1000万人メディア基盤を背景に攻めるポート、地方創生と遠隔診療の推進に元アクセンチュア執行役員を招聘

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ポート執行役員に就任した宇佐見氏(左から2人目)と経営陣

採用支援、バーティカルメディア事業を手がけるポートは10月11日、同社が推進する地方創生事業に関する執行役員として元アクセンチュアの宇佐見潮氏を迎えたと発表した。

宇佐見氏はアクセンチュアの公共、医療健康領域で執行役員、マネージング・ディレクターを務めた人物。ポートは8月に新設した地方創生支援室の事業推進を強化するとしている。

ポートの創業は2011年。以前、ソーシャルリクルーティングという社名で知られた採用支援・バーティカルメディア事業を展開するスタートアップだった。当時、まだ一般企業には馴染みの薄いFacebookページの作成支援などで事業を成長させ、この延長上にあるバーティカルメディア事業が現在のポートの収益基盤になっている。

代表取締役の春日博文氏に話を聞くと人員は宮崎の日南市のチームも入れて全体で120名ほどになっており、運営する採用支援系のバーティカルメディアも月間1000万ユーザーを集めるまでに成長しているということだった。

以前、ポートが社名を変更してその後に医療関連の事業に進出した際にはやや「?」がついたこともあった。春日氏に改めて聞くと運営していたバーティカルメディアの一つにヘルスケア領域「メディシル」があり、これを起点にリアル領域に進出したというのがそもそもの顛末なのだそうだ。

遠隔診療「ポートメディカル」と宮崎県日南市、当該市内の無医地区における遠隔診療の有効性を共同実証

また地方創生事業についても、地方における遠隔診療の実証実験と人材事業を合わせて地方自治体に持ち込んでいるという。宮崎県日南市との共同実証実験では遠隔診療実証でニュースになっているが、同市の商店街活性化事業として展開しているのはIT系の企業誘致で、人材事業が中心となるそうだ。

春日氏の説明では、遠隔診療は地方で課題となる医療施設の不足などを解決する取り組みとして地方自治体と実証実験などを進める一方、人材事業については商店街活性化などの事業を受注しているということだった。

「地方創生事業ってよくあるのがインバウンド(訪日海外旅行客誘致)なんですが、これだとイベント的なものに終わって定住者が生まれないので、周辺にお店などを作りづらいんです。元々、人材事業をやっていたこともあって、関連の企業誘致を進めた結果、日南市の商店街には現在、IT関連企業が7社入ってます」(春日氏)。

遠隔診療事業は昨年8月に法律が変更になり、これまで在宅診療の延長だったルールが大きく緩和され、一般診療でも利用可能となった。ただ、春日氏の説明だと診療報酬に課題があり、医療機関が遠隔診療に手を出しても収益的に下がる傾向にあるのだそうだ。

前述の通り、遠隔診療は地方の医療課題を解決する手法のひとつとして注目を集めている。診療報酬の改定などが発生し、事業としても成立するタイミングを見計らいつつ、地方自治体などとの連携で地固めを進めているというのが現在の状況なのだという。

ポートの事業展開は一見すると複雑かもしれない。しかし、その話を紐解くとメディア事業とリアル領域で事業性のあるものをひとつひとつ手繰り寄せて、メディアだけでない新しい収益モデルを模索しているようにも感じられる。少なくとも広告事業一辺倒でPVやUUの単一指標を追い求めるタイプとは異なる。

スタートアップにとって戦線拡大は嫌厭されがちだが、通り一遍のサービスやビジネスモデルでは差別化がもう難しいレベルになっているのも事実だ。ポートの拡大戦略は、やや飽和気味の国内採用支援やバーティカルメディアを展開する事業者とはまた一味違った側面を見せてくれており、興味深いと感じた。

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