投資信託情報の自動応答技術を開発するロボット投信、インキュベイトファンドから1億円を資金調達

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左から:インキュベイトファンド 代表パートナー 村田祐介氏、ロボット投信 代表取締役 野口哲氏、インキュベイトファンド アソシエイト 山田優大氏

東京を拠点とするフィンテック・スタートアップのロボット投信は5日、インキュベイトファンドから1億円を調達したことを発表した。同社は、投資信託のコールセンター業務を自動化する仕組みを開発しており、証券会社や銀行が導入することで、投信の分配金や騰落率などの情報を顧客は電話ごしに自動音声で確認できるようになる。発信者番号通知により電話をかけてきた顧客を自動認証し、保有している投資信託の情報を伝えられるのが特徴。インターネットやスマートフォンの操作に不慣れで、ウェブサービスやアプリで情報を確認しづらい高齢の投資家などへのサービス向上が可能になる。

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ロボット投信は、SBI ベリトランス、SBI ホールディングス、ピクテ・アセット・マネジメントなどでの勤務経験がある野口哲(さとし)氏が2016年5月に設立。Draper Nexus、Slogan、Coent Venture Partners、Viling Venture Partners らが共同運営するシードアクセラレータプログラム「Supernova」の第一期から輩出され、7月に実施されたデモデイでは見事に優勝の座に輝いた。

今回リリースした電話による自動応答のしくみに加え、同社ではチャットボットで投信の分配率や騰落率を知ることができるしくみも開発中だという。ただ、彼らが狙うビジネスの根幹は、別のところにあるようだ。

証券会社の窓口では、来店した客に、日本で入手できる投信(公募株式投信)5,800種類の中から最適な銘柄を選んで提案しなければならない。そのお客のポートフォリオ、投資戦略などがわからない状態で、証券会社の店員が即座に最適なものを選んで提示するのは難しい。(野口氏)

ロボット投信では証券会社向けに、来店客の希望に沿った条件を選ぶだけで、最適な投資信託の組み合わせを提案できるサービスを開発中だ(下図)。

当初は預貯金よりもアグレッシブな資金運用を望む顧客が多い証券会社をターゲットにし、将来的には、投信販売を行う地方銀行などにも販路を広げていきたい考え。マイナス金利の長期化に伴い、銀行は預貯金や融資以外の新しい金融商品の販売に積極的になっているが、一方で、長年にわたって銀行の金融商品を販売してきた銀行マンにとって、投資信託など投機性のある新しい商品の営業をするのは難しい。ロボット投信が今後提供するサービスを使って、証券会社だけでなく、銀行も投資信託を販売しやすくなるというわけだ。

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クリックして拡大:証券会社の投信販売窓口向けのダッシュボード(画面は開発中のものです)

ところで、フィンテック・スタートアップの花形であるロボアドバイザーが、個人投資家に直接アプローチする B2C の形でビジネスしているのに対し、ロボット投信のビジネスモデルはそれらと一線を画し、直接の顧客を証券会社とする B2B だ。ゆくゆくはロボアドバイザーもやりたいとする野口氏だが、敢えて B2B から始めたのには理由があるのだという。

多くのデータが欲しかったんです。チャットで顧客の要望を聞いて提案を返すしくみを作ろうにも、B2C から始めると(サービスの立上がり当初)顧客数や取引量が少ないため、分析もできないし統計データもとれない。(一般的なロボアドバイザーのスタートメニューにあるような)数件の質問に答えただけで、顧客が求めている解を提案できるかどうかは怪しいでしょう。

お客とのコミュニケーションを何度も積んで、エンジンに「こういう悩みを持っている人には、どういう回答を返すか」を学習させる必要があります。前職の経験から自分はその辞書のような解答事例の知見を持っていますが、それをもっと客観的なものにするには、チャットボットに辞書を入れて鍛えていく必要があると考えました。(野口氏)

つまり、B2B のビジネスからはじめて、そこで培ったインテリジェンスやコミュニケーションノウハウを持って、B2C の分野にも業務拡大していく、という戦略のようだ。ロボアドバイザーの中でも投資運用直結型のサービスを提供するには金融商品取扱業者の登録が必要になり、この登録が完了するまでに必要な時間と費用はスタートアップにとっては重荷になる。そのような観点からも、B2B からのアプローチは理にかなっていると言えるだろう。

ロボット投信では現在、サービス開発の加速に向け、マシンラーニング分野に明るいエンジニア、UI/UX デザイナー、NoSQL や RDB に詳しいデータベースエンジニアを募集している

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