中国の食料問題の解決に取り組む新興アクセラレータ「Bits x Bites」

by Charlie Custer Charlie Custer on 2016.10.22

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Bits x Bites と Yimishiji(一米市集)の設立者 Matilda Ho(何瑞怡)氏

中国は食を愛する国。しかし食料に関しては深刻な問題を抱えている。

この30年間、中国は地方中心の社会主義農業国家から都市中心の資本主義国家へと変貌を遂げ何百万人もの人が貧困から抜け出したが、新たな懸念も生まれている。手頃な料金で入手できるお手軽で油脂の多いファーストフードを食する機会が増えて子どもの肥満が爆発的に増加している。また、都市部の人口に十分な食料を安価で効率的に提供するために田舎の農家から大規模工場へと食料生産が変化したことで、食の安全に関する不祥事が相次ぎ環境への悪影響、家畜への非人道的な行いが散見される。

ではその解決策は何だろうか? あらゆる観点から検討しよう。

Matilda Ho(何瑞怡)氏、オンラインファーマーズマーケット立ち上げの背景

Matilda Ho(何瑞怡)氏は以前、食にあまり関心がなかった。彼女は Tech in Asia に対し、次のように語っている。

アメリカのビジネススクールに通う前、私にとって食の重要性は皆無でした。

彼女の家族にとって食べ物はただのエネルギーみたいなもので、その日学校でよく勉強できるように必要なものを食べなくてはいけないという感覚だった。しかしアメリカで一人暮らしを始めて急に自炊しなくてはいけないようになり、食について考えを巡らす時間が増えるにつれて、食べ物はただのエネルギー以上の意味があると実感するようになった。

食料は、社会的なレベルで、そして体験という面でも、多くのものを私たちにもたらしてくれる存在であることを学びました。

そして食への関心が高いアメリカに住んでいた彼女は、食料の選択が環境に及ぼす影響が大きいこともわかった。

大学院卒業後、彼女の職業人生の中で食は重要な役割を持つようになっていた。中国の IDEO でコンサルティングの仕事をしていた彼女は、上海発のファーム・トゥ・テーブル(地産地消)レストランの開業プロジェクトに関わるようになった。

中国の食品サプライチェーンが抱える問題について知識と経験が蓄積され始めました。これこそ、私のしたかったことだということがわかったのです。(Matilda 氏)

それで彼女はコンサルティングの仕事を辞め、健康食品と持続可能な食料生産に特化したオンラインのファーマーズマーケット Yimishiji(一米市集)を立ち上げた。やがて同社は、消費者の教育という課題を抱えるようになる。

中国の食料に関しては、消費者は全く信用していません。ここでは「オーガニック」という言葉でさえ、欧米で認知されているような特別な意味を持たないのです。一方、環境や持続可能性は中国で大きな関心事となることがあります。そのため、Yimishiji は持続可能性の側面から力を注ぎました。こうして Yimishiji は中国で最も成長しているオンラインファーマーズマーケットとなりました。(Matilda 氏)

さらなる成長へ向けて

Yimishiji は好調な業績をあげたが、Matilda 氏はもっと大きなことがしたかった。オンラインファーマーズマーケット1社だけで中国の食料制度が抱える問題を解決するなどできないのは明らかだった。それで彼女は中国初のフードテックのみを対象としたアクセラレータ及び VC、Bits x Bites を立ち上げたのだった。

食に特化した VC は、Matilda 氏によると中国のテック業界が切に望んでいたものだったという。

中国の食料制度が抱える問題を多くの起業家が認知していましたが、自身が成功し成長を果たすのに必要な資本や経験がなく、指導者もいませんでした。(Matilda 氏)

既存の VC やアクセラレータからは、食料業界はソフトウェアをベースとするテクノロジーとは異なるという理由で十分な援助を得られなかった。食品ビジネスは着実な軌道に乗るまで投資の回収に長い時間がかかり、また消費者への教育も一苦労だった。しかしこの業界は成長しているため、Bits x Bites チームは長期的にリターンを得られると確信している。

Matilda 氏は、中国の消費者はより優れた選択肢を求めるようになっているためこの点には特に自信を持っている。「中国の大手 F&B(食品・飲料)企業をみると、どこも苦戦しています」という。それは食の安全に関する不祥事が発覚したことや、消費者の認知が高まっているためだ。さらに、健康的で持続可能な食品に対しては多少の出費もいとわないという中国の消費者も増えている中で、大手食品会社はそのような商品を全く提供していないという。その解決策は明らかだ。消費者の需要を満たす食関係のスタートアップを手助けすることに尽きる。

Bits x Bites は食料業界にあって、あらゆる側面からこの問題に切り込みたいと考えている。Matilda 氏は、Yimishiji のようなオンラインマーケットから都市部に住む消費者向けの栽培キット、中国人のタンパク質摂取法を変えようとしている粉末コオロギのメーカーまで、ありとあらゆる食関連のスタートアップに目を向けているという。

このようなスタートアップはプラットフォーム、コミュニティ、成長への手助けを求めています。Bits x Bites を設立したのはそうした理由からです。(Matilda 氏)

Bits x Bites は今月、初のアクセラレータ用クラスに向けた申請を受け付け始めた(バッチは中国の新年直後である2月開始)。また、アクセラレータのプログラムを必要とせず、ただ VC からの資金提供を求める食関連テック企業からのピッチも受け付けている。詳細については英語と中国語で書かれている同社ウェブサイトを参照してほしい。

ただ、もし本当に関心があるなら、質の高いピッチをできるだけ早く始めるのがよいだろう。Matilda 氏によると、Bits x Bites は申請受付前であってもフードテックのスタートアップから日常的に質問やピッチを受けているという。

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資金、食料そして未来

Bits x Bites は VC としては興味深いポジションにいる。主たる目標は金銭的なリターンとは直接関係がない。このアクセラレータが基本的に求めているのは中国における食の問題の解決だ。また、もっと簡単にスケールできる業界でベンチャー投資をするのに比べて食品業界にて得られるリターンは希望とかけ離れてしまうことも承知している。しかし同時に、Bits x Bites はリターンを上げることの重要性を捨てたわけではない。

もし当社が投資したスタートアップがスケールできなかったりビジネスモデルを維持できなかったりすれば、世の中に与える影響もきわめて限定的になります。(Matilda 氏)

Matilda 氏によると、Bits x Bites は他の業界に特化した VC よりも広いアプローチを採用しなくてはいけないという。問題が深刻で、かつ投資も大きいため、1つのアプローチだけで対処していく余裕は Bits x Bites にはないのだ。2050年までに地球の人口は90億人になる。これまでの有機農法による生産で全ての人口を養うことはできないと Matilda 氏は語る。だから Bits x Bites は有機農法から水中栽培や空中栽培にいたるまで、あらゆるものを支援したいとしている。

1つの方法だけに固執するのはリスクが高いです。様々なアプローチを視野に入れておくべきです。

しかしこれでうまくいく場合でも、私たちは Bits x Bites が描く将来の一部を知るにすぎない。Matilda 氏によると投資の理念は、「より良い食料を作るためにテクノロジーが効果的な手段になれること」だという。Matilda 氏は今後5~10年以内に、より多くの中国人が「食料はどこから来て、どこへ向かうのか」を考えるようになり、そのように考えることで購入する食料の決定に影響を与えるようになればと思っている。そしてもちろん、Bits x Bites の希望はさらに大きい。Matilda 氏はこう述べている。

世界を見渡しても、食品業界ではユニコーン企業の数はあまりに少ないです。それくらいのスケールを目指して努力しているより多くの企業に投資していきたいと思っています。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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