農畜水産物の流通をクラウド化する「SEND」運営が4億円調達、生産者数は3000件に

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食糧の流通やビッグデータを扱うフードテックのプラネット・テーブルは8月31日、SBIインベストメント、Genuine Startups、Mistletoeの三社を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達した資金は総額で約4億円で、払込日などの詳細は非公開。

同社はこれに合わせて昨年8月に公開した農産流通プラットフォーム「SEND」の登録レストラン数が約1000件、生産者数が3000件に到達したことも公表している。今回調達した資金は同社が新たに設置する流通拠点「GATE Meguro(ゲートメグロ)」を中心とする配送エリアの拡大に使われる他、新たな物流モデルの構築にも挑戦するとしている。

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流通拠点「GATE Meguro(ゲートメグロ)」

また、6月にクローズドβとして関係者にのみ公開していた生産者とバイヤーの直接取引プラットフォーム「SEASONS!」についても今秋を目処に一般公開するとしている。同社では向こう1年半で人員を現在の20名程度から35名ほどに拡大させる予定。

農産流通のクラウド化とは

生産者と利用者を丁寧に繋ぐことで双方の需給データを獲得し、フードロス問題を解決しようという農産流通サービス「SEND」が大きく次のステージに向かうことになった。SENDが目指す未来像については昨年のこちらの記事を参照いただきたい。

食料生産者と需要者を「泥臭く」つなぐSEND、フードロス(食料廃棄)の解決策となるか

農畜水産物の生産者が作った食糧をいかに魅力的に、かつロスを少なくレストランなどの利用者に届けるかという一点を突き詰めた結果、彼らの流通サービスは多くの関係者に歓迎されたようだ。同社代表取締役の菊池紳氏は手応えをこう語る。

「おかげさまで(これまで渋谷の社内にあった)センターは目黒に移動しました。1年前に1台だったトラックは8台になっています。レストラン側の評価としては、最初は色々な品目が揃うとか安いとかそういうものが多かったですが、徐々に欠品しないなどの使い勝手に移っています。生産者側は同じものを今までの流通に出すよりも1.2倍ほどで購入してもらえるので、結果的に作付面積あたりの単価が倍に上るような方も出てきて喜んでもらっています」(菊池氏)。

今は逆に肉類の取り扱いを増やして欲しいなどのリクエストに追いついていない状況を解決するのが大変という様子だった。

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業務委託形式での配送網は今年で更に10台増やすそうだ

一方で流通というのは手間がかかる。彼らは物理的に流通センターやトラックを所有しており、ネットビジネスにありがちな「持たざる経営」の逆張りをしているのが特徴でもあり、リスクでもある。当たり前だが、このままトラックや配送人員を増やしていったのでは経営に重く負担がかかってしまう。

この点を解決するのが仮想的な流通網の構築だ。菊池氏は元々このプロジェクトを立ち上げた時から流通網については例えばUberのようなモデルができないかと話していた。そして今回、それを実現すべく業務委託形式での配送テストを開始している。

「配送のシェアリングモデル、と言ったらいいんでしょうか。都市部でどのようにして効率良く配送すればよいかモデルが整ってきたので、それを委託者の方に展開するテストを開始しています。地域で生産された農作物の集荷は例えば道の駅などを集荷場に設定して回ってもらうなど、いろいろアイデアを実践しています」(菊池氏)。

少し説明しておくと、生産者が作った作物をSENDはまず集荷する必要がある。「効率のよいルート」を探し出すのはシステムの最も得意とするところで想像しやすい。一方で、レストランに配達する箇所は少しテクニックが必要になる。

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SENDが扱う食材。菊池氏が全国を行脚して集めた特選素材が多い

「配送した方とはレストランが買ってくれた作物の売上をパーセンテージシェアします。なので、ただ注文されたものを持っていくだけでなく、魅力的な農作物をレストランに対してプレゼンテーションする必要があるんです」(菊池氏)。

ここで重要なのがデータだ。レストランがどういう客層で、どの時期にどういう作物を欲しがっているか、SEND側ではデータを保有している。なのでこれらを元に配送者が魅力的な提案をできるようなノウハウを提供できる、というわけだ。

生産、流通、利用、この三者を仮想的なネットワークに配置し、中心となるSENDがそれぞれをマッチングするためのデータを提供する。それぞれのリソースを抱え込むわけではないので仮想網はスケールしやすい。

この他にもSENDは流通時に発生するロスを減らす施策を用意していた。この件についてはまた後日お知らせしたい。

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