日経FinTechがフィンテック専門カンファレンスを初開催——ブロックチェーン・コンソーシアム主催のR3、メガバンク3行がパネル登壇

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2016.6.24

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本稿は、Nikkei FinTech Conference 2016 の取材の一部である。

日本を代表するフィンテック・メディアである「日経FinTech」は24日、創刊後初となる専門カンファレンス「Nikkei FinTech Conference 2016」を東京で開催し、政府や金融当局・銀行や金融サービス会社・フィンテックスタートアップが一堂に会した。

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R3 Tim Swanson 氏

カンファレンスの冒頭には、世界40以上の金融機関が参加する「ブロックチェーン・コンソーシアム」を主催するアメリカのスタートアップ R3 CEV のマーケットリサーチ局長 Tim Swanson 氏が登壇した。Swanson 氏は、世界的にブロックチェーンに対する期待が高まっているのとは対照的に、大企業が本格的に導入可能なブロックチェーン・ソリューションが、世の中にまだ現れていないことを指摘。一方、R3 ではブロックチェーンを利用した「分散型元帳テクノロジー(DLT;Distributed Ledger Technology)」を推進事例を紹介した。

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従来の銀行システムでは、銀行毎の中央化されたしくみで預貯金などに関する記録を保持しており、銀行や国境を越えた送金などの取引では、SWIFT や全銀などの銀行間システムを通じて情報がやりとりされる。ネットワークはメッシュ型で構成されているものの、元帳を銀行毎で保持しているため、情報は銀行同士のエンド・トゥ・エンドでのやりとりに依存している。一方、DLT が導入されれば、金融取引の元になる元帳データは、ブロックチェーンで相互に真正性が担保された形で保持されるため、銀行という枠組みにおいても、非中央化された(decentralized)さまざまな金融サービスの可能性が広がる、ということだった。

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午前中後半のセッションでは、日本を代表するメガバンク3行である、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ(MHFG)の各行で、フィンテックを先導するオープンイノベーション担当部門の責任者がパネルディスカッションに臨んだ。

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MUFG 柏木英一氏

MUFG の柏木英一氏(デジタルイノベーション推進部長)は、同行のオープンイノベーションに臨む事例として、昨年6月に実施した Fintech Challenge 2015 で選ばれたスタートアップのうち、ZUU Online と協働する金融キュレーション・メディア「FinTech online」、Finatext と協働する投資信託を選ぶためのアプリ「Fundect」が既に運用されていると説明。今年はじめから開始された「MUFG FinTech アクセラレータ」では、特に強力なメンター陣を揃える点に注力しており、8月に実施される初回バッチのデモデイでは、その成果に期待してほしい、と語った。

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SMFG 中山知章氏

SMFG では昨年10月にオープンイノベーションを推進する IT イノベーション推進部を設立。モバイルウォレットなどの次世代購買体験、エンタープライズ向けの API 提供や IoT 活用、人工知能、ブロックチェーンを活用した次世代金融インフラなどの調査や開発に注力しているとのことだ。中山知章氏(ITイノベーション推進部長)によれば、特に顧客の嗜好を分析して商品を提案する、ニューロサイエンスを活用したイノベーションについても傾倒しているとのこと。また、シリコンバレーのアクセラレータ Plug & Play との提携、福岡に拠点を置くハウインターナショナルのようなスタートアップとも協働している。

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MHFG 阿部展久氏

MUFG と SMFG がオープンイノベーションに特化した部署を設置している一方、MHFG はインキュベーションPT(プロジェクトチーム)という組織横断の形態でオープンイノベーションを推進している。インキュベーションPT長の阿部展久氏によれば、例えば、既存サービスにどう人工知能を生かせるかについては既存部門が深く関わる一方で、ディープラーニングがどのようなサービスに使えるかといった課題については、中長期的なスパンでインキュベーションPTが追いかけているという。

三行に共通したのは、これらの部署やプロジェクトチームは KPI を持っているものの、それは収益に関するものではなく、取り組む PoC(Proof-of-Concept)やプロトタイプの数や、どれだけソーシングできたか(どれだけのスタートアップと関係をもてたか)というものだ。イノベーションを推進するラボを敢えて本社から離れた場所に設置したり(MUFG 柏木氏)、必ずしも金融のバックグラウンドを持たない外部からの人材を積極的に登用したり(SMFG 中山氏)、各行とも、本来なら銀行マンが強みとする金融の既成概念にとらわれない、ディスラプティブな発想を生み出すための努力に余念が無い。

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MHFG のインキュベーション・プロジェクトチームの概要

また、とかくオープンイノベーションにおいては、大企業がスタートアップに対して高圧的であるとの批判を受けがちだが、この点については、各行とも「情報収集のためだけにスタートアップに会うのは失礼。スタートアップのビジネスをスケールさせることが重要(MHUG 阿部氏)」、「(銀行—スタートアップ—お客様の間で)Win-Win-Win の関係がどう築けるかを常に考えている。また、銀行内の人材育成にも(スタートアップの)力を貸してほしいと思っている(SMFG 中山氏)」など、試行錯誤を重ね、スタートアップとの良好な付き合いを模索していきたい、と語った。

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