CMSから次世代コミュニケーション技術のプラットフォームへ——Drupalの父Dries Buytaert氏にインタビュー(ビデオ)

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2016.10.28

先週 Acquia Labs の設立が発表されたばかりだが、その話題の渦中にある Dries Buytaert 氏が東京を訪れていた。世界経済フォーラム(ダボス会議)の、40歳以下のリーダーが集まる分科コミュニティ「Young Global Leaders」が東京・六本木ヒルズで開催されたこと、そして、「Drupal Summit Tokyo」に招かれたからだ。Drupal Summit Tokyo は、Drupal の活用で知られるデジタルビジネスのコンサルティングファーム「CI&T」が開催した。

サンフランシスコに戻る前、Dries Buytart 氏は、Acquia のアジア太平洋地域を担当する David Peterson 氏と共に THE BRIDGE のインタビューに応じてくれた。彼は、Drupal や新たに設立した Acquia Labs を通じて何をしようとしているのか、その将来展望について熱く語ってくれた。

Acquia ではこれまでのウェブの技術を超えて、次なるステージを目指す姿勢を「moving beyond the page」というフレーズで表している。ニューヨークの地下鉄では、列車運行に関わるすべての情報を集めるバックエンドに Drupal を採用、オープン API を使って提供することで80種類以上のネイティブアプリが生まれている。駅に設置されたビーコンや列車に設置されたセンサーからの情報をもとにした、駅設置のスクリーンの表示にも Drupal が使われている。Tesla は自社Eコマースサイトのほか、ダッシュボードやモバイルアプリにも Drupal を採用。また、プロトタイプではあるが、Nike ではスマートシューズでは靴底センサーと連携させ、一定距離を走って靴が消耗したユーザに、スワイプするだけで新しい靴の購入を促せるエクスペリエンスの実現を考えている。これもバックエンドは Drupal だ。

確かに、Drupal 元来のコンテンツマネジメントシステム(CMS)の領域を超えた取り組みには思えるのだが、ここで上げた事例は、既存技術によるスクラッチ開発でも実現できることだ。Drupal がどのような違いをもたらすのかを Buytart 氏に尋ねると、Acquia Labs が考えているのはもっと複雑なことで、その極みの一つは contextual experiences(文脈に応じて最適化された体験を提供する)なのだという。

例えば、航空会社のウェブサイトを訪れたとしましょう。一般的に、航空会社は訪問者にチケットを販売しようとする。しかし、私がロストバゲージしたのだとしたら、あるいは、接続便を逃してしまったのだとしたら、私はウェブサイトを訪れた時に、新しい便を予約しようとはしない。航空会社に助けを求めたいのです。今日のウェブサイトはまだ、uncontextual です。

出版業界向けには、Acquia Lift という製品を出しています。ウェブサイトの訪問者について学習し、彼らのビヘイビアを学習し、どれを読んだか読んでないか、他のウェブサイトから来たかメーリングリストか来たかプッシュ通知から来たかなど、クロスチャネルからの流入に基づいたユーザ毎のプロファイルを作成します。そして、例えば貴方がスタートアップに興味はあるけど政治には興味がないとか、そのような好みを理解し、次にウェブサイトを訪問したときに、よりよいエクスペリエンスを提供するのです。

最近、巷で話題の Amazon Echo との連携事例もある。Gourmet Market という食料雑貨チェーンのウェブサイトでは、ユーザ側は対話型の買い物体験を楽しむことができる。このチェーン店舗は実在しないデモ用のものだが、コード数行のみでウェブサイトと Amazon Echo との対話を実現している技術はすでに確立されている。

我々の日常生活の中にも、今までウェブで提供されてきた情報を違った形で提供するヒントは、そこらじゅうにあふれているようだ。とあるアメリカの食料雑貨のチェーンでは、ウェブサイト上に2,000件におよぶ料理のレシピを掲載しておいたところ、そのウェブサイトへのアクセスは、家庭からではなく店舗を訪問している客からのものだったというのだ。これはそのチェーンにとっても想定外だったようだが、客の多くはレシピを見てから店舗に来て食材を買い求めるのではなく、店舗内で食材を見ながらレシピを探しているのである。このことに気づいた店舗は、商品売場にビーコンを取り付けてウェブと連携することにより、訪問客により便利な体験を届けることができるようになった。

35,000人ものユーザが、アクティブに Drupal のコミュニティに貢献してくれています。非常に大きなコミュニティです。私は、彼らが、新しいものを素早くアダプトすると確信しています。彼らに新しいことでエキサイトしてもらいたいのです。(Buytaert 氏)

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10月21日、渋谷 dots. で開催された Drupal Summit Tokyo 2016 から
Image credit: CI&T

今回東京で開催されたような Drupal のローカルイベントは、毎週末のように、世界中のどこかで100人から最大で2,000人規模を集め数件ずつ開催されているそうで、これは年間を通すと合数百件程度のイベントが開催されていることになる。Buytart 氏や Peterson 氏を東京に呼んだ CI&T のようなデベロッパと協業することで、世界各所のローカルコミュニティのつながりを深め、新たに動き始めた Acquia Labs のスキームで大企業やスタートアップとの提携関係を模索していきたいと語った。

コアプラットフォームの進化により、これまで CMS のコミュニティに参加していたデベロッパたちが、人工知能・対話型 UI・IoT など先端的な技術に、あたかも自動的にアダプトできてしまうのは興味深いコンセプトだ。数年後には、求人サイトにあるエンジニアの募集職種から「ウェブデベロッパ」という表現は消えてなくなってしまう日が来るのかもしれない。

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Acquia/Drupal と CI&T のチーム
左から:川渕洋明氏(CI&T Marketing & Communications)、アレンカル古賀氏(CI&T オペレーションディレクター)、Dries Buytaert氏(Drupal 創業者/Acquia Labs 共同創業者)、上田善行氏(CI&T ゼネラルマネージャー)、David Peterson 氏(Acquia アジア太平洋担当・ソリューションアーキテクト)
Image credit: 池田 将

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