もエネルギー効率が良く、パワフルなコンピュータなのです。これこそ、私たちが使っている比喩です。
KnuEdge社は現在100名の従業員がいるが、ほぼ全てのことをアウトソースしているという。今年の秋冬か来年はじめには、新たに資金を調達する計画もあるそうだ。
via VentureBeat
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