新進気鋭の起業家が大物キャピタリストとアイデアを磨きあげる合宿イベント「Incubate Camp 9th」が開催

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2016.7.19

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7月15日(金)〜16日(土)、スタートアップへの投資・育成事業を行うインキュベイトファンドが開催する起業家と投資家が合同合宿「Incubate Camp 9th」が 、千葉県内のホテルで開催された。

Incubate Camp の参加対象となるのは、シードラウンドでの調達を求めているスタートアップに加え、すでにサービスをリリース済で、追加の資金調達やサポートを希望するスタートアップだ。2日間にわたって、スタートアップ17社をインキュベイトファンドの代表パートナー4名、13名のゲストベンチャーキャピタリストがメンタリング。2日目には、審査員6名を交えたプレゼンテーションが実施された。

入賞の是非とは別に、参加スタートアップはゲストベンチャーキャピタリストは投資を受けられる可能性があるほか、スポンサー各社からはウェブサービスの無料利用権など特典が進呈される。審査員らからは、いくつかのスタートアップに将来性を認められたとの声も上がっていたので、今回の Incubate Camp を経て、新たにいくつかの出資が実施されることになるだろう。

本稿においては、プレゼンテーションで披露されたサービスの概要についてお伝えしたい。参加したスタートアップ17社中4社については、ステルスモードであるため本稿では取り上げない。個々のサービスの背景や詳細などについては、随時 THE BRIDGE で取材を進めていく予定だ。

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Incubate Camp 9th のプレゼンテーションで審査員を務めたのは、

  • ミクシィ 経営企画室/アイ・マーキュリーキャピタル 代表取締役社長 新和博氏
  • 産業革新機構 専務執行役員 土田誠行氏
  • ニッセイ・キャピタル チーフベンチャーキャピタリスト 永井研行氏
  • ディー・エヌ・エー 執行役員 戦略投資推進室長 兼 モバイルサービスインキュベーション事業部長 原田明典氏
  • ヤフー 企業戦略本部長/YJキャピタル 代表取締役 平山竜氏
  • B Dash Ventures 代表取締役社長 渡辺洋行氏

…の皆さん。司会は、IF Angel の代表パートナーである笠井レオ氏が務めた。

【1位】Refcome(リフカム)by Combinator

(メンタリング担当:Draper Nexus Venture Partners 倉林陽氏)

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企業は、人材採用において、なかなかいい人に出会えない、採用単価が高い、入社後のミスマッチが減らない、という問題を抱えている。Refcome は、社員による紹介採用、リファラル採用において、面倒な紹介プロセス、応募者管理、社員への周知活動などを簡便化するプラットフォーム。ユーザである社員は、クリック2回で人材を人事部に紹介できるようにした。

既にサイバーエージェント、コロプラ、GMOメディアなどが利用。年内に、導入企業100社達成を目指している。

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【2位】NICOLY(ニコリー)by ドウゲンザッカーバーグ

(メンタリング担当:グロービスキャピタルパートナーズ 今野 穣氏)

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日本では、毎年200万人が何らかの形で美容医療を受けているにもかかわらず、信頼できる情報が少なく、ユーザと美容クリニックの間には情報の非対称性がある。NICOLY は、美容医療に特化した情報を提供するウェブメディアで、監修ドクター25名の協力により月100本以上の記事を発出。潜在顧客を集め、美容クリニックへの送客を行う。

Yahoo ヘルスケア、T-SITE ニュースなど、ニュースサイト各社にも記事を配信し、多汗症・埋没法など美容医療の主要キーワードによる SEO でユーザ流入を確保。美容クリニックへの送客により、予約に至った患者の施術費用の20%を NICOLY が手数料として受け取る。NICOLY 経由で毎月3万人が美容クリニックにリーチしており、うち 1,000人が予約に至っている。3年後に売上高30億円を目指し、メディカルツーリズムやリアルクリニックの分野にも市場展開していきたいとしている。

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【3位】タウンWiFi by WiFiシェア

(メンタリング担当:セプテーニホールディングス 佐藤光紀氏)

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タウンWiFi は、ユーザがスマートフォンのデータ量制限を受けないようにするため、市中の無料 WiFi サービスに自動で接続できるようにするモバイルアプリ。200種類の WiFi サービスに対応しており、国内200万カ所20万カ所で自動接続が可能だ。ローンチから2ヶ月間で80万ダウンロードを突破し、月間デイリーのアクティブユーザ数は10万人に上る。

アプリによる WiFi サービスへの自動認証と自動接続により、通信制限無し・通信料無料の「新しいキャリアネットワーク」という位置づけでユーザを魅了する。WiFi 事業者に、利用頻度などのデータやユーザからのクレームなどの情報を提供することで、サービス改善を促すプラットフォームとしても機能する。2017年8月までに3,000万ダウンロード、2018年3月までに1.5億ダウンロードを目指す。

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【ベストグロース賞】カロナビ by Qualia

(メンタリング担当:B Dash Ventures 西田隆一氏)

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国が糖尿病患者のケアに投じている国費は年間1.2兆円。肥満を防ぐことが糖尿病患者の抑制につながるが、肥満を防ぐ努力はなかなか成功しづらい。カウンセリング力、栄養指導力、モチベーション力を三位一体として提供すべく、カロナビでは、カウンセラー、栄養士、モチベーターによる、食事管理や健康維持努力を促す。

この種のサービスでは努力が長続きしないのが難だが、美しい女性のインフルエンサーやインスタグラマーをモチベータに起用し、モチベーションを管理。主要なターゲット層となる男性ユーザに対し、電話によるモチベーションサポートなどを行い課金する。最終的には、医師による臨床研究、健康保険組合、特定保健指導、健康保険の提供なども目指していく。

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【ベストグロース賞】FLIPP by Famione

(メンタリング担当:インキュベイトファンド 村田祐介氏)

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国内で200万組の夫婦が妊活を行っているとされるが、現在、日本には妊活に特化したクリティカルメディアは存在しない。平均的に、妊活に取り組むカップルが、妊娠に至るまでの期間は18ヶ月とされ、それに要する金額は59万円だ。

Famione の FLIPP では妊活に関わるすべての情報を可視化し、それに対する適切なアクションをトレーナーが提案。スコアリング、カウンセリングなど、PDCA をオンライン化し、フルパッケージ9,800円などの価格帯で提供する。同社が持つ妊活の特化メディア「Famit」や Q&A サイトの「Famione」などとも連携し、潜在ユーザを FLIPP に誘導する。

Baby Map by Trim

(メンタリング担当:WiL 西條晋一氏)

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TrimBaby Map は、出先でおむつ交換台と授乳室を検索することに特化したアプリだ。検索エンジンなどを使っても容易にこれらの情報を探し出すことは難しいため開発した。 1日に100件以上投稿されるユーザからの情報集積により成立しており、これまでにプロモーション無しで10万ダウンロードを誇る。子供が生まれてから、おむつが外れるまでの平均2.5年間は使ってもらえ、ユーザのリテンション率が高い。

授乳室は18,000件が登録されており、授乳室においては、消耗品販売やスマートロック(西條氏がメンターしたことから Qrio を想定か)連携も模索。授乳に必要な平均時間は1回あたり20分であることから、タクシーの1回あたりの乗車時間16分よりも長い滞留時間を利用して、デジタルサイネージ、サンプリング、アンケートなども行えるとした。

Open Network Labが第12期より輩出。

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RE:GAIN by Return to the Field

(メンタリング担当:インキュベイトファンド 赤浦徹氏)

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RE:GAIN は、オンラインでリハビリテーションを提供するプラットフォーム。腰痛疼痛管理に特化している。企業における従業員の診断情報やヘルスケア情報を集約し、疾患のある人と理学療法士をマッチングする。昨年10月にローンチ、既に300人の理学療法士が登録している。

アメリカではヘルスプランを持つ従業員1,000人以上の企業4,000社、また、日本では社内に健保組合を持つ1,500社以上の企業がターゲットとした B2B2E ビジネスモデル。日本では DeNA、アメリカでは Google が既に導入済みで、今後、コロプラや楽天などが導入予定。企業向けに福利厚生を提供するベネフィットワンや AnyPerk とも提携しており、今後 AnyPerk との提携を予定。来年3月までにユーザ3,000人の達成を目指す。9月1日からアメリカへ進出予定。これまでに、デジタルガレージ、アスリートの為末大氏、連続起業家の柴田陽氏らが出資している。

TECH LAB PAAK 第3期より輩出。

6月19日14:20更新:一部表記内容を修正、赤字部分を追記)

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MagicPrice by 空

(メンタリング担当:アーキタイプ 中嶋淳氏)

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MagicPrice は、ホテルや航空会社が、高過ぎず安すぎない、その時点で最適な価格を顧客に提示できるようにする価格戦略人工知能プラットフォーム。予約履歴などの自社データをインポート、周辺ホテルなどの競合データをクローリングし、機械学習で最適な価格をリアリタイム計算する。計算された価格は、自社サイトのほかサイトコントローラを経由して、旅行予約サイトや OTA にも反映させるしくみだ。

ホテルや航空会社の現場は多忙であるため、操作にあたってリテラシーを必要とする機能は実装せず、運用を限りなく自動化できるように設計し、創業者が前職で従事したアドテクの知識をベースに API の形式で提供する。7月10日からβ版の提供を開始し、複数のホテルが運用中。メンターの中嶋氏の協力により、ホテル各社へのトップ営業のサポートを期待したいとのこと。先ごろ、500 Startups からシードラウンドで資金調達している。

TECH LAB PAAK 第3期より輩出。

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LIVE3S by 3.0

(メンタリング担当:伊藤忠テクノロジーベンチャーズ 河野純一郎氏)

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LIVE3S は、月額3,900円の定額制クラブ行き放題サービス。行きたいイベントが見つからないユーザと、より多くのお客に来てほしいクラブとの間で、情報の非対称性が起きている状況を踏まえ、サービスを開発した。クラブに行く人々が2万人いると言われる東京で、夜のピークタイムを作り上げることで、ナイトエコノミーの活性化と日本のクラブカルチャーの醸成を目的としている。

ローンチから1ヶ月で100名のユーザを獲得。東京都内に90店舗あるとされるクラブのうち、約20%あるとされる17店舗と提携済。主要店舗だけで見れば、提携済店舗の割合は約42%に上るとのこと。提携にあたっては、一店ずつクラブのオーナーや支配人を口説いていく地道な営業活動が必要になるため、これが同時に参入障壁になり、他者の追随を許さない要素になると考えている。

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Gamers League by SPODIA

(メンタリング担当:グロービスキャピタルパートナーズ 高宮慎一郎氏)

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世界で NBA を観た人が2,000万人であるのに対し、eスポーツの League of Legends を観た人が3,600万人。すなわち、リアルスポーツ人口をeスポーツ人口が超えつつある。Gamers League は、eスポーツのコミュニティプラットフォームで、eスポーツのファンがゲーマーをフォローするのを支援し、イベントやメディアを通じて、潜在顧客をeスポーツのパブリッシャーに送客する。

毎週末オンラインでイベントを開催しており、1回のイベントで約2万人のファンにリーチしており、参加者数は日本で最大の規模を誇る。パブリッシャーと連携し、オフラインイベントを開催することでマネタイズしている。現在、世界には3,000万人の潜在ユーザがいると考えていて、Gamers League ではその10〜20%を獲得したいとのこと。

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EveryGrowth by sparcc

(メンタリング担当:ベンチャーユナイテッド 丸山 聡氏)

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EveryGrowth は、専任担当者の置けない中小企業向けに、アドネットワークへの広告出稿を自動的に最適化してくれる、人工知能プラットフォーム。トップレベルのオンライン・マーケッターのスキルやノウハウを中小企業4万社に共有する。アドネットワークへの出稿の多くが大企業に集中しているが、EveryGrowth の導入で専任担当者のいない中小企業もアドネットワークへの出稿しやすくする。

これまでのテスト実績では、月のコンバージョンが導入前と導入後で10%以上改善されたとのこと。一般的な広告代理店手数料が20%以上であるのに対し、EveryGrowth では15%と手数料を割安に設定することで集客。また、既に広告出稿している企業が Google 上に表示されるので、それらをクローリングし潜在顧客に営業していく。今後3年間で2万社の顧客獲得を目標とし、アジアや世界への進出も目論む。

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AI ニュース by 5525

(メンタリング担当:Anri 佐俣アンリ氏)

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AI ニュースは、労働集約型業務の典型とも言われるメディアの仕事を、人工知能を使って置き換えようというアプローチ。データ収集、記事執筆、配信、分析なども最終的にすべて人工知能で行うことを目指す。記事が自動生成さることで、即時性や大量生産が可能になる。

AP 通信が Automated Insights の WordSmith を使った自動記事生成を開始しているが、AI ニュースでも同様に、当初は経済のデータ、ゲームの結果など、数字のデータを扱う記事の自動生成から着手したいとのこと。特に日本語の自然言語処理の部分が難易度が高く、逆に参入障壁にもなる。2016年12月のローンチが目標。

Photoruction by CONCORE’s

(メンタリング担当:サイバーエージェント・ベンチャーズ 田島聡一氏)

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建設業界においては、多くの局面で、各プロセスが正しく行われているかを写真で記録・管理している。写真記録の多くは、最終的には紙ベースに依存しており、業務に占める写真関連の時間は1日の60%にも達すると言われる。

CONCORE’s の Photoruction ではモバイルアプリを使い、これらの写真記録・管理を簡便化し、工事管理者が空いた時間を品質管理や工程管理に注げるようにする。現在、工学院大学、芝浦工業大学、東京理科大学、複数の建設会社などで実証実験中。年間57現場ある建設工事の需要のうち、約1%に相当する5,000現場を取りに行きたい、としている。

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なお、キャピタリスト賞には、1位にグロービスキャピタルパートナーズの高宮慎一郎氏、2位にグロービスキャピタルパートナーズの今野穣氏、Anri の佐俣アンリ氏、インキュベイトファンドの和田圭祐氏が選ばれた。

6月19日13時追記:インキュベイトファンドによれば、当日の集計漏れの関係で、キャピタリスト賞2位に、セプテーニホールディングスの佐藤光紀氏が追加となったとのこと。)

Incubate Camp は2010年から通算で8回開催され、950名超の応募者の中から115名超を選出し、約90社のスタートアップを創出。インキュベイトファンドからは、これまでの Incubate Camp 参加スタートアップ中34社に投資が実施されている。他のファンドからの調達も含めた、これまでの Incubate Camp 出身スタートアップの資金調達合計額は132億円に達している。

インキュベイトファンドによれば、前回の Incubate Camp 8th では、1社あたりの最大調達金額が1.5億円、参加スタートアップ全社での資金調達合計額は6億円に上ることが明らかにされている。

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